「ふざけた記事」を作る会社だから、職場の「整理整頓」はちゃんとする…「イケてるしヤバい男 長島」の経営哲学

2024年5月11日(土)16時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Michael Edwards

写真を拡大

仕事を円滑に回すために必要なものとは何か。Webメディア「オモコロ」を運営するバーグハンバーグバーグ代表取締役の長島健祐氏は「大切なのは、最低限でいいから守りたいルールを設けることだ。基準があるからこそ自由に動きやすくなる」という——。

※本稿は、長島健祐『センスは5% クリエイターをサポートするための45の技術』(徳間書店)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/Michael Edwards
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Michael Edwards

■ゆるい会社でも就業規則は必要だった


僕が社長になるまで弊社には就業規則というものが存在していませんでした。


就業規則は従業員数によって作成の義務が発生するかどうかが変わってくるので、当時は作成しなくても良かったわけです。ですが、就業規則がなかったがゆえに、「何をしたらだめなのか」「どういう働き方がOKなのか」といった明確な基準が存在しないため、都度上長が判断していました。


当時、なんとなくあったルールとしては、「だいたい10時から19時まで働く」「必要に応じて残業をする」「用事があれば『休みたい』と言ってお休みを取る」ようにしていました。それはそれでとても良い規則ではあります。


ただ、例えば「一週間休みたい」と言ったらダメと言われたり、遅く出社すると注意されたりはするので、注意された本人からすると「ルールもないのになんで怒られたんだろう」といった負の感情となり、なんだか腑に落ちません。怒られることは誰だっていやですよね。


そういったこともあって、就業規則をしっかり作りました。


■ルールがあることで逆に自由度が増す


「この時間にきたら怒らないし、この時間から大幅に遅刻したら注意する場合もある」といったみんながわかるルールを敷くことで、それ以外は自由にしていいんだと思い、逆に自由度が広がったと感じます。


休みに関しても「用があったらその都度休む」というスタイルではなく、「有給休暇」という法に則ったルールを作ることで「ルールなんだから休んで良いんだ」という風潮をつくり「休むことは悪じゃない」という感じにして、それぞれの休みを楽しんでもらっています。


ちなみに、一般企業の有給消化率は40%くらいといわれていますが、弊社の有給消化率は90%以上です。


(なぜ100%じゃないんだと思うのですが、100%消化していないメンバーにいわせると、「100%消化しちゃうとなんかあったとき怖いから」とのことでした)


「ルールを作る」というと、堅苦しくて行動範囲が狭まる印象もありますが、それもケースバイケースで、逆に自由度が増すこともあると思います。


■出社してすぐにソファで寝ていても構わない


弊社では昼寝を1時間まではOKとしています。つまり、休憩と組み合わせると2時間昼寝をしてもOKということになります。


昨今、会社のルールとして昼寝OKの企業は多いです。僕が今までいた会社でも昼寝OKとしていた会社はいくつかありましたし、仮眠スペースがある会社もありました。ルール化はされてなくても昼寝しても特に怒られない場合がほとんどなので、もはや珍しくはないかもしれませんが、弊社の場合は就業ルールにもしっかり記載しています。そのこともあって「寝ても怒られない」「合法的に寝て良いんだ」と思ってもらえているようで、業務時間中に昼寝してるメンバーは多くいます。


写真=iStock.com/Rawpixel
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Rawpixel

中には出社してすぐに寝たり、帰宅する前に寝たりするメンバーもいて、「そのタイミングで昼寝する意味ある⁇」と思うこともありますが、ここらへんの良し悪しはA/Bテストしづらい領域ですし、我々にとってひとつのカルチャーでもあるので一旦はこのまま続けています(どんなカルチャーだよ)。


「昼寝を取り入れることで業務改善してる実感はありますか?」と聞かれることはしばしばあります。自分の話や周りの話でいうと、スケジュールがタイトな案件があると前の日に深夜まで対応してることも稀にあって、そのまま寝不足で出社するため、なんだか一日中頭がぼーっとしてるときは、トイレや机でうとうとするよりも、いっそ昼寝をしてリセットすることでその日を頑張って乗り切れることもあるので、そういう意味では良いと思います。


他には、お昼ごはんをいっぱい食べて眠くなっても安心だとか、夜中にゲームをしたいから業務時間中に寝て睡眠時間を確保すると言ってたメンバーもいました。


■昼寝スペースの充実にこだわった新オフィス


仕事は真剣にマジメにやらねばならないという意見もよくわかります。ですが、自分の人生を生き抜くためにもときには息を抜いて、自分本来の姿を取り戻す時間があってもいいように僕は思っています。業務改善になっているかはわかりませんが、メンバーにとっては少なくとも有意義な制度を担ってるのかなと思います。


また、最近オフィスを引っ越して休憩スペースも刷新されたわけですが、「昼寝のしやすさ」ということにも気をつけて設計しました。多くの人が横になれるようにソファを二段にしたり、上にいる人が寝ぼけて転げ落ちないようにストッパーをつけたり、オットマンを駆使することで巨大ベッドを作るようにできたりと、色々な工夫をしました。


引っ越ししたてで寝心地が変わるので寝づらくならないか心配だったのですが、みんな持ち前の適応能力の高さを見せつけるかのごとく、すぐにしっかりとした熟睡を炸裂させてました。


■「なぜオフィスが汚いとダメなのか」から説明する


弊社では記事や動画の企画のために、色々な小道具や衣裳を制作したりすることがあります。他の会社と比べてもかなり物が多い会社なのでゴミも溜まりやすいのですが、それを差し引いてもゴミが多いです。


衣裳の脱ぎっぱなし、撮影で使った小道具の出しっぱなしはもちろん、飲み終わったペットボトルのゴミ、よくわからない落書きが書かれた紙などいくら注意してもなくなりません。


それなのに勝手に捨てると「それは使うものだった」とか言われたりして掃除をする人もとても困ります。ということで、しっかりとしたお掃除ルールを作りました。


弊社のお掃除基本ルール
・私物や捨ててほしくないものは「自分の机」(机の下も可)に保管すること。
・撮影で定期的に使用するものは倉庫のボックスか倉庫のハンガーにかけること。
・どうしても執務スペースに保管したいものは日付を書いて張り紙をすること。
・これに外れてるものは独断でバシバシ捨てていきます。

といった感じです。給湯室でも倉庫でも自分の私物を置くことを禁止して、そこにあるものは勝手に捨ててもいいという感じにしました。


お掃除ルール制定の背景としては、「お客様がきたとき印象が悪い」「業務(導線、会議等)の邪魔になる」ということはもちろん、「掃除をしてくれる人への負担を減らしたい」ということもありました。


一般的にも、就業規則的にも「オフィスをきれいにしよう」ということは推奨されてるはずではありますが、お掃除のルールを作るにあたって、「そもそもなんで汚いとだめなんだっけ?」というところから説明しました。


もちろん、お掃除ルールが制定されてもお掃除ができない人はできないです。ただ、こういったルールがあることで「お掃除ができる人」が自主的に清掃できる仕組みにしたことで、少しずつオフィス美化レベルが上がりつつあると感じています。


■「自分が出したゴミはしっかり片付けること(糞尿含む)。」


ルール化することの弊害もたまにあります。


以前、男性のトイレでうんこが流れていないことがありました。これに対して「うんこ流してください!」と全員宛にアナウンスしたのですが、「うんこを流さなきゃダメというルールってあるんですか?」と反論してきたメンバーがいました。たしかにこれはルールに書いていなかったので怒ることはできませんでした。


ルールを作ると穴をついてくる人は必ずいます。ルールを作るのであれば、しっかり網羅的に制定しないとと思いました。また、これ以来「自分が出したゴミはしっかり片付けること(糞尿含む)。」という一文を追加しました。


■「加湿器vs.除湿機を見たい」と言われたらどうするか


ルールを作る弊害として「ルールをハックするやつ」というのが必ず出現します。


僕はメンバーとの付き合いが長く特性もわりと知っているので、ルールを作る際は「こういうツッコミが入りそうだな」といったことも想定して作るようにしています。



長島健祐『センスは5% クリエイターをサポートするための45の技術』(徳間書店)

最近も弊社が運営しているメディアのラジオで、僕が聞いていないと思ってか「今は引っ越ししたてで稟議がざるになってるから今のうちいっぱい稟議出したほうがいい」といった事を言ってたり、「加湿器がほしい!」と言った社員に対して、たしかに乾燥していたということもあって、かなり大きな加湿器を購入して設置したら、そこの近くにいた別の社員が「除湿機がほしいです! 加湿器の前に置いて戦わせたいです」とわけのわからないことを言ってきたり、ほうぼうからよくわからない意見がとんできます。


ルールを立てるときには、ツッコミどころを意識してたくさんの目線を組み入れて設計しています。が、「加湿器vs.除湿機を見たいので除湿機を購入してほしい」といった想定外の申請も来るわけです。


こういうときはどうしているか。定量的、定性的両軸のバランスを見ながら判断するようにしています。


例えば加湿器であれば一般的な推奨湿度などがあるのでそこを指標に置きつつ、執務スペースの実際の数値を計測して定量的に判断していきます。「空気が乾いている」というのは個人によっても感覚の差があるので全員の意見を聞くわけにもいきません。自分の感覚に頼りすぎないように注意します。


定性的にというと、「これを導入したらビビるだろうな」「盛り上がるだろうな」という感じを意識しています。例えば今回に関していうと「除湿機を導入する」です。きっと一部のメンバーは盛り上がると思います。ただ、この定性判断はとても難しく、結局は個人の感覚によるものですし、仮に除湿機を導入して加湿器と戦わせてもすぐ飽きるのは目に見えています。定性的すぎるのはよくありませんが、いずれのバランスも大事にしています。


もちろん他にも大切なことはありますが、最低限守りたいルールさえ作っておけば、どんなにブレてしまったとしても会社として立て直しが利くので、不安はないと思います。ルールは自由になるためでもありますし、元の場所に戻ってこられる安心感を得るために作るものでもあると、僕は考えています。


----------
長島 健祐(ながしま・けんすけ)
バーグハンバーグバーグ代表
新潟県新潟市出身。大阪芸術大学音楽学科卒。ニコニコ動画の広告の立ち上げに参画。その後、グリー株式会社、株式会社nanapi(現Supership 株式会社)でIP戦略、アライアンス、メディア運営など様々な分野で経験を積み、2016年にバーグハンバーグバーグに参加。2019年、代表取締役に就任。通称「イケてるしヤバい男 長島」。
----------


(バーグハンバーグバーグ代表 長島 健祐)

プレジデント社

「職場」をもっと詳しく

「職場」のニュース

「職場」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ