新入社員に「シャツは何色がいいか」と聞かれて「臨機応変に」は絶対ダメ…頭のいい人がやっている言葉選び

2024年5月24日(金)15時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/johnnyscriv

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相手に伝わるたとえ話はどうすればできるか。カウンセラーの藤本梨恵子さんは「たとえ話の極意は、縁遠いものや初めて聞くものを身近なものに置き換えることだ。難しかったり、マニアックなものにたとえてしまったりする場合は、たとえ話で嫌われる場合もある。具体的には『①主訴を考える』『②類似要素を探す』『③聞き手を理解する』の3ステップでつくるといい」という——。

※本稿は、藤本梨恵子『なぜか惹かれる人の話し方 100の習慣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/johnnyscriv
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■新入社員に「臨機応変に」では迷って行動できない


「やってと言ったのにやってくれない」「人の話を聞いていない」とイライラしたことはありませんか? 話が噛み合わないのは、話の抽象度と具体度が原因かもしれません。


「掃除して」は抽象的なので、「窓を拭いて」「掃除機をかけて」とお願いしたほうが具体的です。犬を具体化すると柴犬、ブルドッグ、チワワなどの種類に分類できます。反対にハンバーグ、パスタ、カレーを抽象化すると「洋食」や「料理」になります。


具体化とは、普遍的な漠然としたことを特定の1つに当てはめ、はっきりさせることです。


抽象化とは、複数の事柄に共通する要素やパターンを発見することです。


頭のいい人は抽象度が高いと言われますが、詳しくは次のような違いがあります。


具体化

①目に見える②万人が理解できる③解釈の自由度が低い④応用が利かない⑤やり方⑥実務寄り⑦実体と直結


抽象化

①目に見えない②一部の人しか理解できない③解釈の自由度が高い④応用可能⑤考え方⑥学問寄り⑦実体と一見乖離


あるマナー講師が「新入社員の方に『シャツは何色がいいですか?』と聞かれたら、半年は白シャツで通勤が無難と伝えている。『社内の人を見ながら臨機応変に』は不親切」と話していました。


経験値が少なく、判断が難しい場合や、不安が大きく「臨機応変に」では迷って行動できない場合は、具体的に伝えたほうが実践しやすいからです。


■相手に合わせた思考と言葉選びが大切


しかし、長期的な視点で見ると、これでは応用が利きません。


ベテラン社員や経験豊富な人は、具体的な指示は窮屈に感じます。「清潔で機能的、華美でないシャツで」と抽象的に伝えたほうが、自由にシャツが選べ、応用が利きます。


相手に合わせて、具体と抽象を行き来できる思考と言葉選びが大切です。


具体的に話すには、「具体的には〜」と話し始め、5W2Hのようにいつ、どこで、誰が、何をするなど目に見えるレベルに落とし込んで個別化し、現場ですぐに行動できるようにするのがポイントです。


写真=iStock.com/Seiya Tabuchi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Seiya Tabuchi

抽象化は「ざっくり言えば〜」「この話の肝は〜」と同じ要素をまとめて物事の全体像が第三者にイメージできるよう、方向性や大枠を示して話します。説明は、抽象→具体の順で話すと、わかりやすくなります。


■腑に落ちるたとえ話のつくり方3つのステップ


たとえ話が上手になると、聞き手が「なるほど!」と思わず膝を叩く場面が増えます。


たとえ話の極意は、縁遠いものや初めて聞くものを身近なものに置き換えることです。


「分散投資」を説明する場合、どちらがわかりやすいでしょうか?


①「分散投資とは特定の商品に絞って投資するのではなく、複数の商品(様々な国や地域、銘柄など)に投資をして、リスクを分散することです」
②「株の世界では、卵は1つのカゴに盛るなという格言があります。卵を1つのカゴに盛ると、落としたときにすべての卵が割れますが、複数のカゴに分けておけば、1つがダメになっても他のカゴの卵は無事です。このように投資リスクを分散するのが分散投資です」


人は頭で理解しても、腑に落ちなければ行動しません。だから、②のように身近で五感に訴えるたとえ話ができると、聞き手に、自分ごととして理解してもらい、行動を変えることができるのです。


では、たとえ話はどのようにつくればいいのでしょうか?


次の3ステップでつくります。


①主訴を考える:一番伝えたいこと(=本質)は何かを考える
②類似要素を探す:その本質と共通する要素を洗い出す
③聞き手を理解する:共通要素を、聞き手にとって一番身近なもので表現する


「要約=文章の要点をまとめること」の説明をしたい場合、①本質は「無駄な部分を削り、要所を残すこと」。


②「無駄を削り、要所を残すこと」は、ダイエット(余分な贅肉を落とすこと)や剪定などにも共通する。


③聞き手の趣味がガーデニングの場合、身近なものは「剪定(不要な枝葉を切り落とし、樹形を整えること)」と判断します。


そして、「要約とは、庭師が木を整える際に枝葉を切り落とし、幹だけ残すように、無駄な部分を削り、肝心な部分だけ残すことです」とたとえます。


伝える上では、相手にとって何が身近なことなのかを考えることが大切です。


■たとえ話で嫌われる人と好かれる人


上手にたとえ話ができれば、複雑な内容もすんなり理解してもらえます。


しかし、たとえ話で嫌われる場合もあります。それは、難しくたとえてしまったり、一部の人しかわからないようなマニアックなものにたとえてしまったりする場合です。


たとえ話の本質は、相手が想像しやすい身近なものにたとえることです。



藤本梨恵子『なぜか惹かれる人の話し方 100の習慣』(明日香出版社)

①「犬に噛まれたときのように驚いた」
②「ピラニアに噛まれたときのように驚いた」


①は多くの人が経験していますが、②は特定の人しか経験しません。より多くの人が経験していること、知っていることにたとえなければ伝わりません。


「たとえツッコミ」が上手な芸人さんは、誰もが想像できる言葉でツッコむから笑いがとれるのです。


早朝のメールに「こんな朝早くから、イカ釣り漁船の漁師か!」とツッコむ。「面倒見きれないような相方とよくやってますね」と言われたら、「ええ、だから、俺、国民栄誉賞をいただきたいです」と返すなど、多くの人が共感できる言葉を選びます。


■たとえ話ができる人は好かれる


実は、先ほどご紹介したたとえ話をつくる3ステップは、話し上手になるための複数の能力の組み合わせでできています。


①一番伝えたいこと=本質は何かを考える(主訴を考える)

これは、普段から相手の話を傾聴することで養われます。


相手が一番言いたいことは何かを常に考え、主訴をひと言で言えるように練習すると、主訴を聞き取る傾聴力・ひと言にまとめる要約力・簡潔に伝える発信力が身につきます。


②その本質と共通する要素を洗い出す(抽象度を上げる)

複数の事柄に共通する要素を見つけるためには、様々な人の立場で物事を考えるので、視野が広がり、問題解決能力も上がり、他者への共感力も高まります。


③共通要素を、聞き手にとって一番身近なもので表現する(聞き手を理解する)

相手に心の矢印が向いていなければ、相手が何を一番身近に感じるか知ることができません。だから、相手に関心が向き、他者理解が進みます。


たとえ話ができる人は、相手の気持ちがわかり、それを言葉で表現できるので、好かれます。


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藤本 梨恵子(ふじもと・りえこ)
ファイン・メンタルカラー研究所代表
NLP心理学を中心にコーチング、カウンセリング、マインドフル瞑想などの手法を習得し統合。その手法を生かし、キャリアカウンセラー・講師として独立。各企業・大学・公共機関の講演の登壇数は2000回を超え、婚活から就活まで相談者数は1万人を超えている。コーチング、パーソナルカラー、カラーセラピスト、骨格診断ファッションアナリスト等のプロ養成講座の卒業生は500人を超え、個人診断においては1000人を超える。著書に『いつもよりラクに生きられる50の習慣』(かんき出版)などがある。
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(ファイン・メンタルカラー研究所代表 藤本 梨恵子)

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