「自動車を守り、環境を守る」ガラス系皮膜成形を容易にしたシステムブレイン。開発秘話とこれからの展望について語る

2023年12月2日(土)9時0分 PR TIMES STORY

株式会社システムブレインは、『安心・安全な環境づくりを常に提供します』をビジョンに2008年創業しました。

当社は仕事柄、様々な国へ渡航した経験がありますが、日本は幸せな国だとつくづく感じます。日本人に生まれて日本にいたら気が付きませんが、世界と比べるとその常識には大きな違いがあります。

世界中が環境問題に直面していると言われて久しいですが、実際には、新しいものをどんどん作っては消費させているのが日本の現状です。燃費が良く、CO2削減につながるハイブリットカーは環境に良く見えますが、外国ならまだまだ乗れる車をすぐにスクラップにして多量の廃棄物を出しているという問題もあります。

当社の製品・サービスは環境に配慮した安心・安全な技術で作られたものです。作っては消費していくだけではなく、その維持・メンテナンスに目を向けた社会になるための一助と考えています。

このストーリーでは、代表取締役 神田智一の言葉とともに、製品開発に込めたこだわりとガラスコーティングの可能性をお伝えします。

2023年5月 ドイツ展示会の様子 (代表取締役 神田と甲田係長)

自動車の保護に特化したコーティング技術

『ナノシャイン・ナノメンテナンス』

自動車のボディを保護するにはコーティング技術が利用されています。その中ではガラス質のシールド膜で被う方法が優れているとされ、月に1〜2度程度の洗車だけで新車のような輝きを維持できます。

ただし、ガラス層の厚さがポイントで、厚いと破損しやすくなります。薄く、かつ耐久性のある皮膜をつくるのが「ナノシャイン・ナノメンテナンス」というコーティング技術です。

独自開発したセラミック内蔵装置に水道水を通過させると、ナノ素材のシリカ系分子が水に溶け出します。シリカは、ケイ酸とも呼ばれる二酸化ケイ素(Sio2)のことです。無色透明で、工業的には研磨剤、表面処理剤などさまざまな用途に使われています。

そのシリカ分子が溶け出した水を車体に散布することによってボディ面にシリカ層を浸透させ、ナノメートルレベルのごく薄いガラス系皮膜を形成します。システムブレイン(東京都新宿区、資本金1億2680万円 資本準備金含む、従業員12名)という環境技術系ベンチャーが自社開発しました。

同社を創業した神田智一は1966年生まれ。大日本印刷の生産技術部門で設計製作に携わった後、松下電器(現パナソニック)系商社に移ると、分社化によって環境システムを手がける部門の専務取締役になりました。ここで手がけたのがコーティングの技術になります。

神田は、「工場設備の配水管内部の汚れを防ぐためにガラス質の皮膜を施すと配管がきれいに維持できるというコーティング技術を開発して2007年に特許を取得しました。もともと自動車が好きだったので、この技術をカーコーティングにも応用することを発想したんです」と振り返ります。自身で省エネ機器やLED関係など特許を多数保有し、特許ビジネスに精通していた神田は、開発のメドが立った2008年に同社を創業し、社長に就任しました。

ところが、シリカ成分を含むセラミックスを組み込んだ装置に普通の水道水を通して散布するだけでナノレベルの薄さのガラス層コーティングができるという基礎技術の特許を取得したものの、その技術を応用してカーコーティングに用いるのは簡単ではありませんでした。自動車に使われる板金技術を熟知することや、コーティング前の車体から粉じん、鉄粉等を除去する技術なども必要とされるからです。

カーコーティングに応用する開発段階では産学官連携をアシストしました。経済産業省などからの補助金により北海道立工業技術センターでの水槽実験でコーティングの防汚効果データを得ています。ベースとなったコーティング技術の特許取得から2年後の2009年にカーコーティング用に特化したナノシャイン技術が完成しました。

マレーシア代理店研修生と当社技術サービス担当の塚原マネージャー

環境に配慮したシリカ成分を含んだ水道水によって皮膜成型を容易とした 

この技術のポイントとなるのは、水道水を通すとシリカ成分が溶け出すセラミックを組み込んだ装置です。既に説明したようにシリカは二酸化ケイ素(Sio2)のことですが、シリカ微粒子はナノテク素材として幅広く使われています。特に、無色透明で光拡散性や断熱性などがある特徴から、一般に光学やエレクトロニクス、半導体などの分野では液晶パネル、高純度光学ガラス、光ケーブルなどさまざまな製品に利用されるようになりました。ナノシャイン技術は、そうしたシリカ成分を含んだ水を車体にかけてガラス層の皮膜を形成します。

  新しいコーティング装置 SB-119 (自動車用)

従来のガラスコーティングでは、ガラス素材と硬化剤を混ぜて使う2液混合タイプが多く、2液の反応を促進するために熱で硬化させたり、車体の動く部分や柔らかい部分など不要な部分にマスキングや養生が必要というのが一般的でした。

また一般的なガラスコーティングの膜厚は1000ナノ以上になります。これに対してナノシャイン技術は、20〜60ナノ程度の極薄膜です。ナノシャインは薄く、車体全体を保護するためマスキングが不要となります。薄いためクラックが発生しにくく、耐久性が高く、しかも早く乾きます。

海外研修会の様子

またナノシャイン技術は環境にやさしい技術でもあります。従来のコーティングは硬化剤などに化学薬品が使われており、排水に化学薬品の成分が含まれます。これに対してナノシャインは天然鉱石の成分であるシリカと水道水しか使いません。

シリカは人間の体細胞の構成成分でもあり、シリカ成分を含む水は健康にいいとも言われます。健康効果はさておき、シリカ含有水を飲むことができるのだからシリカ成分を含んだ水道水を排水しても環境負荷が少ないとは言えるでしょう。排水が環境に影響を与えないという実験データを、北海道大学との共同研究によって得ています。

ナノシャインのユーザーは、いわゆるカーディーラーが中心です。ナノシャインの装置を当社から購入してコーティングサービスを提供する形が一般的になっています。装置は1台で約1000台の自動車をガラスコーティングできます。シリカのナノ微粒子が溶け出すセラミックス部分の容器は、装置から分解して取り出せない完全交換方式にしております。

スタート当初の当社にとって、もう1つ大きな課題がありました。信頼度の問題です。

日本では、新たに開発された技術が大企業や知名度のある企業によるものでなければ疑問視される傾向があります。技術の内容以前に、小さなベンチャーの開発した技術は信頼されにくいのが実情です。

特にナノシャイン技術は、専門的知識を持つ人が少ないナノテク領域である。それが、かなりのハードルとなりました。

「例えば、ユーザーになっていただくためにカーディーラーさんに営業に行っても、『水道水を通すとガラス質が溶け出してコーティングできる』と説明すると、マユツバのように受け止められることが多かったんです。まともに対応していただけずに、国内では売上げがなかなか伸びませんでした」(神田)と言う。

日本の技術が海外で信用される要因は独特の営業戦略

神田は海外に目を向けました。営業スタート当初からASEAN諸国を中心に海外営業に力を入れました。すると海外では手応えがありました。

「日本と違って多くのディーラーさんが門戸を開いてくれました。『メイドインジャパンテクノロジー』と説明すると、新製品を他社に先駆けて採用することに魅力を感じてくれるんですね。デモンストレーションをどんどんやらせていただけました。特にASEAN諸国の人たちは日本のものづくりや日本製品へのリスペクトがあると感じます」と、神田は当時を思い起こします。

営業先は、ヨーロッパ産高級車の現地ディーラーに狙いを絞りました。すぐに2009年、タイに進出していたドイツ車ディーラーに採用されました。彼らが新車を販売する際にナノシャインのコーティングをオプション販売してもらう形です。

この第1号契約を契機に高級車ディーラーの間では評判が広がり、すぐに中国、台湾、マレーシアとディーラーからの採用が加速することになりました。

その際、神田は独特の営業戦略も採用していました。ナノシャインの装置を単独商品として販売するのではなく、ナノシャイン技術を現地に移転する形を取ったのです。その地域の言語による技術マニュアルをつくり、契約先スタッフに研修を実施、さらに作業ノウハウを認証する制度までつくりあげました。

その上で、機材から研修費まで一括したパッケージで販売する。これにより、単に契約先ディーラーの利益になるだけでなく、現地での雇用を創出し、地域社会に貢献することにもなったのです。

特に成長が著しい中国では、高級車需要が急増しています。それに伴い、ナノシャイン施工件数はすでに30万台件を超えました。全世界では、これまでに約50万台の自動車にナノシャイン施工されています。

こうした活動が認められ、2015年からはJICA(国際協力機構)の中南米調査団に協力するようにもなりました。2016年にはコーティング技術による国際的雇用創出への貢献を評価され、東久邇宮国際文化褒賞を受賞しました。2020年には第二回 世界環境サミットグランプリも受賞しています。

海外と並行して進めていた国内営業も徐々に実を結び始め新技術にはどちらかと言えば懐疑的な日本でも、海外での実績があれば、遅ればせながら信頼し始めました。日本では海外と異なり、研修まで込みの一括方式のほかに、機材レンタル方式も選べるようにしました。ちなみに、日本国内の装置1台のレンタル利用料金は、基本料金+従量課金の制度で装置を借りると、従来のガラスコーティング材料費の概ね3分の1程度になります。こうしてナノシャイン事業は現在、海外売上げが約7割、国内で3割を占める形になりました。

自動車からビルメンテナンスまで世界に無限のマーケット

現在の同社の主力事業は2つ。ナノシャインとともにナノメンテナンスという主力事業があります。ナノメンテナンスは、ナノシャイン技術をビルのメンテナンスや床、壁などの清掃向けに応用した技術であり、創業5年後から取り組んでいます。洗浄剤で素地をきれいにしてからナノガラス層コーティングを行うため、単にきれいに保つだけでなく、除菌、消臭、除カビ効果もあります。

ナノメンテナンスのユーザーはビル設備のメンテナンス専門業者になります。メンテナンス業者が同社のナノメンテナンス技術を採用してメンテナンスを行う形が多いです。

神田によれば「10年ほど前から、汚れにくいタイルとしてセラミックタイルがかなり普及しています。つまり防汚技術のニーズは確実に存在するのですが、汚れにくいタイルでも実際は汚れてしまうんです。このため、メンテナンスに困っている業者さんが少なくありません。そこに簡便なナノガラス層コーティングを持ち込んで市場開拓しようとしています」とのこと。

日本国内のビルメンテナンス市場規模は約1兆円と言われている。その内、ガラスコーティング等の予防メンテナンス市場が6%として600億円の規模と推測されます。

創業当初にフォルクスワーゲンジャパンが全国250のディーラー店舗に推奨したのを皮切りに、JR東日本、新宿高島屋、サイゼリヤ、慶応大学病院、帝国ホテルなどをはじめとする、清潔を保つ必要のある運輸施設、大型商業施設、レストラン、病院、ホテルなどに採用されています。

ナノメンテナンス採用事例は意外なところでも増えています。環境省は皇居二重橋外苑広場の縁石1200mのカビ取り洗浄に採用しました。令和の記念祭会場も同社が施工しています。横浜ランドマークタワーの外装洗浄や横浜スタジアムの観客席の洗浄、カビ取りに採用されました。JR東日本とは、がいし用洗浄剤について2018年、2019年の2年にわたって連続して共同開発に成功しました。

最近は、ソーラーパネルの発電効率・改善にもナノメンテナンスの採用が増えています。

そのほか、最近では太陽光発電のソーラーパネルのメンテナンスも増加した。メガソーラー設備が増え、何万枚というパネルのメンテナンスが簡便になるナノメンテ技術が強みを発揮しています。

同社のナノシャイン、ナノメンテナンス技術はJICAに認定された技術でもあるため海外での事業展開は加速しており、世界27ヵ国で技術が使われるようになりました。しかし、まだ世界には自動車や建物は数え切れないほど存在します。その意味では同社技術の市場は無尽蔵であります。水道水でシリカ成分を溶け出させてガラス層を生成するという独特の技術の今後が注目されます。(敬称略)


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