【インタビュー】米倉涼子×綾野剛×横浜流星 それぞれの正義「愛と熱狂、していたい」

2022年1月11日(火)7時45分 シネマカフェ

横浜流星&米倉涼子&綾野剛 Netflixシリーズ「新聞記者」/photo:You Ishii

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Netflixシリーズ「新聞記者」が1月13日(木)より世界同時配信される。第43回日本アカデミー賞最優秀作品賞ほか、3部門を受賞した映画『新聞記者』を、藤井道人監督自らの手で、新たな物語として築き上げた。

真実を追究し続ける東都新聞記者・松田杏奈が、政府が起こした公文書改ざん事件の真相を追う本シリーズ。新聞業界の異端児と呼ばれる主人公の記者・松田を米倉涼子が、エリート若手官僚として職務に邁進する村上真一を綾野剛が演じた。さらに政治には興味も知識もない、新聞配達のアルバイトをしている就活中の大学生・木下亮を横浜流星が担当している。

異なる世界に生きてきた3人が、あるスクープをきっかけに交わり始める。そこには、それぞれの正義と意志、思いがうごめきあうのだ。3者3様の輝きを放ち作品に臨んだ米倉さん、綾野さん、横浜さんに「新聞記者」撮影にまつわるエピソードや、彼らが仕事をする上での正義・大事にしていることなどを聞いた。

米倉:我慢、ですね。普段、私はボディランゲージがすごく多いんです。話しているときに手がすごく動くし、言葉とともに身体で表現することも多い。けど、松田を演じる上では、思いを溜め込みながら自分の思いは我慢することを意識していました。

綾野:自分の精神状態を追体験しない、ということでした。「あのときこうだったら」という感情は完全に捨てました。人は、何でもない会話の中で“たられば”があるからポジティブにもなれたりする。採択していることを捨てたので、きつかったですね。

横浜:僕が意識したことは何だろう…一番は素直にいることですかね。まっすぐに。変に「こうしよう」というのを決めずにいました。亮は、いろいろな人たちの言葉や出来事に影響されて揺れ動いていくので、その人たちの言葉をしっかり素直に受け取って、自分がそのとき“思って”行動できたらいいなと。一般市民として若い皆さんにも共感してもらえるように、という役でもあるので、だからこそ自分も亮とともに学んでいけたらと思いました。

——それぞれのバックグラウンドを見せながら、シーンが交差していきます。皆さんの出演パートをご覧になって、いかがでしたか?

米倉:それぞれのシーンを作品として見たときに、ひとりひとり、それぞれの役作りがものすごく強くて。それぞれの思いが、なんていうか…背中にのしかかっているような気がしました。

綾野くんの役と私の役は、最初はそれこそ敵対しているんですけど、それでも見ていると、その人の気持ちになれるというか。流星くんの新聞配達をやっているシーンも、私は1回も(現場で)見ていなかったのもあって、「あ、こんなに穏やかに何の問題もなく生活を送っていた彼に、ふとした瞬間に、あんな出来事がのしかかるんだ」と思いました。辛い経験をし、自分で道を切り拓いていくまでの流れを、ひとりの人生の例としてこの6話で見て追いかけていけるんです。すべての人の見方になれる、すべての人の思いになれるような、細かいところまで設定と演出をしている作品という印象を、すごく受けました。

綾野:松田さんが見ているまなざしの先に何が映っているのか、毎話どんどん変わっていきます。もともと断定していたものが、どんどん変わっていく。表情の柔軟さが、今、世の中に足りていない気もしている中で、真実はひとつですが、真実の見方はたくさんあることを体現されている(米倉さんの)お姿に、とても感銘を受けました。

流星君の亮さんは、ある種、国民代表としての立ち位置で生きていた。亮さんという青年が、これから自分が国民のひとりであるという自覚を持って進んでいく。6話が終わった後、その先にある彼の瞳には何が映っているのかということが全てです。僕たちが一番大事にしなきゃいけない、国を作り動かし豊かにするのも、やはり国民のまなざしひとつで大きく変わるんだな、と。おふたりに共通して思っているのはまなざしで、その瞳の中に映っている未来でした。

横浜:ある大きな出来事が亮に振りかかり、米倉さん演じる松田と出会っていくんですけど、僕は亮と同じ気持ちでした。松田がまっすぐに真実を追究する姿を見て、亮は影響され成長していきます。現場でご一緒させてもらっている僕も、亮と同じで尊敬する気持ちというか「この人についていきたい」という思いになりました。

剛さんの村上は、自分の中で一番敵だと思っている人。でも、そんな人にもその人のいろいろな思いがある。そのことを感じたので(共演シーンの)部屋で会ったとき、何も言えない気持ちになったんです。亮としてなのか、自分としてなのか、よくわからなくなるというか。お二方とも言葉よりも行動で見せてくれる人だったので、僕はそれを吸収しないといけない、という思いで現場にいました。




藤井監督との現場に、米倉さん「こんなに毎日緊張するってないんじゃないのかな」

——藤井監督とのお取り組みについても伺いたいです。綾野さんは『ヤクザと家族 The Family』、「アバランチ」と続いていますよね。

綾野:藤井監督とは『ヤクザと家族 The Family』(2021年公開)に次いで本作が2作目。声を掛けていただいたとき、素直に嬉しかったです。新たな「新聞記者」の一員として参加できる事、そして、米倉さんと流星君とご一緒できる事、なにより藤井監督とまた現場で魂を揺さぶり合いながら戦えると思うと。どれだけ苦しくても、どれだけ愛せるか。特に藤井監督とは、そういう想いでやっています。

——米倉さんは初めての藤井監督、いかがでしたか?

米倉:初めて参加させていただく組だったので、藤井監督のことも、クルーも、すべての方を存じ上げなかったんです。衣装合わせのとき、最初に藤井監督とカフェでお話をしたんですけど、すごく「うんうん」と聞いてくれたので、実は「不思議な方だな」と思っていました(笑)。いざ撮影に入ると、ものすごく入り込みやすくて、見たことのない撮影現場でした。大人になってから、とにかくこんなに毎日緊張するってないんじゃないのかなというぐらい…毎日すごく緊張しましたし、応えたい思いにもなりました。その分、悔しい思いもしたので、どこかでもう1回リベンジしたいです。

——横浜さんは『青の帰り道』や、最近では『DIVOC-12』の短編でもご一緒していました。本作では藤井監督から「ベストアクト」ともコメントが出ていますが、いかがでしたか?

横浜: 藤井さんが「映画版では描き切れなかったところを託したい」と言ってくださったときは、本当に幸せなことだと思いましたし、だからこそプレッシャーも責任もあり、覚悟を持っていました。現場では、藤井さんのチームにはやっぱりすごく信頼感があって、身を任せられました。本当に、ほかにはない雰囲気があるんです。締めるところは締めて絶対に妥協しないので、僕は亮として生きていて、毎回自分の知らない自分みたいなものを引き出してもらえました。だからこそ楽しいし、生きてるな、という感じがしました。

米倉さん&綾野さん&横浜さんの正義とは…「嘘をつきたくない」「愛と熱狂」「自分は自分」

——普段仕事をしていると、どうしても妥協してしまう瞬間があったりもしたので、「新聞記者」を見て、何よりも自分の正義みたいなものを大事にしていきたいと思いましたし、そう感じる視聴者が多いと思います。皆さんはお仕事する中で、譲れないこと、自分の中の正義など、どういうものでしょうか?

米倉:私はメディアやすべてのことに対しても、とにかく嘘をつきたくない、という思いだけかな。別に私自身のことを隠したいとも思っていないのに、なんでわざわざ隠さなきゃいけないことがあるんだろう、とも思うんです。嘘をついてしまうと、理由をくっつけていって、とてつもない大きなサンドイッチみたいになっていっちゃうでしょう。芯が見えなくて倒れちゃいそうになっちゃうと思うので、言わないことはいいのかもしれないけど、嘘をつくことは嫌だなと思います。

横浜:僕はまだまだ未熟者だし、この年齢で代わりなんてたくさんいるから、やっぱり比べられることもあります。でも「自分は自分だ」と思って、自分の芯をぶれないようにすること、ですかね。いろいろ言われますけど、ぶれないように。そこは変わらないようにしたいです。

綾野:熱狂、です。いつでも愛と熱狂、していたい。妥協されたことがあるというお話をされていましたが、選択の余地もないことは確かに妥協かもしれません。ですが結果どんな小さなものでも選択をしたという事は、きっと妥協ではない気がしています。選択できなくなったときに、自分たちがどう立ち向かうのか。自分たちは常に選択できるような環境作りを、トップダウンではなくボトムアップしていくことがとても大切ですし、いろいろな人たちの言葉を聞いて、感じていくことがとても大切だと思っています。ちゃんと選択していくこと、その環境作りを熱狂を使って、愛を通してやれたらと思っているんです。



2021年見た中で、3人がお勧めする作品とは…?

——2021年ご覧になった中で、一番ご自身を熱狂させたお勧め作品は何でしたか?

綾野:僕は「ペーパー・ハウス」は、かなり熱くなりました。

米倉:ああ、私も「ペーパー・ハウス」かな〜! スペイン語を練習しているのもあるから。

——米倉さん、原語でご覧になっているんですね…!?

米倉:そうですけど、もちろんサブタイトルもつけていますよ! …でもね、絶対自分ではやりたくない作品(笑)。泥だらけになりたくないもん〜。

綾野:泥だらけになりますけど、シーズン1だったらまだ大丈夫じゃないですか?

米倉:確かにね。一番最初のバーで教授と飲みながら…ぐらいまでだったら、やってもいいかな(笑)。ドキュメント(「ペーパー・ハウス: 人気の秘密に迫る」)を見ていたら、泥だらけだったから「ああ、無理!!」と思ったの。

綾野:俺、デンバー好きなんです。真っ直ぐで。あとトーキョーも好きです。

米倉:トーキョーねー!私はナイロビも好きだった!

綾野:流星は?

横浜:俺、見られてないんです。見たいです!

——横浜さんは、2021年印象的だった作品、何でしたか?

横浜:僕は、素直に『ヤクザと家族』。

綾野:嬉しい。

横浜:本当に、心がえぐられましたね。試写室で観たんですけど、終わった瞬間に、藤井さんと剛さんにすぐ(感想を)送りました。そのぐらい、なんかずっと浸っていて、すぐには立ち上がれなかったです。同時に、「なんで自分(出て)いないんだろう」って…。

綾野:(笑)。嬉しいよ。そういう意味だったら、「FAMILIA」聴いたときもかな(※『ヤクザと家族』主題歌)。2021年の中では最大の出来事でした、「総合芸術って美しいな」と結実した瞬間でした。

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