「へき地」と都市部で「かかりつけ医療機関」の質に差はない

2024年5月14日(火)14時0分 Digital PR Platform


—全国の住民を対象としたアンケート調査より—



 横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻の金子 惇准教授らの研究グループは、日本全国の一般住民の方を対象とした「かかりつけ医療機関*1」についてのアンケート調査を行い、「へき地*2」と都市部で「かかりつけ医療機関」の質に差がないことが明らかになりました。
 本研究成果は、BMC Primary Care誌に掲載されました(4月25日オンライン公開)。




研究成果のポイント 


「かかりつけ医療機関」の質の「へき地」と都市部での比較は国内初。
本学研究者が独自開発した患者中心のプライマリ・ケア評価尺度(PCPCM*3)日本版と、へき地尺度 (Rurality Index for Japan: RIJ)を使用し、「かかりつけ医療機関」の質に「へき地」と都市部で差があるかを検証した初めての取り組み。
研究参加者の年齢や性別などを調整してもなお、「かかりつけ医療機関」の質と「へき地度」には関連がなく、「へき地」においても都市部と同様に「かかりつけ医療機関」からの医療が提供されていることが示唆された。






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図1 「かかりつけ医療機関」に対する「へき地度」の関連


(「かかりつけ医療機関」と「へき地度」の間には有意な関連は見られなかった)









研究背景

 国際的には、「へき地」に住むことは健康格差の一因とされており、健康格差への取り組みは「かかりつけ医療機関」の重要な役割とされています。
 一方で、国内の「へき地」と都市部の「かかりつけ医療機関」が提供する医療の質の違いは調査されていませんでした。実際に「へき地」と都市部で「かかりつけ医療機関」が提供している医療の質に差があるかを調査することは、それぞれの「かかりつけ医療機関」が、役割を果たしているかどうかを検討するための重要な基礎情報と言えます。しかし、これまで日本ではこのような調査は実施されていませんでした。また、他国で行われた先行研究では「かかりつけ医療機関」の質評価や「へき地」の測定に用いられる指標も、妥当性が十分に検証されていないものが用いられてきました。





研究内容
 本研究では、オンラインツールを用いたアンケート調査を行いました。日本全国の性別、年齢構成を元にランダムに選出した全国の1,112名の方に調査を依頼し、800名から回答を得ました(回答率71.9%)。800名の回答者のうち「かかりつけ医療機関」を持っていると回答したのは423名(52.9%)で、そのうち「かかりつけ医療機関」が診療所と回答した方が70.2%、病院が29.8%でした。今回の研究では「かかりつけ医療機関」の質指標として患者中心のプライマリ・ケア評価尺度(PCPCM)を用いて、研究参加者から見た自身の「かかりつけ医療機関」の質を4点満点で評価してもらいました。また、「へき地」の度合いを測定するために研究参加者の郵便番号から算出される「へき地度」を用いました。年齢、性別、学歴、世帯年収、主観的健康観、婚姻状況、慢性疾患の有無を調整して「かかりつけ医療機関」の質と「へき地度」との関連を検証したところ、「かかりつけ医療機関」の質と「へき地度」の間には有意な関連は見られませんでした(「かかりつけ医療機関」の質に対する「へき地度」の回帰係数は− 0.002、95%信頼区間は− 0.005から0.001でした)。また、この傾向は「かかりつけ医療機関」の種別(診療所、病院)や年齢別(65歳以上、未満)で見ても同様でした(図1参照)。







今後の展開
 本研究では、「かかりつけ医療機関」の質と「へき地度」に関連がないことを明らかにしました。この結果は「へき地」においても「かかりつけ医療機関」の質は都市部と同様である可能性を示唆するものです。今後は、「へき地」と都市部の健康格差を生む要因の追求、また「かかりつけ医療機関」が健康格差解消に向けて実施している取り組みとその効果検証を行う予定です。

研究費
 本研究は、JSPS科研費 若手研究(JP20K18847)、基盤B(JP24K02670)、横浜市立大学学長裁量事業 第5期戦略的研究推進事業「研究開発プロジェクト」の支援を受けました。

論文情報
タイトル:Patient experiences in primary care do not differ according to rurality: a cross-sectional study
著者:Makoto Kaneko, Hironori Yamada & Tadao Okada
掲載雑誌:BMC Primary Care
DOI:https://doi.org/10.1186/s12875-024-02397-2




[画像2]https://digitalpr.jp/simg/1706/88103/350_77_2024041013231766161435bd3c4.jpg





用語説明
*1 かかりつけ医療機関:本研究では「体調が悪いときや健康について相談したいときに、いつも受診する医療機関はありますか?はい/いいえ」について「はい」と答えた医療機関を「かかりつけ医療機関」としている。

*2 へき地:「へき地」という言葉は医療資源の乏しい郡部を指す言葉として行政文書でも用いられており、英語のruralに対応する言葉として本研究では「へき地」「へき地度」という言葉を用いている。ただ、「へき地」も”rural”もネガティブなニュアンスを含んで用いられる場合もあるものの、他に適切な用語が無いため使用されているという側面もあり、その点を鑑みて、本プレスリリースでは「」付きの「へき地」「へき地度」という表現を用いている。

*3 患者中心のプライマリ・ケア評価尺度(PCPCM):プライマリ・ケア(身近にあって、何でも相談にのってくれる総合的な医療)は、病気に至る前の状態での健康相談や予防医療など、幅広い領域にまたがる。その質の評価尺度PCPCM(Person-Centered Primary Care Measure)は、患者さんの視点からプライマリ・ケアの医療機関の質を評価する質問紙で、11項目という少ない質問数でプライマリ・ケアにとって重要な11の領域を評価できる点、プライマリ・ケアの質を国際的に比較できる点が特徴となっている。
横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻 金子惇講師(発表当時)らの研究グループがPCPCMの日本版を開発し、2022年5月に発表。
https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2022/202205kanekomakoto.html

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