まだ小さな大阪の製薬企業が、グローバル供給へ取り組む理由~東洋製薬化成の製造現場、製薬部門の挑戦とは~

2023年12月22日(金)7時51分 PR TIMES STORY

今や多くの製薬企業が日本国内にとどまらず、グローバルへ医薬品を供給するようになってきました。

グローバルへ供給するには、米国FDAをはじめ、各国のGMP(Good Manufacturing Practice)適合の認証を取得する必要があります。医薬品受託製造において、重点的に取り組む事業戦略として、また、ステークホルダーに向けた約束のひとつとして、東洋製薬化成も「高品質・高付加価値」を掲げています。

東洋製薬化成が実践する高品質・高付加価値の取り組みは、設計段階・プロセスでの品質配慮から、各国の規制当局からの認証取得活動まで、多岐に渡ります。その中でも、高品質・高付加価値の軸となるグローバルのGMP認証取得への道は、日本国内に留まらず、グローバル規模で多数の従業員が連携して取り組んでいます。このグローバルのGMP認証取得への道の最前線で活躍する3名、水谷顧問、植田部長と西村本部長に話を伺います。

FDAからゲル剤の製造における GMP適合の認証を取得

https://www.toyo-hachi.co.jp/pdf/news/fda_PressRelease202207.pdf

CFDAから ゲル剤の中国出荷承認を取得

https://www.toyo-hachi.co.jp/pdf/news/news20230425.pdf

グローバルへの医薬品提供が次の100年企業への鍵。社員の意識改革から管理体制の一新まで

製薬本部 西村本部長

—— 西村本部長、なぜ大阪の小さな製薬会社である東洋製薬化成がグローバルへの医薬品供給に取り組むのでしょうか

東洋製薬化成は設立から今年で105年になる会社です。ちょうど100周年を迎えるタイミングで、これからの100年をどう生き抜くかを考える機会がありました。

当時はジェネリック医薬品がシェア80%を目指してどんどん伸びている時代です。当社もジェネリック医薬品の受託に関するお問い合わせを多数いただける状況でしたが、大阪市内の限られた敷地に工場を持つ当社では「大量生産廉価販売」のビジネスモデルには不利な状況でした。そこで、これからの100年も必要とされる企業であるために、以下の3つの挑戦を軸とした経営方針を示し、改革を進めることとしました。

①  新薬の受託事業を推進する

②  世界に当社で製造した医薬品を届ける

③  自社開発の新薬を患者さんに届ける

—— 何がきっかけでグローバルへの医薬品提供への取り組みに関わるようになったのでしょうか?

3つの挑戦の1番目に記載している『新薬の受託事業を推進する』を達成するためには、2つ目のグローバルへの供給体制を構築することが必須でした。新薬開発の殆どは、日本国内単独の開発ではなく、グローバルでの開発が重視されていました。そこで、当社でも新薬の受託事業を現実的なものとする為に、グローバル供給体制を構築することを急務として、優先的に進めて参りました。

—— 西村本部長は具体的にどのような取り組みを行っていますか?

「グローバルへの提供なんてできるはずない」という従業員のネガティブな思いを払拭し、「海外の医薬品製造受託機関(Contract Manufacturing Organization;CMO)に出来ていることが我々にできないはずはない。やればできる!挑戦しよう!」と全メンバーに言い続けてきたことです。そして、海外に対して抵抗の少ない組織の構築を進めるために、積極的な社員を登用してきました。また、海外のGMP、特に米国FDAのc-GMPに対応するためには、品質管理を軸とした品質保証体制の再構築とIT化によるこれら業務の電子化が必須だと考え、必要な人材の確保と組織の構築に努めました。品質部門では米国で主流となっている品質保証体制を構築しました。また、かつては文書で残していた生産現場等の記録や手順等の多くを整備した上で電子化を推進したことで抜け漏れ等のミスがほとんど生じなくなりました。この電子化においては既に10を超えるシステムが稼働していますが、その大部分を内製のシステムで賄う事ができています。品質管理部門の長である植田部長と、IT戦略部の顧問である水谷顧問に詳しく説明してもらいたいと思います。

業務フローを徹底的に見直し。法令を加味しながらIT化を推進

城東工場 IT戦略部 水谷顧問

—— 水谷さんが進めるIT戦略について教えてください

会社の規模が大きくないため、データの信頼性の向上が生産効率の低下にならないように注意して進めています。 各国のGMP関連の法令に対応できるように、業務フローを徹底的に見直して、慣習で行われてきた作業と法的に必要な作業を注意深く選別して、業務フローをゼロベースで再構築してシステムをデザインしています。 社内でシステム開発しているため、業務分析とシステム設計に時間をかけて検討することができています。システムごとの開発期間は平均2年程度となっていますが、各種のシステムを並行して進めているため、半年に1システム程度のリリースが可能でした。スマホやタブレットなどの端末も積極的に採用したシステム化を行っています。

—— GMPにおける電子化で重要となることは、どのような事ですか?

一般にITの活用で生産性の向上や業務の効率化が可能と言われますが、GMPにおける電子化では、紙の記録の代わりに電子記録を使用するための法令への対応を避けて通るわけには行きません。 日本では厚生労働省のERES指針、米国では 21CFR Part11、EUではAnnex11があります。このような法令に沿った電子記録だけが紙のGMP記録に代えて使用することができます。そのためにはシステムのデザイン、プログラムの作成、バリデーションの各段階において計画と記録の文書を残す必要があります。さらに運用においては電子記録の改ざんや消去、ユーザのなりすまし等がないことを、証拠を示して客観的に証明できるようにする必要があります。 GMPにおける電子化が法規制に対応する結果として、作業量が増え生産性向上や業務効率化につながらない場合があります。 したがって、GMPの電子化によって生産効率の低下にならないように注意して進める必要があります。

品質管理と仕組みとともに大事なのは、個人の意識を高めること

品質管理部 植田部長

—— 植田さんが、グローバルへの医薬品提供実現のために取り組んだことについて教えてください

このプロジェクトが始まった当初はグローバルへの医薬品提供は夢のような話で、何をどう進めていくべきか、規模感やゴールがよくわからず不安でいっぱいでした。そのため、まずはcGMPと現状とのギャップ分析を行いました。そして、その差を埋めるための項目を洗い出し、品質システムや手順の全面的な見直しを進めていきました。

あわせて、組織及び個人のcGMPに対する知識・理解を深めるための教育や講習会の実施や、査察時の応対がスムーズに行えるよう査察トレーニングを繰り返すなど、自部署のメンバーに加え工場のメンバーも巻き込みながら、グローバルの基準に対応できる取り組みを心がけました。

当初は自ら限界を決めつけていましたが、多くのメンバーと共に考え、協力したことで達成できたと改めて実感しています。

—— グローバルへの医薬品提供の実現に向けて品質管理や品質保証面で重要なことは何だと思いますか?

品質システムだけではなく、組織や個人の意識を高い状態で維持することが重要だと感じています。そのためにはやらされ感ではなく、最新の情報を積極的に収集し、いろんな視点から考える癖を付け、メンバー全員が能動的になることが大切です。

また、会社全体が一丸となることで成し遂げられることでもありますので、部門間の繋がりや協力関係を大切にすることも重要だと感じます。

FDAの過去の指摘内容には、データ完全性に関する事項が多く見受けられます。

データ完全性では、(A) 誰が記録したか、(L) 読みやすさ、(C) 作業と同時に記録したか、(O) 最初の記録か、(A) 正確さ、(C) 再現できる完全さ、(C) 一貫性、(E) 永続性、(A) レビュー可能であることが必要とされます。常に記録をチェックして、データ完全性の確保が習慣となるように心がけています。

グローバル展開を促進していくためのそれぞれの展望

—— では最後に、グローバルへの医薬品提供を進めていくために、今後の抱負をお聞かせください

西村本部長:現在は米国、韓国、台湾、欧州、英国及び中国への出荷を実現しました。このグローバルに供給ができるという品質を武器に、多くの新薬について製造受託をさせて頂けるようになりました。

新薬の受託で培った技術を基に、自社でも新薬を開発できるようになりたいと考えています。

そして、新しい医薬品の供給を心待ちにされている、より多くの患者さんやそのご家族、そして、それを支える医療関係者の皆様に少しでもお役に立てればと考えています。これからもグローバル基準のGMPで生産した高品質な医薬品をお届けできるように努めてまいります。

水谷顧問:これまではGMP記録の電子化として文書管理システム、在庫管理システムを作成、またGMPの記録ではありませんが、CAPAの管理、教育履歴の管理などのシステム化も行ってきました。今後は既存のシステムを接続することで、生産計画から出荷に至るまでの範囲をシステム化して、医薬品の信頼性向上に寄与していきたいと思います。

植田部長:高い品質とそれを支える品質システムの維持向上を目指してグローバルレベルの業務に取り組み、病気で苦しむ方々に弊社で作った製品を継続してお届けできるように、前向きな姿勢と高い意識を持ち続けたいです。


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