半田健人、『仮面ライダー555』20周年記念作で気持ちが「あの頃に…」ファンのため議論を交わした箇所も

2024年2月2日(金)11時30分 マイナビニュース

2003年から2004年にかけて放送された平成仮面ライダーシリーズの第4弾『仮面ライダー555(ファイズ)』のメインスタッフ・キャストが再結集し、20周年記念作品となるVシネクスト『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』(監督:田崎竜太)が製作され、現在上映中である。
『仮面ライダー555』とは、死からよみがえることによって覚醒する「人類の進化形」オルフェノクの脅威と、これに対抗するべく変身アイテム「ファイズギア」を用いて戦士ファイズになる乾巧(演:半田健人)や仲間たちの、複雑な人間模様を描く特撮テレビドラマである。従来の仮面ライダーシリーズにおける「怪人」的ポジションのオルフェノクだが、彼ら一人一人にも明確な主義主張があり、単なる「倒されるべき敵」ではない個性が与えられている。不愛想だが根は心優しい巧や、美容師になる夢を抱く園田真理(演:芳賀優里亜)、世界じゅうの洗濯物を真っ白にする壮大な夢を持つ菊地啓太郎(演:溝呂木賢)、オルフェノクでありながら人間として生きたいと願う木場勇治(演:泉政行)など、愛すべきキャラクターのぶつかりあいが激しいドラマを生み出した。
『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』上映を記念して、主役の乾巧を演じた半田健人のソロインタビューをお届けしよう。テレビシリーズ最終回から直結する「続編」として作られた本作で、大人になった巧を半田はどのように演じ上げたのだろうか。「単なる同窓会作品ではない」という新生『555』にかけた熱意や、作品に感じた確かな手ごたえを聞いた。
○『仮面ライダー555』20周年で「ようやく客観的に…」
——『仮面ライダー555』20周年記念作が実現したのは、長年『555』を愛してくれていたファンのみなさんにとっても喜ばしいことと思います。半田さんご自身は、これまでにテレビシリーズ『仮面ライダー555』を見返したりする機会がありましたか。
YouTubeの配信があったり、Blu-rayソフトをいただいたりするたび、作品を見返すことがありますね。でも20年後の今、ようやく客観的に『仮面ライダー555』という作品を楽しめるようになった感じです。これまでは「懐かしいな、この場面はどこそこで撮ったなあ」とか「この撮影のとき、こんな話をしていたなあ」とか、撮影当時の思い出をよみがえらせるきっかけとして、観ていたように思います。20年という歳月が過ぎ、画面に映っているのが自分であって自分でないような、今はそんな思いで観られるようになりました。
——放送当時は幼かった方たちが、大人に成長して改めて『555』を観ると、複雑なドラマ展開や各キャラクターの動きなどがより深く理解でき、楽しめるという話もよく聞きますね。
一般的に、仮面ライダーといえば子どもたちが喜ぶように作っている作品なのでしょうけれど、どの作品も常にそこから飛び越えてみようという「野心」があるんでしょうね。『555』でいえば、夢の大切さ、夢の呪縛などは、経験値が少なく、目の前に「見果てぬ夢」しかない子どもたちには分かりにくいと思うんです。世の中には子どもにはできないことがたくさんありますよね。それは「大人になればできるんだ。今できないのは子どもだからだ」と思いがち。でも、いざ大人になってみると「あれ、大人なのにできないぞ」みたいなことが出てくるんです。
僕はギターを10代のころから始めて、上手い人を何人も見てきているんです。「あの人は大人だから上手いんだ。俺も大人になれば」とか思っていても、いまだに上手くならない。それは、練習をしていないから当たり前で(笑)。こういうの、大人にならないと分からない。ただ、人生で面白いのは、子どものころに抱く「派手な夢」だけが夢ではないと気づくこと。何かがものすごく上手くなるとか、お金を稼ぐとかだけが、夢じゃない。ささやかであっても、叶うと嬉しい夢がある。そこに気づけるのが大人なんですね。
——『パラダイス・リゲインド』で、20年の歳月を経た巧を演じるにあたってどんなところを意識されましたか。
実際の時間では20年が過ぎてはいますけれど、『555』の登場人物はみんな年齢不詳というか、あまり年齢にとらわれてはいないと感じていました。20年間ずっと同じところに住んでいて、同じ生活を続けている人は多くないと思います。住まいも変わるし、見た目も変わる。今回でいえば、海堂直也(演:唐橋充)がラーメン屋を営んでいたりするわけです。でも、どこで何をやっていても、基本の人物像は変わらない。それが『555』なんだと思いながら演じていました。
○井上敏樹の脚本に感じた「正真正銘の巧だな」
——仮面ライダーミューズに変身する胡桃玲菜(くるみ・れな)役の福田ルミカさんなど、新キャストの方たちと共演されたときのお気持ちはいかがでしたか。
年齢的には教師と生徒ほど離れているんですけど、そこは違和感なくやらせていただきました。他のドラマだったりすると「世代の差」を感じるかもしれないけれど、今回は『555』ですからね。自分の中でも特例が働くんです。『555』の現場に入り、田崎監督がいて、そこで僕が巧として呼ばれている以上は、たとえ40歳手前であっても、あの頃……18〜19歳の頃に気持ちが戻ってしまいます。
——巧のセリフをはじめ、真理や草加の口グセなどにも、脚本家・井上敏樹さんの持ち味が活かされているような気がします。
これまでにも何度か『仮面ライダー』の作品に乾巧として出演しましたが、それらはみな井上先生のホン(脚本)じゃなかったんですよね。他の方もそれぞれ、巧はこういうセリフを言うだろうと研究されていたから、僕も演じてこられたんですけど、今回は『555』を全話書かれた「キャラクターの生みの親」ですから。井上先生が書かれた巧は、正真正銘の巧だな、という印象があります。
——台本を読まれて、半田さんのほうから「こういう風に演じたい」と要望を出されたことはありますか。
ありました。上がってきた台本を読んだとき、ある描写について「半田としては構わない。けれど巧として、これには違和感がある」といった部分がありまして、真理役の芳賀さんと共に田崎監督のところへ赴き、直談判したんです。20年間『555』を応援してくれたファンのみなさんが、作品のどういった部分を愛してくれていたのかを考えたとき、これをこのまま演じるわけにはいかないぞ、と思ったんです。具体的には申し上げませんが、「こうだからいいのであって、ここをいじってはいけないんじゃないか」というわけです(笑)
ただ、「台本を変更してくれ」と言ったんじゃないんです。「このシーン、こういう風に表現できませんか?」という意見を出させていただきました。こういう話をしたのも、田崎監督ならきっと僕らの言うことをわかってくれると信じていたからです。ただし、僕らが何も発信しなければ、おそらく不本意な形で撮影に臨んでいたかもしれません。ディスカッションをしたおかげで、監督やスタッフとの絆が深まりました。芳賀さんとも、テレビシリーズのときはこんなに熱をこめて議論したことがありませんでしたし、今回じっくりと話し合えたことで、とても良い結果につながったなと思っています。
○今後の新しい『555』についての展望も?
——完成した作品を初めてご覧になったときの、率直なご感想を聞かせてください。
初号試写の日を迎えたとき、楽しみというより不安のほうが大きかったです。それだけ、自分がこの作品について、真剣に取り組んでいたということだと思います。昔の『劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』のときは、「映画ができたんだって。観ようぜ!」みたいに楽観的だったのですが(笑)、今回の作品は期待半分、不安半分でスクリーンの前に座っていました。
でも、エンドロールまで観終わったとき、今までのことがすべて取り越し苦労だったことが分かったんです。田崎監督は僕らキャストに「どうでしたか?」と声をかけてくれました。監督自身も、キャストが気に入るかどうか心配だったんじゃないかと思います。作品の出来栄えを観て、僕は胸をなでおろしましたし、監督に「また名作がひとつ増えましたね!」と心から言うことができました。今までの不安が消し飛んで、早く『555』ファンのみなさんにお届けしたいという気持ちになったんです。
——『パラダイス・リゲインド』は、20年前の『仮面ライダー555』を大事にしているファンの心にも「響く」作品になっていると考えてよいですか。
10周年、20周年でかつてのヒーローが帰ってくる「復活」作品が過去にもたくさんありましたが、必ずしもすべてのファンを納得させるというのは多くないと聞いたんです。今回出てくる「ネクストファイズ」にしても、旧来のファイズのほうがいいとか、新しいほうがいいとか、いろんな意見が出ると思います。しかし、今回は「とにかく作品を観てください!」と強く言いたいですね。本作には新しい要素がたくさん加わっていますが、観終わったら「ああ、555を観たなあ」という味わいがちゃんと残ると思います。1時間ちょっとという上映時間ですけれど、短い感じがしない。満足度の高い作品に仕上がっています。
——本作では変身アイテムの「ファイズフォン」が時代に合わせてスマホ型にバージョンアップされ、巧はスタイルを一新した「仮面ライダーネクストファイズ」に変身されましたが、いかがでしたか?
世の中には、新しいものばかりを求めていないファンの方も多くいると思います。僕なんてまさにそういう性格で「変わらない」ことをもってよしとするタイプの人間です。なんなら、同じことをずっとくりかえしていたい(笑)。でも作り手の人たちはそうはいかないですから、新機軸をどんどん盛り込んでいる。今回の作品はそのバランスがすごくいいですね。「やっぱり『555』はこうじゃないと」という気分も味わえるし、「ええっ、そうなってるの!?」なんてハッとさせられる部分もちゃんとある。コンパクトながらすごく楽しめる「幕の内弁当」のような作品といえるでしょう!
——『パラダイス・リゲインド』はきっと多くの仮面ライダーファン、『仮面ライダー555』ファンを満足させることと思います。これは少々気の早い話かと思いますが、キャスト陣の勢いがすごいので、もしかしたら今後また新しい『555』の物語が観られるのではないかと、期待してもいいですか。
僕たち役者は常にそういう気持ちでいるんです。みんな『555』に対しては前向きに考えています。でも、作品は役者だけでできるものではないですから。もしもファンのみなさんの応援が強まって、リクエストが集まれば、そのときはまた乾巧を演じたいと思っています。
今回は20年ぶりだから多くの方たちに喜ばれたのであって、これが年1回やって「また『555』か」と思われるようでは困りますからね。伝説のバンド、再結成コンサートの第4弾! 第5弾も確定! みたいなもんですよ(笑)。今度また『555』をやるのなら、オリンピックとかワールドカップのように、ある程度「待ってました」というか、渇望感が高まったときにやってみたいですね。とにかく今回のVシネクスト『パラダイス・リゲインド』は出演した僕たちキャストが喜んでいますから、ファンのみなさんはそんな思いも含めて、観ていただけると嬉しく思います。
■半田健人
1984年6月4日生まれ。兵庫県出身。2001年にジュノン・スーパーボーイ・コンテストのファイナリストに選ばれ、芸能界入り。2002年に俳優デビューを果たし、2003年『仮面ライダー555』乾巧役で好評を博した。昭和歌謡、昭和カルチャーの研究家としてバラエティ番組に多数出演するほか、ラジオパーソナリティやシンガーとしても活躍を続ける。
秋田英夫 あきたひでお 主に特撮ヒーロー作品や怪獣映画を扱う雑誌・書籍でインタビュー取材・解説記事などを執筆。これまでの仕事は『宇宙刑事大全』『大人のウルトラマンシリーズ大図鑑』『ゴジラの常識』『仮面ライダー昭和最強伝説』『日本特撮技術大全』『東映スーパー戦隊大全』『上原正三シナリオ選集』『DVDバトルフィーバーJ(解説書)』ほか多数。 この著者の記事一覧はこちら

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