【インタビュー】石橋菜津美、今を生きる人に伝えたい“選択肢が一つじゃない”生き方

2022年1月13日(木)19時15分 シネマカフェ

石橋菜津美「30までにとうるさくて」/photo:Maho Korogi

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現代の東京を生き抜く29歳独身女性4人の恋、結婚、仕事、性、友情などに斬り込み描くABEMA新オリジナルドラマ「30までにとうるさくて」が1月13日(木)22時より放送される。

本作でフリーのクリエイターで同性のパートナーと愛を育む佐倉詩を演じる石橋菜津美に作品への意気込みや撮影中の印象深いエピソードなどについて話を聞いた。

——初めて台本を読まれたとき、どんな感想を持たれましたか?

私自身が29歳で30歳も目前に迫っている年齢なので、リアルに自分の身近でも溢れている問題が取り上げられていると思いました。だからこそ、読んでいて胸が痛くなることもありました。

——演じられる佐倉詩というキャラクターはどんな人物だと思いますか?

達観していて気分の浮き沈みがなく誰かに流されるということがない人だと思います。ただ、日々“仕方ない”という気持ちを抱えているんじゃないかとも思っていて。20代前半であれば人に意見をぶつけていたとしても、それでもある程度変わらない現実が見えてきて、今はもがくというよりは「自分は自分」ってことを信条に生きている子だと思います。

——ご自身と似ているところはありますか?

私自身も人に流されやすかった過去を経て、20代中盤以降は、人も変わらないし自分も変わらないということを後ろ向きではなくそのまま受け入れ“仕方ない”と思えるようになり、「人は人、自分は自分」と思うようになりました。

——詩自身はレズビアンであることをカミングアウトしているものの、恋人の真琴はレズビアンとして生きることに葛藤を抱えているという関係性を演じる上で苦労された点や、役作りで意識された点はありますか?

私自身、“セクシュアリティの問題って、なんでこんなに世間の認識や意識が変わらないのかな?”と常日頃から不思議に思っているので、今回のキャラクターはずっとやってみたい役でした。

私自身は当事者でなくともその役として生きる上で、当事者の方に失礼がないようにどういう葛藤があるのか寄り添って演じたいと思いました。

だからこそ、恋人の真琴とはどういう立場でどういう風に出会ったのかなど台本には書かれていないような細かな背景まで考えなければいけないと思いながら向き合いました。

——よろしければその裏設定を教えていただきたいです。恋人の真琴役を演じる中田クルミさんとは、どんなことを話し合われたのでしょうか?

2人の出会いはマッチングアプリや誰かの紹介ではなく、お互いにとって偶然の運命的な出会いだったんじゃないかなとか。あとは、2人の役割としてどちらが男性的、女性的ということではなく、お互いにただ一人の個人として惹かれ合っているだけというところに誠実に向き合おうということになりました。ただ、詩の方が真琴に対する想いが強くなきゃいけないと思って、そこだけは意識してやるようにしました。



「変わらない世の中、積極的に変えられないもどかしさ」に共感

——今回は29歳の女性4人の話ということで、皆さんの掛け合いが観られるのも楽しみです!「大豆田とわ子と三人の元夫」(カンテレ・フジテレビ系)の翼役でも、とわ子や早良たちとの女子会シーンはとても楽しませてもらいました。今回、同世代の俳優さんに囲まれての現場はどんな雰囲気ですか?

みんな大人だからちょうど良い距離感で、付かず離れず個々に自立できているのが本当に心地よく、作中の4人の役柄、関係性通りだなと思います。今回のドラマは会話劇がメインですが、そもそも女子会ってみんな話を聞いているようで聞いていなかったり突然全然違う話になったりするなぁと思うので、話者が常に変わっていく様子も女子会のリアリティーさが詰まっていると思います。

——何か撮影中に印象的なエピソードがあれば教えて下さい。

皆、今回の設定年齢と実年齢が近いため、台本の言葉や感覚に対してはある意味監督や現場にいる男性スタッフよりも誰よりも実感値としてわかるので、譲れないところが明確にあって、台本のセリフについて話し合うことが多かったです。

どの役柄も必死さゆえの痛さを抱えているからこそ、さじ加減次第では同じ悩みを抱える人に対して失礼になってしまったり、不要に人を傷つけてしまいかねないので、ああでもないこうでもないと思いを巡らせながら台本に向き合いました。

——石橋さん自身は本作に登場するキャラクターのうち、誰のどの悩みに一番共感できますか?

どれも当てはまらなかったかもしれないですが、詩が抱いている“変わらない世の中に対する疑問、それを自分だけでは積極的に変えられないもどかしさ”というのはわかる気がします。でも、どの役もそれぞれにピンポイントでその時々の感情は共感できるものがあって、私は4人を集約したような人間だなって思います。



周囲を傷つけない“自分勝手”な選択を

——この作品でも恭子の話として「選択的シングルマザー」について描かれますが、石橋さんは昨年ご出産されたことを公表され、“結婚”という形に囚われないご自身の人生の最適解を模索されている印象があります。何か物事を決断する際に意識されていること、優先順位などはありますか?

“自分が後悔しないようにする”ことが一番、でもそれによって誰かが傷つくことがないようにと気をつけているつもりです。周囲の目を気にしすぎて自分がやりたいことを我慢したりベストな関係性になれないのは本末転倒なので、周囲への配慮をした上で許される“自分勝手”の範囲内でやりたいことができればいいなと思います。

今回の恭子の選択についてもそうですが、人が決断したことにとやかく言う筋合いもないし、自分も否定されたくないからこそ、相手の決断も否定せず肯定して、それがより良い形に進ように全力で応援したいです。こういう話こそタブー視されがちで、なかなか男性には話せなかったりするので、女性同士だからこそ支えになれたらなと思います。

——最後に、本作をどんな方に観ていただきたいか、作品の見どころと一緒に教えて下さい。

同世代の方に、悩みを解決できないまでも他にも自分と似たようなことで悩んでいる人がいっぱいいるということを知ってもらえると思います。そうすれば焦らずに、少しずつ視野を広げてもらえると思うので、今はひとつしか選択肢が見えていなくてもこの作品を観ているうちに、それ以外の選択肢の存在にも気が付けるかもしれません。毎週、それぞれ刺さる部分があると思うんですが、痛みを感じながら観て頂きたいです。

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