「悩みごとに感想を言う」は絶対ダメ…「子どもが不登校で」と打ち明けてくれた人に返す寄り添いフレーズ
2024年5月20日(月)15時15分 プレジデント社
※本稿は、藤本梨恵子『なぜか惹かれる人の話し方 100の習慣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/yavdat
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yavdat
■「Iメッセージ」を使えば相手も自分も不快にならない
相手も自分も尊重するアサーティブな会話方法の1つに、「Iメッセージ」があります。自分を主語にした話し方です。
反対に、相手を主語に話すことを「Youメッセージ」といいます。
Youメッセージは相手を批判しているように聞こえますが、Iメッセージは自分の気持ちを伝えているだけにとどめることができます。
それぞれ、次のようなイメージです。
Youメッセージ:「(あなた)大きな声出さないで!」
Iメッセージ:「(私は)大きな声で話されると怖くなるので、冷静に話してもらえる?」
Youメッセージ:「(あなた)メモをとってください!」
Iメッセージ:「(私は)メモを取ってもらえると安心して話せるので、メモをとってもらえますか?」
たとえば、帰宅が遅れた家族に、「帰りが遅くなるときは連絡ぐらいしなさいよ!」とYouメッセージで攻撃的に言っても、相手から反省を引き出すことは難しいですよね。おそらく、お互いに不機嫌になって終わりです。
そこで、協力が欲しいときに事前に知らせる「予防のIメッセージ」が有効です。
「私はあなたの帰りが遅くなると、何かあったんじゃないかと心配になるの。だから遅くなりそうなときは連絡もらえるかな?」
と事前に伝えておけば、相手も協力しようという気持ちになります。
また、自分の怒りに触れるような行動については、雑談の中で、
「私、遅刻する人が苦手で……、相手の時間を奪っていることを考えられていない。つまり、私のこと大切にしてくれてないって思っちゃうから」
と伝えておくと、空気が読める人は、言われなくても注意するようなります。
不機嫌になったり喧嘩になったりするのは、お互いにしんどいものです。
だからこそ、言いたいことはIメッセージを使って、相手も自分も不快にならないように伝えることが大切です。
■悩みごとに感想を言わない
相手の地雷を踏みやすいのは、相手が悩んでいるときや、元気がないときのひと言です。
ご主人を亡くした女性「毎日、悲しくて泣いてご飯も食べられないの……」
友人「でも、元気出して、無理してでもご飯は食べなきゃ!(自分の意見)」
ご主人を亡くされた女性は「自分が同じ立場だったらどう思うのかな? そんなことを言うくらいなら一緒に泣いてくれたほうがよほど救われる……」と言いました。
励ましたつもりが、目の前の人の悲しみに寄り添えていなかったのです。
人は、「気にするな」「元気出して」などと正論で励まされるより、痛みに寄り添ってもらえたほうが癒やされます。
この場合、「悲しいよね。ご飯も食べられていないんだね……」と共感すれば、相手は気持ちを受け止めてもらえたと感じ、安心します。
■悪気のない感想でも相手を傷つけることがある
他にも、よかれと思って言ったことがひんしゅくを買うケースもあります。
母親「子どもが不登校で、家で暴れて、壁に穴を開けたりして……」
友人「そんな状態はひどい! 私なら気が狂ってるわ!(自分の感想)」
これは、共感したつもりで「私の置かれている状態ってそんなにひどい?」と相手の感情を煽り、不安にする不用意なひと言です。「不登校で、暴れるんだね」と相手の言葉を繰り返すと、変に不安を煽ることもなく、相手も本音を話しやすくなります。
私「抗がん剤治療は治療費が1カ月10万円くらいかかるみたいで……」
知人「え、高っ!(自分の感想)」
友人は悪気なく金額だけを聞いて高いと言っただけですが、癌患者にとっては治療費=命の値段です。では、私は1カ月いくらの治療費なら生きていいのだろうと感じました。これも「治療費がかかるんだね」と繰り返すだけでよかったのです。
どの会話も悪気はないのですが、悩んでいる相手に対して自分の意見や感想を反射的に発することで、相手を傷つけています。
写真=iStock.com/SunnyVMD
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センシティブになっている人には、意見や感想ではなく、相手の言葉を繰り返すのが一番です。常に現在進行形で相手に寄り添うことが大切です。
■相手の気持ちにピタリと合った言葉を伝える方法
あなたが家電量販店で「どの空気清浄機を選べばいいだろう」と顎に手を当てながら迷っているときに、こんな風に言われたらどう思いますか?
店員「これだけ数が多いと、どれにするか悩みますよね?」
「よくぞ、わかってくれました!」という気持ちになりませんか?
実は、このように憶測で相手の心が読めているかのように話すことを、NLP心理学では「読心術(マインドリーディング)」といいます。
相手の気持ちにピタリと合った言葉を伝えられれば、「この人は私のことをよくわかってくれている!」と一気に心理的距離が近づきます。
もちろん、相手の言いたいことを汲み取れずに見当違いの言葉をかければ、不信感につながります。だから、相手をよくキャリブレーション=観察することが重要です。
これは、催眠療法のカリスマ、ミルトン・エリクソンが治療に用いた手法です。
「あなたは、少し神経質になっているようですが、この治療に興味を持ち始めたのかもしれません」と外見を観察し、自分の解釈を伝え、クライアントに注意を向けていることを伝えます。
「〜かもしれません」「〜でしょう」という言い回しで相手の気持ちを読み取り、同調することで、ラポール(信頼関係)を構築します。
■尊敬や思いやりのない読心術は「上から目線」と化す
しかし、この読心術も言い方次第です。
藤本梨恵子『なぜか惹かれる人の話し方 100の習慣』(明日香出版社)
妻「学生時代は30回ぐらいできた腕立て伏せ、昨日やったら1回もできなかったの!」
夫「だろうね。できるわけないよ。わかりきってるだろ?」
妻「……」
この夫の言い方は、「言われなくてもお見通しです」という上から目線な印象を相手に与えます。妻は共感してもらえず、嫌な気持ちになったのです。
自分に心の矢印が向いているとき、相手に影響力を与えることはできません。
もし、夫がこのとき、妻に共感して「できると思ってやったのにできないと、驚くよね」などと言っていたら、妻も「そうなのよ!」と会話が弾んだでしょう。
読心術は相手に対する尊敬や思いやりがなければ機能しないのです。
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藤本 梨恵子(ふじもと・りえこ)
ファイン・メンタルカラー研究所代表
NLP心理学を中心にコーチング、カウンセリング、マインドフル瞑想などの手法を習得し統合。その手法を生かし、キャリアカウンセラー・講師として独立。各企業・大学・公共機関の講演の登壇数は2000回を超え、婚活から就活まで相談者数は1万人を超えている。コーチング、パーソナルカラー、カラーセラピスト、骨格診断ファッションアナリスト等のプロ養成講座の卒業生は500人を超え、個人診断においては1000人を超える。著書に『いつもよりラクに生きられる50の習慣』(かんき出版)などがある。
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(ファイン・メンタルカラー研究所代表 藤本 梨恵子)