食事の量を減らしてダイエットしてもリバウンドするだけ…カナダ人医学博士が「1日おきの断食」を勧める理由
2024年4月9日(火)15時15分 プレジデント社
※本稿は、ジェイソン・ファン『糖脂肪』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/baona
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■「1日おきの断食」はホルモン活動を変える
減量の効果を長期間にわたって続ける秘訣は、基礎代謝量をいかに落とさないかである。基礎代謝量を落とさずに減量するにはどうしたらいいのだろう。何も食べない時間を長くとればいいのだ。
つまり、食事をする時間をコントロールすればいい——「間欠的ファスティング」だ。
ファスティングをすると、シンプルなカロリー制限では得られない、ホルモン活動の変化がいくつも起こる。
インスリン値がすぐに下がり、インスリン抵抗性(インスリンが出過ぎて、インスリンに対して体が抵抗する状態。インスリンは体に糖が入ってくると分泌され、糖を細胞に取り込ませる働きがある)を防ぐことができる。ノルアドレナリンの分泌量が増え、基礎代謝量は高いままになる。成長ホルモンの分泌が増え、筋肉量も保たれる。
対照実験でもこのことが実証されている。4日間続けてファスティングをしても、基礎代謝量は落ちない(安静時エネルギー消費量を計測)。それどころか、基礎代謝量は12%増える。基礎代謝量のひとつの指標である最大酸素摂取量(1分間に消費される酸素量)も同じくらい増える。
出所=『糖脂肪』
ほかの多くの研究でも、これらの点は確認されている。1日おきのファスティングを22日間続けても、基礎代謝量は減らなかった。
■カロリー制限よりもリバウンドするリスクが低い
1回の食事量をコントロールする方法では、1日の基礎代謝量が76%も減少した。これに対して、ファスティングをした場合、消費エネルギーが大きく減少することはなかった。つまり、毎日カロリーを制限した食事をしていると体は飢餓状態となって基礎代謝量が落ちるが、ファスティングをしてもそうはならないということだ。
研究ではこう結論づけられた。「1日おきのファスティングには、リバウンドのリスクはない」
減量しようと試みたことがある人にとって、これは注目に値する内容だろう。どんなダイエット法でも体重を落とすことはできるが、減った体重を維持することこそが本当の闘いだからだ。
ファスティングが効果的なのは、基礎代謝量を高いまま維持できるからだ。
これはサバイバルのメカニズムによる。
石器時代に洞窟に暮らしているところを想像してみよう。冬になると食べ物が少なくなる。このとき、もし体が飢餓状態になれば、外へ食べ物を探しにいくだけのエネルギーもなくなってしまう。日に日に体は衰弱していき、最後には死んでしまうだろう。
食べられない時間が長く続くたびに身体活動を低下させていたら、人間はとっくに絶滅していたことだろう。
■人間は食べなくてもエネルギーを蓄えられている
ファスティングをしている間(つまり食べられない間)、人間の体は豊富に蓄えてある食物——体脂肪——を利用する。基礎代謝量を高いまま維持し、口にする食べ物ではなく体脂肪として体に蓄えてあった食べ物を、燃料として使うのである。そもそも、体脂肪を蓄えるのはそのためだ。そうすれば、毛むくじゃらのマンモスをしとめにいくのに十分なエネルギーを補給することができる。
ファスティングをしている間、私たちの体はまず肝臓に蓄えられているグリコーゲンを使う。グリコーゲンがなくなると、体脂肪を使う。
これは、いいニュースだ。体脂肪ならたんまりと蓄えてある。燃やせ、燃やせ、どんどん燃やせ。燃料がたっぷりあるわけだから、基礎代謝量を落とす必要もない。
これこそが長く続く減量の秘訣であり、何度も減量に失敗して失望する方法との違いだ。まさに成否を分けるポイントである。
簡単にいえば、ファスティングとは、つねに何かを食べていては起こりえないホルモンの変化をもたらすものであり、それは、毎食カロリーを削減するだけでは起こりえない変化であるということだ。さらに、その効果を高めるのは、ファスティングを「間欠的」に行うという点だ。
2型糖尿病を引き起こす糖を燃やしたいなら、基礎代謝という火に燃料をくべつづけなければならない。ファスティングという試練をくぐり抜けることで、私たちは糖尿病のない新しい体を手に入れることができる。
■「ファスティングvs.低炭水化物ダイエット」どちらが効果的?
間欠的ファスティングと低炭水化物・ヘルシー脂質ダイエットのどちらもインスリン値を効果的に下げるので、減量することも2型糖尿病をよくすることもできる。
ファスティングはインスリンの分泌量を最も効果的に抑えることができるので、シンプルで最も手早く効果の出る方法である。
一方、炭水化物を極端に減らしたダイエットもとても効果的で、実際に食事を抜いたりしなくても、ファスティングの効果の71%が得られる。カロリーがほとんど同じでも、食事の55%を炭水化物で摂る場合に比べて、低炭水化物ダイエットは、インスリンの分泌量をおよそ半分に減らすことができる。ファスティングをすれば、その残りの50%をも減らすことができる。それがファスティングの効果だ。
写真=iStock.com/dragana991
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こうした研究結果から明らかなのは、「炭水化物を制限したことで血糖値が下がったのは、たんにカロリーを減らしたからではない」ということだ。
これこそ有効な知識というものだが、健康の専門家は口をそろえて「カロリーの摂りすぎが原因だ」と言う。
■ファスティングは2型糖尿病にも効く
だが、問題はカロリーではない。もしカロリーの問題ならば、ブラウニーひと皿と、オリーブ油でソテーしたサーモンとケールサラダは、カロリーが同じであれば、同じくらい太りやすく2型糖尿病を引き起こしやすいということになる。だが、この考え方は明らかにばかげている。
高度に加工され、インスリンの分泌を促しやすい食べ物をたくさん食べたら、その分、インスリン値を低い値に戻すためにファスティングをする必要がある。インスリン値を下げるのに、ファスティングほど効果的なものはない。
では、ファスティングと低炭水化物・ヘルシー脂質ダイエットの、どちらを実践すべきだろうか? どちらか一方にしなければならないという決まりはない。
最大限の効果を得るために、ファスティングと低炭水化物・ヘルシー脂質ダイエットの両方を組み合わせればいいのだ。
食事を変えることで血糖値とインスリン値を下げることができて2型糖尿病がよくなるのなら、薬を飲む必要などないのでは? そのとおり。2型糖尿病は食生活が原因の疾患なのだから、食生活を変えればよくすることができる。
■大切なのは体脂肪全体ではなく、異所性脂肪を減らすこと
ファスティングをすれば、自然と体(糖が入った器)から糖がなくなる。
ジェイソン・ファン『糖脂肪』(サンマーク出版)
いったん空になれば、再び糖が体内に入ってきても、それが血中に放出されることはないので、もはや糖尿病ではない。糖尿病はよくなっている。
早くも1916年には、ジョスリン医師が、「ファスティングは糖尿病に効果的だ」と報告している。
近年では、1969年にその効果が報告されている。13人の肥満患者が減量するために入院したのだが、その後の検査で2型糖尿病であることがわかった。
彼らは人によって17日から99日にわたるファスティングを行い、平均で20キロの減量に成功した。ひとりの例外もなく、糖尿病はよくなっていた。
興味深いのは、糖尿病がよくなったのは、たんに体重が減ったからではないという点だ。大切なのは体脂肪全体を減らすことではなく、異所性脂肪を減らすことなのだ。
2型糖尿病を改善するためにファスティングを行うにあたっては、いくつかの基本原則がある。糖尿病がよくなるまでの期間は、ファスティング時間の長さと病歴の長さによって変わる。
ファスティング時間が長いほど効果は早く出るが、2型糖尿病になってから20年経っている場合は、数カ月間ではよくならないだろう。もっと長くかかるが、実際の期間は患者ひとりひとりによって異なる。
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ジェイソン・ファン
医学博士
減量と2型糖尿病の治療にファスティングを取り入れた第一人者。その取り組みは『アトランティック』誌、『フォーブス』誌、『デイリー・メール』紙、「FOXニュース」などでも取り上げられた。ベストセラー『The Obesity Code』(『トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ』サンマーク出版)の著者。カナダ・オンタリオ州のトロントに在住。
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(医学博士 ジェイソン・ファン)