研修で学んだことをどうすれば仕事に活かせるか――“研修転移”の実践方法

2024年6月6日(木)6時0分 ダイヤモンドオンライン

研修で学んだことをどうすれば仕事に活かせるか――“研修転移”の実践方法

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2018年6月に発売された書籍『研修開発入門 「研修転移」の理論と実践』が、ウィズコロナの時代に、人事(研修)担当者のバイブルになっている。企業の経営・人事側からすれば、時間と労力をかけて行(おこな)った研修での学びを、受講者には日々の仕事で少しでも役立ててほしいはず。しかし、実際は、研修を「やりっぱなし」で終わるケースも多いだろう。書籍の共著者であり、昨年(2023年)9月に「“研修の転移と評価”実践会」を立ち上げた、株式会社ラーンウェル 代表取締役の関根雅泰さんに話を聞いた。(ダイヤモンド社 人材開発編集部、撮影/菅沢健治)

「研修前」「研修中」「研修後」という3つの時間軸

 新年度がスタートして約3ヵ月。多くの企業・団体では、新入社員研修をはじめ、多くの研修が行われている。その一方で、“研修を行ったものの、学んだことが実際の業務には活かされていない”というケースが多いのではないだろうか。そこで着目したいのが、「研修転移」という概念だ。書籍『研修開発入門 「研修転移」の理論と実践』(*1)では、「研修転移」とは、「研修で学んだことが現場で実践される、成果が生み出されること」と定義されている。そもそも、「研修転移」とは、どういうものなのか。『研修開発入門 「研修転移」の理論と実践』の共著者であり、数々の研修企画に携わる関根雅泰さん(株式会社ラーンウェル 代表取締役)は、次のように語る。

*1 書籍『研修開発入門 「研修転移」の理論と実践』(ダイヤモンド社)はこちら

関根「研修転移」とは、一言で表すと「現場実践」です。研修で学んだことが、教室(研修会場)を離れて職場に移ることを意味します。私共では、企業に向けての研修や研修企画の提案を行っていますが、「研修転移」について、企業の方々にお話しすると、「そうしたいけど、実際はそこまでできません」と言われてしまうことがたびたびあります。また、異動によって初めて人事(研修)担当になった場合、「研修転移」と言われても、その手段がなかなか思い浮かびません。

 では、どうしたらいいのか? ひとつは、研修を「研修前」「研修中」「研修後」の3つの時間軸で考えてみることです。これまでは、「中(=研修中)」にだけ注目して、研修の教室内・時間内できちんと学べばよいと思われてきましたが、研修の学びを現場で実践させるためには、「前(=研修前)」と「後(=研修後)」も重要なのです。

「前」に注目すると、まず、研修講師は「現場(=研修受講者の職場)」を知る必要があります。研修を終えた後に、受講者たちがどのような場所に戻っていくのかがわからないと、転移を促すことができないからです。理想は、研修講師が実際に現場を見に行き、受講者のどのような行動が仕事に必要なのかを把握すること。研修講師がそこまでできなくても、人事(研修)担当者や職場の方にヒヤリングするとよいでしょう。

関根雅泰 Masahiro SEKINE

株式会社ラーンウェル 代表取締役

1972年埼玉県鴻巣市生まれ。州立南ミシシッピー大学卒。東京大学大学院 学際情報学府 修士号(学際情報学)取得。「研修をやりっぱなしにしない」を合言葉に、各社で「転移促進」や「研修評価」を実践。先行研究で得られたエビデンスを基にした研修の企画、設計、運営、評価が得意。研修業界では、25年の実績をもつ。著書に『オトナ相手の教え方』(クロスメディア・パブリッシング)や、立教大学経営学部の中原淳教授との共著『研修開発入門 「研修評価」の教科書』(ダイヤモンド社)、『研修開発入門 「研修転移」の理論と実践』(ダイヤモンド社)などがある。*「HRオンライン」インタビュー →「教え上手」と「学び上手」の社員が組織をどんどん変えていく

「研修前」「研修中」「研修後」——この3つの時間軸に、「受講者」「講師」「マネジャー(上司・管理職)」の3者の役割をかけ合わせた「転移マトリックス」というものがある。書籍『研修開発入門 「研修転移」の理論と実践』の中で紹介されている、そのマトリックスを見ると、「研修前」「研修後」は、講師と受講者だけではなく、マネジャー(上司・管理職)のもたらす影響が大きいことがわかる。

関根 研修転移には、上司の役割がとても重要です。上司が研修に興味がない、あるいは、部下が研修に行くことすら知らないというケースもありますが、それでは研修転移ができません。私共で設計している研修では、研修前に“受講者本人による、上司への事前インタビュー”を受講者にお願いしています。

 たとえば、OJT研修など、新人指導の研修に参加する社員(新人の先輩社員)の場合、「なぜ、上司は、自分をこの役割(新人指導)に任命したのか?」「新人に1年後どうなってほしいと、上司は考えているのか?」、また、「指導にあたる自分も頑張るけれど、同じ職場の○○さんにも手伝ってほしい」といった要望も含めて上司にインタビューするのです。人事(研修)担当者が上司に働きかけるよりも、受講者本人が上司とやりとりしたほうが、研修の目的意識も明確になって、一石二鳥です。


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