米取引委がAmazon提訴、「同意なき会員登録」問題視

2023年6月27日(火)16時0分 JBpress

 米連邦取引委員会(FTC)は、米アマゾン・ドット・コムが顧客の同意なしに有料会員プログラム「Prime(プライム)」に加入させ、かつ解約を妨害していたとして、同社を提訴した。


FTC、「ダークパターン」を問題視

 FTCが問題視したのは、「ダークパターン」と呼ばれる手法。これは、クリックしやすい場所に「同意する」ボタンを配置するなど、利用者が望まない操作を行うように誘導し、自社のビジネスを有利にするデザイン手法で、近年問題を指摘する声が高まっている。一方、アマゾンは、「事実と法律の両面で誤りだ」と、真っ向から反発している。

 FTCはアマゾンが、操縦的、強制的、あるいは欺瞞(ぎまん)的なユーザーインターフェイスを用い、顧客をPrimeサブスクリプション(定額課金)の自動更新に誘導したなどと指摘し、2023年6月21日、米ワシントン州シアトルの連邦地裁に提訴した。

 FTCは訴状で次のように指摘している。例えば、消費者はオンラインで商品購入手続き中、何度も月14.99ドルのPrimeに加入するよう促された。多くの場合、Primeに加入せずに商品を購入する選択肢を見つけることは困難だった。一部のケースでは、取引を完了するために押したボタンは、それを押すことでPrimeへの加入に同意するものだったが、そのことを明示していなかったという。

 FTCは解約しにくい状況になっていたことも問題視した。解約するためには、何度も辛抱強くページを切り替える必要があったという。加えて、顧客が解約を試みると、自動でリダイレクトされ、割引料金でサブスクを継続するよう促されたり、解約を選択しないように促されたりする場面に遭遇したという。

 FTCによると、アマゾンは長年にわたり、1、2クリックの簡単な操作でPrimeに加入できるインターフェースを導入してきた。その一方で、解約手続きでは、4ページにわたる6度のクリックと、15に及ぶ選択肢の検討が必要な仕組みを導入していた。この手法はアマゾン社内で、長大なトロイア戦争について書かれた叙事詩にちなみ、「イリアス」と呼ばれていたという。FTCは、この「迷路のような」手順は、顧客がPrimeを解約するのを不便にし、混乱させるように意図的に設計されたものだと指摘した。

 訴状によると、アマゾンはFTCが提訴する前の23年4月、一部会員の解約手続きを刷新した。しかしFTCはこれについて、アマゾンの方針が「法的に弁護し難い」ことを同社は知っていた、と主張している。


アマゾン「Prime登録・解約は明確かつ簡潔」

 米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アマゾンの広報担当者は、「デザイン上、お客様がPrimeに登録したり、解約したりするのは明確かつ簡潔」と反論し、「法廷で私たちの主張を証明することを楽しみにしている」と述べた。

 ロイター通信によると、アマゾンは、「FTCが当社に通知せずに、そして当社が委員らと対話する前に訴訟を提起したことに懸念を抱いている」とも述べた。「事実関係や背景、法的問題を理解してもらうためにFTCのスタッフと話し合いを進めている最中だった」(同社)という。


FTC委員長はアマゾン批判の急先鋒

 FTCでは21年6月に就任したリナ・カーン委員長の下、米テクノロジー大手への監視を強めている。カーン氏は米エール大法科大学院の学生だった17年にアマゾンによる競争阻害を新たな枠組みで判断すべきと提言する論文「アマゾンの反トラスト・パラドックス」を発表。独占状態を抑制できない現行法の問題点を指摘して注目を浴びた。

 カーン委員長就任当時、アマゾンは、同社に対する反トラスト法(独占禁止法)調査からカーン氏を除外するよう求める嘆願書を提出した経緯もある。アマゾンの商慣行を批判してきたカーン氏は先入観を持っており、同氏の下では公平な調査が行われないと、同社は主張した。

 一方、カーン委員長就任以降、アマゾンは1件のプライバシー侵害訴訟でFTCと和解している。音声アシススタント「Alexa(アレクサ)」が子供の音声データを不正に保持していたとされる問題、そして、セキュリティーカメラ付きのドアベル「Ring Video Doorbell」の担当従業員に顧客の監視を許していたとされる問題だ。アマゾンは23年5月、これらについて計3080万ドル(約43億円)を支払うことに同意した。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、FTCは、独禁法違反でもアマゾンを提訴するべく準備を進めている。FTCはここ数年、アマゾンがプラットフォーム上で自社の直販商品を出品業者の商品よりも優遇していないかどうかを調べている。FTCは、Primeの各種特典バンドル(抱き合わせ)について、独禁法に違反していないかどうかも調査している。

筆者:小久保 重信

JBpress

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