「ヤギを取る」とは? 人を怒らせるときに使う英語イディオム
2024年10月3日(木)9時58分 財経新聞
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■Get Someone's Goat
「get someone's goat」を直訳すると「誰かのヤギを取る」となるが、実際には「誰かを怒らせる」という意味で使われるイディオムである。ただしその起源については、いくつか興味深い説はあるものの、どれも確証を伴うものではない。
まず、フランス語の「prendre la chèvre」(ヤギを取る)という表現を輸入したという説だ。ヤギが家畜として重要だった時代、人々はヤギの乳をおもな栄養源としていた。そんな貴重なヤギだから、盗まれたら誰だって怒るのが当然だろう。そこから、「get someone's goat」で比喩的に「誰かを怒らせる」という意味になったと考えられている。
しかし、「prendre la chèvre」というフランス語の表現は、文字通り「ヤギを取る」という意味だけだ。英語のように「怒らせる」という比喩的な意味はない。したがって、フランス語起源という説は根拠が乏しいと言わざるを得ない。
酪農に関する説もある。イギリスやウェールズの古い伝統では、牛舎にヤギを一緒に飼うことで、牛が落ち着いてより多くのミルクを生産すると信じられていた。誰かを怒らそうと思ったら、牛の乳の出を悪くするために、その人の飼っているヤギを盗めばいい。それが由来となって、「get someone's goat」が「誰かを怒らせる」という意味になったという説である。
これに似た話として、競馬に関連した説もある。20世紀初頭のアメリカでは、競走馬のトレーナーがレース前に馬を落ち着かせるために、馬の近くにヤギを置いていたそうだ。逆に、レース直前にヤギを取り除くと、馬は不安になってレースでしくじるという話だ。
このことから、「get someone's goat」が「誰かを動揺させる、怒らせる」という意味になったという。この説の場合、「someone」が馬のことを指しているのが、先に紹介した2つの説と違っている点だ。
以上、いくつか起源説を紹介したが、いずれも歴史的な裏付けはなく、都市伝説的な要素が強い。現在ではやや古いイディオムだが、少しフォーマルな場面や文学的な文脈ではまだ耳にすることがある。
例文
・The way he interrupted Sarah really got her goat.
(彼の話の遮り方が、サラをイライラさせた)
・It gets my goat when people don’t clean up after themselves.
(自分の後始末をしない人には本当に腹が立つ)