「政治家が日本30年の国益を溶かした」国民がやせ細る中、"パーティー裏金"に明け暮れの永田町のイカれた神経

2024年6月13日(木)10時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Jorge Villalba

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経済低迷、少子化……ニッポンには一筋縄ではいかない問題が山積している。だが、国民がやせ細る中、政治家は粛々とパーティーに明け暮れていた。経営コンサルタントの小宮一慶さんは「中長期的な大問題を抱える日本を変えるためには、国民はもっと政治に厳しい目を持ち、大きな視野や見識を持つ人を選ぶ必要がある」という——。
写真=iStock.com/Jorge Villalba
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■これでは何も変わらない


この国の経済が「失われた30年」と言われていることは皆さんもご存じだと思います。


皆さんの会社が作り出す付加価値(「売上高」から「仕入れ」を引いたもの、給与の源泉)の合計である名目国内総生産(GDP)は、コロナ前には約555兆円で、最近では600兆円程度です。


一見「成長している」ように見えますが、ドルベースで見ると様相は一変します。コロナ前の為替レート(1ドル=110円程度)で見ると5兆ドル程度だったものが、現状の155円程度で換算すると4兆ドルを切る水準。たった数年間のうちに20%以上も激減したことになります。


日本は輸入のかなりの部分がエネルギーで、その大半はドル建てで決済されていますから、ドルでの稼ぎや購買力が大幅に減少しているということです。国力が大きく落ちているのです。


もう少し長い視点で、日中を比較してみましょう。2010年にドル建てでの名目国内総生産で日本は中国に抜かれました。この頃は、2008年のリーマンショック後にギリシャ危機などの円高もあって、日本も中国も6兆ドル弱の名目国内総生産がありました。


さて肩を並べていた両国は今、どうなっているか。中国はこのところの元安があるものの、それでも約17兆ドルの名目国内総生産があります。4兆ドルを切る水準の日本の4倍以上も多いのです。


さらに長い期間で、今度は日米比較をしましょう。米国の1990年の名目国内総生産は約6兆ドルでしたが、現状では28兆ドル程度です。日本は、その90年代初頭とそれほど変わらないという惨憺たる有り様で、格差は文字通り天と地ほど広がっているわけです。


これには、バブル経済や冷戦構造の崩壊、財政赤字の増加や人口減少などの原因がありますが、この間、政治の経済活動への有効性が大きく落ちたことも、間違いのない事実です。大金を一気に失うことを俗に「溶かす」と表現することがありますが、政治家は30年間永田町界隈で懸命に働いていたのでしょうが、結果的に巨額の国益を溶かしたのです。


■問題山積の日本


経済が成長しないことも大きな問題ですが、この国には大きな課題が山積しています。


まずは人口問題です。現在、約1億2400万人の人口ですが、言うまでもなくこの国は、急激な人口減少に直面しています。


その大きな原因が少子化です。女性が一生に産む子供の数である合計特殊出生率はとうとう過去最低の1.20まで低下しました。人口が均衡するのが先進国では2.07人と言われています。日本では昨年生まれた子供は約72万人で、団塊の世代の約270万人の4分の1近く、その子供たちの団塊ジュニアの209万人の3分の1近く。愕然とするほどの減り方で、しかも今後さらに減ることは確実です。


逆に上昇するのは現状29%程度の高齢化率です。将来は40%以上に達すると予想されています。社会保障制度が、「世代間扶助」という現役世代が高齢者を支えるという美名のもと、実際は自転車操業を続けています。このままでは、社会保障制度が行き詰まる、少なくとも現状の水準を維持するのは不可能だと考えられます。


現状、一般会計から、年金、医療・介護の特別会計に、それぞれ10兆円以上の予算が割り当てられている、つまり一般会計から特別会計に補助していて、やっと年金や医療・介護の制度が成り立っているのですが、高齢化率が増加するため、その負担額は格段に上がります。


年金は、高い確率で現在の40歳台の方たちから支給開始を2〜3年遅らせることとなるでしょう。それでも制度がもつだけまだましで、医療・介護は「病気になったから2年待ってほしい」というわけにはいきませんから、その水準を下げる必要が出てくるでしょう。


さらには、社会保障負担が格段に増加することもほぼ確実です。そしてこのことと大きく関係して、財政赤字はもっと膨れ上がります。名目国内総生産比で250%という、先進国中最悪の財政赤字を抱えていますが、その数字は悪化の一途をたどることとなります。


現状は、国債の9割程度を日銀はじめ、国内勢が消化していますが、海外にも国債を買ってもらう必要が出てくると、今の金利での消化はほぼ不可能です。AAAの最高の格付けを有する米国債やドイツ国債よりも低い金利で国債を発行できているのは、「国内ルール」で国債を販売できているからで、それができなくなると、国際水準での金利が必要になります。A+という上から5番目の格付けでは、数%国債金利が上がるのは避けられないでしょう。


■政治の感覚と国民感覚な大きなずれ


このように、問題山積の日本で、これを政治は解決しなければならないのですが、残念ながら、政治は経済にかまっていられないような状況が続いています。


最近では、自民党のパーティー券裏金問題に端を発した政治資金規正法の改正に大きな時間を取られていますが、国民をバカにするのもいい加減にしろと思っておられる方も少なくないと思います。


写真提供=共同通信社
自民党細田派(現安倍派)の政治資金パーティー=2018年5月、東京都内のホテル - 写真提供=共同通信社

そのことに関して少し説明すると、与党の内部でも、パーティー券購入者の開示に関して「10万円以上」「5万円以上」で自民党と公明党がもめました。企業は1円単位で売上高を計上しています。小売業でない限りは取引先も記帳していますし、税務調査ではすべて調査対象です。面倒くさいインボイス対応も、岸田首相肝いりの定額減税も、その煩雑な処理・対応を政府は企業に丸投げです。厳密が必要な企業の現場を消耗させる一方、自分たちは“ザル”も同然というわけです。


国民から選ばれて、税金を給与としてもらっている国会議員がどういう神経でこういうあいまいな開示の内容となったのでしょうか。企業も10万円か5万円以下の収入なら適当に記載し、インボイス対応も、ふざけた減税処理も適当にやっておけばいいということではないはずです。これでは、政治や政権に対する不信が広がるだけです。


政治にお金がかかるというのなら、それを正々堂々と主張し、かつ政治資金の収入も支出も、資金提供元も資金の使途も含めて、こちらも正々堂々ときちんと開示をするべきであることは言うまでもありません。10年後に支出明細を公開するという維新案を自民党は受け入れましたが、こんなものも国民感覚からは大きく乖離したものです。やましいことがなければ正々堂々と即座に開示すればいいのです。


■野党も信頼できない


一方、野党もぼろぼろです。立憲民主党は、政治資金パーティーの開催を禁止する法案を提出していながら、幹部が政治資金パーティーを開催することが露呈し、マスコミから厳しい批判を受けると、「やはりパーティーはやりません」という、あまりの場当たり的対応に開いた口がふさがりません。


私はセミナーなどでよくお話しますが、儒教の徳目でもある「信」という字は「人」の「言葉」と書きます。言ったことを守らないなどというのは信用をなくすことです。リーダーである政治家ならなおさらです。


自民党も政治資金の流れを国民に知らせたくないという意図が見え見えですが、野党もいい加減であることを自ら露呈しました。また、立憲民主党の前身の民主党は、自民党から一時政権を奪取した際には、あまりにもレベルが低く、日本経済がボロボロになったことを多くの国民は忘れていません。


写真=iStock.com/oasis2me
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/oasis2me

このような政治家を選んでいるのは私たちの責任です。もっと政治に関心を持たなければなりません。


こういう状況の中で、この国のかじ取りを適切に行うには、大きな視野や見識を持ち、さらに課題を克服する実行力を有する政治家が必要なことは言うまでもありません。そういう人を見極めて選ぶのがわれわれに課された義務だと思います。


私も国会議員の中に比較的関係が深い知り合いが数人いますが、みなまともな人です。そのような人たちが与野党問わず集まり、新しい党を作れないのかとも考えます。


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小宮 一慶(こみや・かずよし)
小宮コンサルタンツ会長CEO
京都大学法学部卒業。米国ダートマス大学タック経営大学院留学、東京銀行などを経て独立。『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座2020年版』など著書多数。
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(小宮コンサルタンツ会長CEO 小宮 一慶)

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