デザイン性だけでなく快適性も実現。リノベーションマンションをZEH水準へ、積水化学とリノベるの取り組み

2024年4月4日(木)10時0分 PR TIMES STORY

近年、世界はカーボンニュートラルへの移行という大きな波に乗り出している。その流れの中で、日本国内でも住宅の省エネルギー対策が急速に進められてきた。しかし、既存住宅においては、空き家対策や資源循環の観点で有効活用の動きが生まれつつあるものの、省エネ化の進展が遅れがちだった。

そのような状況に立ち向かう新しい取り組みが始まった。2023年4月に積水化学とマンションリノベーション大手のリノベるは、住宅ストックの新たな循環型マーケットの創造を目指し、お互いの強みを融合したリノベーション事業を展開すべく資本業務提携を締結。その協業第一弾として、マンションリノベーションでZEH水準の住性能を満たすプロジェクトをスタートさせた。この革新的なプロジェクトは、環境に優しく、かつ居住者の快適性向上や光熱費抑制にも大きく寄与することを目指している。

このプロジェクトについて、積水化学で今回の協業開発のプロジェクトマネジメントを担った山田攻男(写真中央)と、リノベるの買取再販事業の統括責任者である三浦隆博氏(写真左)、リノベるでCorporate Developmentを担当する杉谷武広氏(写真右)の3人に話を聞いた。

積水化学とリノベるはなぜ「ZEH水準リノベーション」に取り組むことになったのか

そもそも「ZEH(ゼッチ)」とは「net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略語で、再生可能エネルギーの導入により暖冷房・換気・給湯・照明における正味のエネルギー収支をゼロ以下にすることを目指す家のことだ※1。高い断熱性と省エネ設備、太陽光発電を備え、夏は涼しく、冬は暖かい。光熱費も節約できる快適でお財布にやさしい家ともいえる。

※1 使用環境等の条件によりゼロ以下にならない場合があります。

積水化学の山田は、次のようにリノベるとの資本業務提携に至った経緯を話す。

「積水化学では、長期ビジョン『Vision 2030」で2030年時点での業容倍増を目標とし、現有事業の拡大と新事業への挑戦を推し進めています。住宅領域の事業環境は、新築戸建ての着工数が中長期的に減少する見通しであり、長期ビジョン実現には新築戸建て以外の建設・不動産領域の事業開発・拡大が必須と考えています。一方で、自分たちのリソース(人材、ノウハウや技術)のみでは新たな事業領域を開拓するハードルが高く、そのハードルの突破を可能にする有力なパートナー企業を数年来探していました。このような背景の中、 特に、リノベーション領域とマンション領域での事業の成長を考えたとき、リノベるの不動産パートナーネットワーク、施工実績・デザイン提案力、マーケティング力に非常に強い魅力を感じました」

今回の協業開発においてプロジェクトマネジメントを担った山田攻男(積水化学)

積水化学とリノベるは4つのテーマで協業を検討している。1つ目は、今回の「マンションZEH水準リノベーション(ZEH水準リノベ)」。2つ目はマンション買取再販事業の展開拡大。3つ目は、弊社の戸建て買取再販事業「Beハイム」の流通量拡大。4つ目は、複合的なまちづくりやマンション一棟リノベーション事業の展開だ。

リノベるの杉谷氏は「リノベるが手がけているToC向け事業は主にマンションリノベーションなのですが、全国でおよそ700万戸あるマンションは、住宅ストック(既存住宅)全体の1割程度にとどまっています。リノベるでは【日本の暮らしを、世界で一番、かしこく素敵に。】というミッションを掲げており、ミッション実現には、既存住宅の過半を占める戸建てのリノベーションにもっと取り組んでいかなくてはいけないと考えていました。積水化学が建てる戸建て住宅はユニット工法による堅牢な躯体を持ち、新築の引き渡し日から60年間のメンテナンスプログラムがあるため、ある意味、マンション躯体とのアナロジー(類似性)があり、躯体は変えず、内装や設備をライフスタイルに応じてアップデートしていくという手法が取りやすいと考えています。そのため、マンションリノベーションのノウハウを地続きで戸建て領域に展開できる可能性として、積水化学との取り組みは大変魅力的に感じています」と話す。

リノベるでCorporate Developmentを担当する杉谷武広氏

リノベるの三浦氏は、今回2社間の取り組みとしてリノベーションマンションをZEH水準にする取り組みからスタートした理由は社会背景にもあると続ける。

「新築住宅では2024年から住宅ローン減税を受けるために、省エネ基準への適合が必須要件化されます。2025年には全ての新築住宅で省エネ基準が義務化され、省エネ性能が低い建物は建築不可となる。また、2030年には、ZEH水準の性能確保を国の誘導基準として目指しています」

リノベるの買取再販事業の統括責任者である三浦隆博氏

日本は2050年のカーボンニュートラル社会の実現を目指し、住まいの省エネ化・断熱化を促進するさまざまな制度改正が予定されているのだ。

「一方、既存住宅では、令和元年時点で全住宅ストック約5,000万戸の約87%が現行の省エネ基準を満たしていません※2。住宅ストックの省エネ・断熱性能を高めるためには建て替えとリノベーションという選択肢がありますが、リノベーションは建て替えに比べCO2排出量を削減できることが確認されており※3、リノベーションによる省エネ化・断熱化の推進は、脱炭素社会実現に向けたソリューションの一つです」

※2 国⼟交通省資料「国交省令和4年社会資本整備審議会 第46回建築分科会資料1−3」P48「住宅ストックの断熱性能」

※3 2021年11月30日リノべる発表「リノベーションでCO2排出量を76%、廃棄物排出量を96%削減 脱炭素社会実現に向け、産学共同研究を実施」

新築住宅では普及が進むZEHだが、既存住宅のZEH化はまだまだ少ない。省エネ性能が確保された住まいの整備を拡大するため、積水化学とリノベるはマンションリノベーションにおいて「ZEH水準」を目指して取り組みを進めることにした。なお、新築の高層マンションでは、太陽光発電の導入までは求められない「ZEH Oriented(ゼッチ・オリエンテッド)」が主流であり、本プロジェクトにおいても、住戸で「ZEH Oriented」適合を目指している。

「ZEH水準リノベーション」で活かされる積水化学の技術

この取り組みの中で、積水化学の技術力はどのような点で発揮されるのだろうか? 山田が教えてくれる。

「積水化学では温熱計算・設計を含む断熱技術全般をサポートしています。特に断熱改修では、弊社のマンションリノベーションブランド『マルリノ」の断熱特許工法を活用します。この断熱工法は、ボード状の高性能断熱材を内壁に貼り付けるというもので、薄くても高い断熱性能を発揮し、品質も安定する点が最大の特徴です。また、コンクリート面の凹凸に断熱パネルが追従することで隙間を減らし、壁の中で結露やカビが発生することによる劣化リスクも低減しています」

リノベるの三浦氏も「断熱材というと吹付け材のイメージをお持ちの方も多いと思います。吹き付け工事の場合、200ボルトの電力が必要になり、電源の確保が施工上の課題となります。その点、ボード状の断熱材であれば、200ボルトの電力は不要ですし、施工する立場としては施工しやすいというメリットがあります。また、吹き付け材よりも、(同性能だと)薄いため、部屋が断熱材の厚みで狭くなることも少ないですね」と続ける。

断熱改修では、積水化学グループの「マルリノ」の断熱特許工法を活用し、さらに、高効率のエアコン、エコジョーズ(高効率給湯器)、高断熱浴槽などの設備を設置することで、ZEH水準に適合させる。

新しい取り組み「ZEH水準リノベーション」は多くの人たちのサポートで生まれた

「ZEH水準リノベ」のプロジェクトは非常にスピーディーに進められた。業務提携の発表が2023年4月、そして一号案件(川崎市)の工事に着手したのは2023年7月だという。山田はこの背景を「地球にも住まい手にもやさしい快適な住まいを実現したいという両社の“思い”が大きな推進力となりました」と振り返る。

リノベるの三浦氏も「「ZEH水準リノベ」も積水化学との協業も初めてのことですし、全てが手探り。行政や認証機関の方にも念入りなヒアリングや調査が欠かせませんでしたが、多くの方にサポートをいただき、無事実現することができました。皆さん、快く協力してくださり、脱炭素社会実現の手段のひとつとして注目をいただいていることを実感し、使命感を感じました」と話す。

三浦氏の話に山田も同意する。

「『ZEH水準リノベ』が事業として成立するのかといった漠然とした不安を当初は感じることもありました。ただ、このプロジェクトを展開していくにつれて、東京都から話を聞きたいといったアプローチがあるなど、市場での影響や興味関心の大きさを肌で感じ、これならいける! と、そのまま突き進めてきたという経緯です」

多くの人が電気料金の差に納得、「快適さ」もお客さまから評価される

実際に、この取り組みをお客さまに伝えたことで、どのような反応があったのだろうか。

三浦氏は一番わかりやすく響いたのは電気料金と話す。

「昨今の電気料金の値上がりは顕著ですし、さらなる値上がりの懸念もある中、ZEH水準とそうではない場合の差をお伝えしました。第一号案件の場合、電気料金の差額が年間9万3,085円という試算になりました※4。これは、住宅ローンの返済額に換算した場合、35年返済で約300万円相当の月々返済額となり※5、『ZEH水準リノベ』にかかった300万円ほどの費用を相殺できる計算になります。それに加えて、補助金の制度や住宅ローン減税の上乗せといったメリットも大きいので、そうしたコスト面の試算を具体的な数字で紹介しました。また、意外だったのは、『快適』に対する評価が想像していたより高かったことです」

※4 【試算条件】《既存住宅想定》UA値1.75、空調:エアコン、給湯:ガス従来型給湯機、《本物件(リノベーション後)》UA値0.51、空調:高効率エアコン、給湯:ガス潜熱回収型給湯機、浴槽:高断熱浴槽。電気料金は2023 年6 月以降の改定料金単価(燃料調整費を含む)。再エネ賦課金は2023 年度の単価。激変緩和による値引き額は不算入。ガス料金は基準単位単価で算定(燃料調整費は含まない)。省エネ基準に基づくWEB プログラム(国立研究開発法人建築研究所)で計算した一次エネルギー消費量の結果を利用し、電気・ガス・灯油(上下水道は除く)に換算しています。「その他」の光熱費とは、暖房・冷房・換気・給湯・照明を除く、一般家電の電気料金を指します。あくまでシミュレーションであり、実際の光熱費は使用環境等の条件によって異なります。

※5 金利0.425%、元利均等、35 年返済の場合。

山田は「コスト的なメリットだけではなく、そこにさらに住空間の快適性がプラスされます。過度にエアコンを使わずとも夏涼しく、冬暖かいという、快適で暮らしやすい空間を実現する点が、この事業の大きなポイントだと思っていましたが、実際に評価いただけてよかったです」と振り返る。

今回の一号案件は10月に販売開始し、想定より早い1カ月ほどで売却となった。購入者にヒアリングしたところ、電気料金や快適性のほか、木のぬくもりある内装の雰囲気を気に入ったという結果が出た。

2023年に販売を開始した第一号案件(川崎市)のZEH水準リノベーションマンション

三浦氏は「今はまだデザインに惹かれて来場されるお客さまが多いですね。『ZEH水準リノベ』物件は周りの同程度の物件より販売価格が高いため、今後経済性や快適性などの良さを的確にお伝えして、『ZEH水準の家を買いたい』という気持ちになっていただくよう取り組んでいかなくてはと思います」と意気込みを語った。

2024年4月から「建築物の省エネ性能表示制度」がスタートし、表示ラベルには省エネ性能や断熱性能の等級などが分かりやすく表示される。まだ新築住宅のみ、努力義務という段階だが、これからは家も“燃費”を意識する時代。省エネが当たり前に評価される時代が来るだろう。

「ZEH水準リノベーション」のリーディングプレイヤーとして官民一体の大きな潮流を目指す

「ZEH水準リノベ」を普及させていく上では、どのような課題があるのだろうか。杉谷氏は先行する海外事例が時間差で日本にも来るだろうと語る。

「海外との比較として、例えば2050年のネットゼロ目標において米国の先進企業は「2030年に達成する」と誓約しています。ほかにもフォーチュン500にランクされるような大企業の多くも前倒しを宣言しています。中にはネットゼロの建物にしか入居しないといった動きもあります。そうした潮流は日本に時間差でやってくるかと思いますので、ビルオーナーさんからすると、建物の省エネ化=テナント集客力が高まる好循環ができると考えています。一号案件はマンションの一室でしたが、今後ビルをはじめ一棟のZEH水準リノベーション等の機会も積極的に狙っていきたいと考えています」

三浦氏は、コスト問題も意識していく必要があると説く。

「ZEH水準は断熱性能基準と一次エネルギー消費性能基準をクリアする必要があるのですが、一次エネルギー消費性能に関しては、高効率給湯器への更新など、物件によっては難しい場合があります。また、高効率給湯器がクリアできても、コストは大きな課題です。現在は国の補助金制度があるのでよいのですが、それがない場合でも事業収支を成り立たせる必要があります。もう少し原価を抑えられるよう、政府やメーカーなども含めリノベ業界を超えて考えていく必要があると思います。2050年を見据えると技術的にも啓発的にもさらなる加速が必要だと思います」

2人の話を聞いた上で、山田は普及拡大にあたり2社のみの連携だけでは足りないと話す。

「業界全体に普及させるには、私たち2社だけではおそらく不可能であり、官民が一緒になって推進していくことが重要だと感じています。そうしたベースがあって初めて、お客さまがZEHの必要性を認識するようになり、それが業界のスタンダードになっていくことにつながるわけです。今回のプロジェクトを両社の協業拡大とともに業界のスタンダード化にどうつなげていくのかが次の課題ですね」

それでもまずはこの2社からと動き出した。リノベるの三浦氏は「両社の区分マンションの買取再販事業で導入するだけでなく、個人や法人から請け負うマンションリノベーションにも展開することで、普及を後押ししていきたいと考えています」と話す。当初は首都圏からだが、関西や名古屋へ拡大し、事業スタイルや手法を確立後はパートナー企業へ拡げていくことを目指す。

このような取り組みもあり、リノベるは2023年11月に脱炭素化支援機構という官民ファンドから「2050年のネットゼロ」実現に向け、住宅ストックの脱炭素化推進に向けた出資も受けた。これは住宅・不動産・建設領域の出資第一号案件となり、脱炭素社会への貢献に向けたリノベーションという両社のアプローチにお墨付きをいただいた形だ。

山田も「マンション一棟であったり、賃貸住宅一棟であったり、まちづくりなど、さまざまな形態が考えられます。それぞれを掛け合わせながら、リノベるとの取り組みの中で事業領域を拡大して市場をけん引するような存在になりたいですね」と話す。

グローバルでもCO2排出の4割が不動産関連※6と言われており、まさに「建物のネットゼロなくして、地球のネットゼロ実現なし」(杉谷氏)だ。積水化学、そしてリノベるは住宅ストックのZEH化による脱炭素社会への貢献に向けて大きなうねりをつくっていく。

※6 Fifth Wall Insights

(関連リンク)

積水化学工業とリノベるが既存マンションのZEH水準リノベーションを提供開始

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