茶園がある里山の原風景を未来へ継なぐ。茶業と地域のリブランディングへの挑戦

2023年12月23日(土)14時0分 PR TIMES STORY

丹沢を水源とし、古くから上質な茶の栽培が行われてきた知られざる茶の名産地、神奈川県松田町寄(やどりき)にある『いしい茶園』。初代の石井綱右衛門(つなえもん)から200年にわたり受け継がれた農地を七代目園主の石井久和(46)が継承しました。

茶園のある原風景を「100年先に残したい」。地域の過疎化と高齢化が進み耕作放棄地となる茶園が増える中、独自ブランドの『やどりき水源林のお茶』を開発。多くの人に地域の魅力を知ってもらおうと、茶園のど真ん中にテラス席を設置したり、茶園のひと坪オーナー制度を新設するなど、寄地区に親しみをもってもらえるコミュニティプロジェクトを始動しました。

今回のSTORYでは、園主の石井久和が急遽の継業からこれまでの5年間の歩みを振り返り、茶園のリブランディングや地域活性への思いについて紹介します。

歴史を受け継ぐ挑戦。「負の遺産」から新たな価値へ

石井家は、神奈川県松田町寄(やどりき)にて、江戸時代の天保年間頃から農業や林業を営んでいたが、様式の変化や戦争の影響、さらに関東大震災の被害により、大きな転換期を迎えた。四代目の石井久賀(きゅうが)は、復興策としてお茶の栽培を広め、茶業に積極的に尽力し、そして今ある『いしい茶園』に至っている。戦後の農地改革により茶園は大きく減少はしたが、現在ではおよそ1ヘクタールの土地を有し、毎年5000kg程度の一番茶葉を収穫している。

七代目園主の石井久和は、父親の急逝から2019年に歴史ある茶園を継ぐこととなった。「正直、茶園は“負の遺産”でしかなくて…。茶園管理は手間も時間も人手もかかり、昔は茶葉の買取価格は良かったが、以前に比べて儲けがないから子どもに継がせたくない。寄地区も耕作放棄地が増えており、茶園を更地にするなどの生前整理をしたがる方がいるような状況でした。」

「このお茶畑をひとりでやるのはしんどいなぁ。」会社員を経験し、実業家として独立していた石井久和が父親の跡を継いだときの率直な感想だった。それでも継業を決意したのは、幼い頃から遊びや手伝いに訪れていた寄の茶園のある風景を残したいという思いだ。「茶園に腰掛けて景色を見ていると心が安らぐんです。凧揚げや鬼ごっこでよく走り回っていました。昔から大好きなこの景色を残したいという思いが原動力になりました。」

独自ブランドへの道『やどりき水源林のお茶』誕生秘話

先代の父親は兼業農家で農協への卸売りが中心。地元の共同工場で茶葉を製茶し、卸売の他には販路もなく友人や知人に販売するのみだったという。買取価格が低下する中、継続的に茶園を運営していくためには従来のやり方を一新する必要があった。

「もともと寄(やどりき)で獲れるお茶は品質が高いと有名でした。共同工場でできる作業には限りがあるので、仕上げのプロの茶師に任せたら茶葉の魅力をどれだけ引き上げられるのか、興味がありました。」

父親の急逝から2ヶ月後の2019年5月、一番茶のみを収穫して松田町寄(やどりき)に自社茶園がある『茶来未(神奈川県藤沢市)』に製茶を依頼した。世界緑茶コンテスト最高金賞を2度受賞している佐々木茶師は、寄(やどりき)の気候や土壌、いしい茶園の畑や茶葉の特徴を緻密に捉え、石井と二人三脚で試行錯誤し生まれたのが『いしい茶園』が生産から小売までを手がける独自ブランド『やどりき水源林のお茶』だ。

茶師が綺麗に焙煎した『やどりき水源林のお茶』は雑味がなく、茶葉の甘みと旨みが感じられる。焙煎による香りがしっかりと立ち、二煎、三煎と楽しめるのが特徴だ。

茶園の中心に息づく静寂。新緑に囲まれたテラスの魅力

父が他界して1年が経つ頃、『いしい茶園』の茶畑のど真ん中に10畳ほどの木製のテラスが設置された。のどかな里山に緑の斜面を見渡せる絶景が広がる。

石井が自作したテラスは決して豪華とは言えない素朴な造りだが、何者にも代え難い贅沢な景色が自慢だ。「心安らぐ、ほっこりする景色。寄という場所が好きな思いが根底にあって、たくさんの人にこの地域の良さを知ってもらいたかったんです」

茶園のテラスをSNSで発信したところ、友人や知人にとどまらない大きな反響があった。県内のみならず遠くはタイから客人が訪れ、寄地区の新たな可能性を見出した瞬間だった。

コミュニティの力『ひとつぼ園主』でやどりぎファンを増やす

5月、初夏の八十八夜の時期になると『いしい茶園』には父の代から手助けをしてくれていた近隣住民に加えて、首都圏近郊から茶摘みの体験に訪れる人たちの姿があった。機械を使って新茶を収穫したり枝の先端の葉を選り分けたりしながら、老若男女の声が響く賑やかな一日となった。

茶園に集まったのは、1坪分の茶園のオーナーの『ひとつぼ園主』たちだ。年会費の1万円を支払って『ひとつぼ園主』になると、春の新茶と秋の後熟茶を6袋入手できることに加え、茶摘みや茶畑の維持活動に参加したり、茶園のテラスを利用することができる。

「里地里山は人の手を入れないと衰退してしまいます。茶園のあるこの原風景を残すために、まずは地域に興味をもってもらう。その先に寄(やどりき)を好きになってもらったり愛着を抱いてもらったりしながら、応援してくれる“やどりきファン”を増やしていきたい。この地域の魅力はきっと伝わるはずです」

茶園主のビジョンは、里山の未来を照らす地域活性化

「地方の課題は地方だけでは解決できません」。石井は、都市と地方の自立した地域同士、それぞれが得意な分野で支え合う必要性を語る。ひとりでも多くの“やどりきファン”を増やすことは、地域活性に必要な支え合いのネットワーク形成そのものなのだ。

現在は、行政との連携や町の遊休施設の活用も視野に入れながら、茶園敷地内の納屋をコミュニケーションスペースへと変貌させる計画を進行中。茶園のある里山の原風景を100年先に残すという石井久和の挑戦はまだまだ始まったばかりだ。

❏ TSUNAEMON by いしい茶園

URL:https://ishiichaen.com/index.html


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