【インタビュー】八木莉可子&木戸大聖、「First Love 初恋」を経て得た“気づき”と“大切なこと”

2023年1月4日(水)19時0分 シネマカフェ

木戸大聖&八木莉可子「First Love 初恋」/photo:Jumpei Yamada

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満島ひかり佐藤健が共演し、宇多田ヒカルの「First Love」「初恋」からインスパイアされたラブストーリーを紡ぐNetfixオリジナルシリーズ「First Love 初恋」。配信開始されるや否や、日本のみならず各国でヒットを記録している本作、その立役者の一員が八木莉可子と木戸大聖だ。

本作は、也英と晴道という高校生が恋に落ちるも予期せぬ試練に遭い離ればなれになり、時が経って運命的に再会する姿を約20年というスパンで描いた作品。也英を満島さんと八木さん、晴道を佐藤さんと木戸さんがそれぞれ2人一役で演じている。

一大ブームの渦中で自身に起こった“変化”を皮切りに、ふたりが本作とどのように歩んできたのか——。その軌跡を語っていただいた。

国内外の声からも反響の大きさを実感

——11月24日の配信からちょうど1か月が経過しましたが、おふたりのもとにはどのような反響が届きましたか?

八木:私は、本当にたくさんの国の方からInstagramのコメントをいただくようになりました。あとは、この間渋谷で撮影をしていたら台湾出身の方が英語で話しかけてきてくださったんです。ご本人も向こうで役者をされているそうで、観ていただけたことも嬉しかったですし、これまではそんな風に声をかけていただけることもなかったのでびっくりして嬉しかったです。

大学の友達も観てくれましたし、学内の知らない子からも声をかけられて反響の大きさを実感しています。

木戸:僕も莉可子ちゃんと一緒で、日本だけでなく海外の人からも反響をいただけたことがすごく嬉しかったです。あとは、具体的な数字になってしまうのですがInstagramのフォロワーが配信前は1.3万人くらいだったのですが、一気に19万人くらいまで増えました。これも莉可子ちゃんと一緒だとは思うのですが、海外の方がたくさんフォローしてくださいました。

——10倍以上! すごいですね…。

木戸:あまりに増えすぎて、その数字を見たときは「バグかな?」と思ったくらいでした(笑)。こうやって、日本のラブストーリーが国を超えて海外の方にもたくさん支持いただけていると実感できて嬉しかったです。

——ここからは作品の舞台裏含めて伺えればと思います。まずはオーディションについて。木戸さんはオーディション後、タクシーで移動中に合格の連絡が来たそうですね。ちなみに、オーディション時はどんなシーンを演じたのでしょう?

八木:也英と晴道がリスの話をしているシーンがあって、「10年後に何をしているんだろうね」と会話するところです。大聖くんもそうだったよね?

木戸:そうだね。僕は2回オーディションを受けたのですが、2回目は先に莉可子ちゃんの出演が決まっていて相手役をしてくれたんです。その時に演じたのがいま言ってくれたシーンでした。

八木:私が受けたオーディションは1回だったのですが、実際に具体的なシーンを演じていた時間は2分くらいで、ほぼほぼ1時間くらい寒竹ゆり監督やプロデューサーさんとお話ししていました。「普段はどういう人か」といったように私自身のことを聞かれたり、宇多田ヒカルさんの音楽を聴きますか? とご質問いただきました。

実は私が初めて受けたオーディションがポカリスエットのCMなのですが、その時の課題曲が宇多田さんの「traveling」だったんです。そのことを話したら「じゃあ歌ってみて」という話になってその場で歌ったり…。「プロットを読んでどう感じた?」というお話もしましたし、自分の内面や考え、気持ちをたくさん話すオーディションでした。

木戸:僕が受けた1回目のオーディションも同じ内容でした。ただ僕は、1回目のオーディションであえて渡されたプロットを読まずに挑んだんです。そのときは審査して下さる方の中で「えっ読んでないんだ」という反応もありましたが、現場に入る前に寒竹監督からいただいた手紙に「プロットを読まずにオーディションに挑んだあなたは誰よりも晴道でした」と書かれていて、ホッとしました。

莉可子ちゃんと一緒にやった2回目のオーディションも、ずっとお芝居していたというより話していた時間が多かったよね。

八木:そうだね。ふたりで並んでみて! みたいなのもあったね(笑)。

木戸:あったあった(笑)。あと、僕は作品の中で坊主にするシーンがあるのですが、プロデューサーの方に頭をたくさん触られました(笑)。

——頭の形のチェックが…(笑)。

木戸:そうなんです(笑)。でもそのときはなんのこっちゃわからず、後からそういうことか!となりました(笑)。



役作りのため様々な“90年代”を体験

——撮影に入る前には、満島ひかりさんによるワークショップも開催されたと伺いました。

木戸:也英と晴道が『タイタニック』のポーズを真似してはしゃぐシーンをピックアップしてやりしました。台本にはジャック(レオナルド・ディカプリオ)とローズ(ケイト・ウィンスレット)のセリフがあって「笑い合う」くらいしか書いていないんですが、ワークショップの前に監督と3人で読み合わせをやったときに僕と莉可子ちゃんが恥ずかしくなっちゃって(笑)。

八木:私も「I’m flying, Jack!」のセリフが全然うまく言えなくて、何回も回数を重ねてしまいました…(苦笑)。あとは晴道との電話を切った後に「キャー!」って喜びを爆発させるシーンも何回もやったことを覚えています。

木戸:ワークショップではひかりさんが莉可子ちゃんの部分をやってくださって、そこに書いてあるセリフに関係なくアドリブで「やだやだやだやだ! やりたくない!」みたいに演じてらっしゃって、新鮮でした。お芝居というよりもひかりさんが素で楽しんでらっしゃるような感じがあって、ご本人も「とにかく楽しんだ方がいいよ」とおっしゃってくださいました。

——八木さんは役作りの一環で「90年代当時のことを調べた」とおっしゃっていましたが、『タイタニック』のシーン然り、世代的に当時の盛り上がりを体感していないなか演じる状況でもありました。

八木:おっしゃる通り当時の盛り上がりだったり、そういった当時流行ったものがその人にとってどれくらい大切なものなのかわかっていなくて、監督に現場で指摘いただいて「自分はちゃんとわかっていなかったんだな」「違ったんだな」と感じることはありました。

木戸:いまのお話に通じますが、90年代当時はいまみたいにスマホで簡単に連絡を取り合えなかっただろうから、と思い、僕から提案して莉可子ちゃんと連絡先を交換しなかったんです。そのぶん、会える時間に色々な話をするはずと思って現場入りしたのですが、お芝居をやりながら「もっと普通に連絡を取っておけばよかった…」と思い直して(苦笑)。

僕が監督から晴道を演じるうえで色々言っていただけたことを処理しきれずに悩んでしまったときに、ホテルのロビーで莉可子ちゃんと話をさせてもらったのですが、そのタイミングで「やっぱ連絡先交換していい?」とお願いしました。

八木:お互いに「こうした方がいいよ」みたいにシーンの悩み相談をするだけじゃなくて、普通に会話する時間を増やしました。「明日は仲のいいシーンの撮影だし1回会って話そうか」みたいにホテルのロビーで待ち合わせて話したり、1回だけじゃなくて何回もお互いに話す機会を作りました。

木戸:ふたりでNetfixの宇多田ヒカルさんのライブツアー「Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018」を観たりもしましたね。それこそ、劇中の也英と晴道の屋上のシーンみたいに。

八木:でも私たちはAirPodsだったから(有線式の)イヤフォンを片耳ずつ、ではなかったです(笑)。

木戸:(笑)。あとは撮休のときに、莉可子ちゃんが飛行機のお守りを買ってきてくれたんです。

八木:パイロットの方やCAさんが買うお守りがあるんです。

——素敵ですね。劇中とリンクしていますね。

木戸:そうなんです。僕が空いている日はお守りを買ってきて、お守り交換もしました。

八木:札幌の中島公園に行って話したりもしたよね。

木戸:そうだね。



出演を経てからの変化と成長

——本作ですと順撮り(※脚本の順番通り、ないし時系列順に撮影すること)ではないぶん日によって也英と晴道の距離感も変わりますし、満島ひかりさん・佐藤健さんと2人一役という難しさもあります。八木さんは手の使い方・木戸さんはタバコを吸うときの角度などを参考にされたと伺いました。

八木:最初にプロデューサーさんから「ひかりちゃんと莉可子が通じるのは、野性的なところ」と言っていただけたのが大きかったですね。手に関しては最初からそこを考えていたというより、むしろ意識できていなくて監督から教えていただいたんです。私は「仕草を真似しようかな」と考えていたのですが、撮影時に監督から「ひかりちゃんはすごく丁寧にものを持つんだよ」と言われて、「確かに!」と気を付けるようになりました。

——なるほど、そういう順番だったのですね。最初に「ひかりさんと通じる」と言ってもらえたことで、自分らしくいられる部分もあったのではないでしょうか。

八木:そう思います。最初は「ひかりさんと同じ役を演じさせてもらえるなんて、どうしよう」と思っていましたから。ひかりさんも「莉可子ちゃんの自然体のキラキラしたところが映るといいね」と言ってくださって、お陰でリラックスしてお芝居に臨めました。

木戸:僕も初めは健さんのいままでに出ていらっしゃる作品を観たうえでの芝居のイメージはもちろんあったのですが、そこに近づこうとしていくのは違うのではないかとどこかのタイミングで思うようになりました。健さんも晴道に近づこうとしているなかで、僕も同じようにしなければベクトルが違ってしまうと感じたんです。

本作は也英の事故を境に健さんのブロックになりますが、それまでは僕が演じないといけない。晴道自身も大きく変わるわけで、同じものを演じるというより僕がやる部分では純愛のキラキラした部分をしっかり演じようと思いました。

そういった意味では芝居面で寄せていこうというアプローチではなく、ただ先ほど挙げてくださった所作については人間が子どものころからやっているものが大人になっても出ちゃうものだから、晴道が1本の線でつながっていると見せるためにも沿わせていきたいと考えていました。

——いま木戸さんがお話した部分は、「身体が憶えている」という本作のテーマにも通じますね。

木戸:そうなんです。そのうえで今回、「タバコを吸う」という共通項があるのであれば…と先に撮っていた健さんの喫煙シーンを見せていただき、「指のこの位置で挟んでいるな」等を研究して、意識して演じましたね。

——本日は貴重なお話、ありがとうございました。最後に、「First Love 初恋」を経験したことでおふたりの「演じる」に生じた変化があれば、ぜひ教えて下さい。

八木:本作の出演が決まったのは高校生のときで、まだお芝居の経験もあまりないタイミングでした。それからコロナなどで撮影が延びてしまい、何回も読み合わせをしたりワークショップを開いていただいたりと、本当に一から手取り足取り教えていただいた感覚があります。だから「ここが変わった」というより、この作品で役との向き合い方を教えてもらった気持ちです。

まだまだ未熟なので全然わかっていないのですが、「こうしたら綺麗に見える」みたいなものではなく、役に対して俳優としてどう向き合うかの姿勢や意識ができてきたように感じます。たとえば私は自分に引き寄せて考えないと苦手なタイプだな、自分事として捉えるのがいいんだなとわかりました。

木戸:僕がすごく覚えているのは、去年の7月くらいに自衛隊の基地で撮影していたときのことです。炎天下のなか自衛隊員の方たちに混ざってほふく前進をしないといけないシーンでしたが、無我夢中でやっている僕の芝居を観た寒竹監督が「それまで撮ってきた中で、初めて大聖が周りの目や人が気にならなくなって、ガッとそこしか見えていない状態になっていた」とおっしゃっていて。

ひかりさんがそういう状態のことを「水中に潜っている状態」とおっしゃっていて、ひょっとしてこれかもしれないと気づきました。

——ゾーンに入るといいますか。

木戸:そうですね。芝居の最中は必死でしたが、周りの音が聞こえなくなって目の前のことだけに集中する瞬間は初めてかもしれないと感じました。寒竹監督は五感や身体の人間的な反応をすごく大事にしている方なので、そう思っていないまま表面的な芝居をするとすぐカットをかけられて「違う」と言われてしまうんです。でも、そういった部分に気づけずに役者を続けていたら、いつか絶対に壁にぶち当たっていました。

寒竹監督や、莉可子ちゃんはじめ色々な方と芝居していくなかでこの“水中に潜った感覚”に出会えたこと——この経験は、今後も大事にしていきたいです。

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