樋口恵子「ローバは一日にしてならず」「老いるショック」…「老い」はユーモアで笑いとばせ!樋口式<人生を楽しむメソッド>ご紹介
2024年2月22日(木)6時30分 婦人公論.jp
ユーモアを持って“老い”を面白がり、人生を思いっきり楽しまなければ損!(写真提供:Photo AC)
厚生労働省が公表している「令和4年簡易生命表」によると日本の平均寿命は、男性が約81歳、女性は約87歳だそう。年齢を重ねるごとに「老い」を感じる場面は増えますが、91歳で評論家として活躍している樋口恵子さんは、「せっかくの人生、機嫌よく生きなければもったいない!」と話します。さらに樋口さん、「人の心を動かす言葉の力を信じてきた私は、ユーモアの力も信じている」と言っていて——。
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「老い」をユーモアで笑いとばす
「ローバは一日にしてならず」。
数ある自作の造語のなかでもいちばん気に入っています。言わずもがなですが、「ローマは一日にしてならず」のもじりです。
ほかにも「老人よ、財布と大志を抱け!」は、講演会で皆さんから笑いを頂戴しますね。
いままでずいぶんたくさんの造語を本に書き、講演でご披露してきました。もともとダジャレも好きだし、ユーモア第一主義。そんな私にとって、造語の発明は楽しい時間です。
ご披露すると皆さんが笑ってくださるのでうれしいし、張り合いがあります。それに造語には、ひとことでパッと言いたいことが伝わる、というよさもあります。
さて、その「ローバは一日にしてならず」。年齢を重ねていくなかでは、男女ともども、膝や腰が痛くなったり、立ち上がるとき「ヨイショ」と思わず声が出たり。
やがて段差がないところでもつまずいて転ぶ「転倒適齢期」が訪れます。
「転倒適齢期」も最近の会心の作です。
老いは男にも女にも訪れますが、男性の平均寿命は男性81.47歳、女性87.57歳(2022年発表)と女性のほうが長寿の傾向がある分、ローバ(老婆)として生きる時間が長いのが実情です。
とはいえいまの時代に生きる私たちは、ローバになる速度も昔にくらべてゆっくりです。
70代は老いの働き盛り
「70代はおしゃれ盛り」とばかり、自分らしい素敵なファッションを楽しむ人も増えていますし、お元気で活躍している方も大勢います。
ときおりファミリーレストランやコーヒー店などで70代と思しき方々の“女子会”をお見かけしますが、皆さんじつによく喋り、よく笑う。
どうやら箸が転んでもおかしいお年頃のようです。
ですから70代に、まだまだ「ローバ」なんて言葉は似合わない。
ちなみにマンガ『サザエさん』でおばあさんとして描かれているフネさんの年齢は、50代の設定です。いま思えば、隔世の感があります。
私自身、70代はまだまだ血気盛んでした。
なにせ「70代は老いの働き盛り」などと威勢のよいことを言い、今日はこちらで講演、明日はあちらでシンポジウムと全国を飛び回り、その合間に執筆。
嵐のような日々でした。ちなみに「70代は老いの働き盛り」という考えは、いまも変わっていません。
老いるショック
最初に異変を感じたのは70代半ば。
駅の和式トイレで用をすませ、気分スッキリ。いざ立ち上がろうとしたら、どうしても立ち上がれないのです! もう、冷や汗たらたら。
そのときの焦りまくった気持ちはいまもはっきり覚えています。
でもトイレでの「老いるショック」後しばらくは、特に変化はありませんでした。
それまでなだらかだったローバへの道が、少々急勾配に(写真提供:Photo AC)
「よかったよかった、私はまだまだ若い! あの出来事はなかったことにしよう」なんて思っているうちに、今度は77歳で大手術。
それまでなだらかだったローバへの道が、少々急勾配に。でもそこからがんばってリハビリをしたおかげで、また道はなだらかになりました。
真正ローバ時代
振り返ってみると、そんなふうにちょっとしたアップダウンを繰り返しながら、少しずつ本物のローバになっていくのですね。
そして91歳のいま、もはや“真正ローバ時代”に突入です。
人生100年時代と言われていますから、もし100まで生きるとすると、ローバになってからも長い!
幼少のころから、人の心を動かす言葉の力を信じてきた私は、ユーモアの力も信じています。
「好奇心は老いを豊かにする資産」ですが、「ユーモアも老いの資産」だと思います。
どちらもカタい頭をやわらかくしないと発揮できないものですから。
皆さん、ユーモアを持って“老い”を面白がり、人生を思いっきり楽しまなければ損ですゾ。
※本稿は、『老いの上機嫌-90代! 笑う門には福来る』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
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