映画『マッチング』の主演・土屋太鳳「佐久間大介さんのブラックホールのような目に言葉を失いました」

2024年3月5日(火)21時15分 All About

サスペンス映画『マッチング』の主演・土屋太鳳さんにインタビュー。役作り、好きな映画などさまざまなお話を伺いました。※サムネイル画像:(C)2024『マッチング』製作委員会 

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映画『マッチング』は、恋愛に奥手なウェディングプランナーの輪花がマッチングアプリで知り合った男性の吐夢(佐久間大介)に付きまとわれ、やがてそれが恐怖へと変わっていく姿を描いたサスペンス映画です。
土屋太鳳さんはヒロインの輪花を熱演しています。そんな土屋さんに映画の裏側、役作り、そして俳優としての人生についてお話を聞きました。

土屋太鳳さんにインタビュー

——本作のオファーがあったとき、率直にどう感じましたか︖
土屋太鳳さん(以下、土屋):映画『ミッドナイトスワン』(2020)を拝見していたので、内田英治監督とはずっとご一緒したいと思っていましたし、佐久間大介さんは18歳のときに舞台を拝見してすごく感動して以来、ずっとご活躍を見てきたので、お話をいただいたときは「ぜひ!」とすぐお答えしました。
ただ内容的にはすごく難しいなと感じました。
マッチングアプリを開発したり、利用したりしている方々は、誠実に向き合っていらっしゃるので、マッチングアプリのどんな面に焦点を当ててサスペンスにするのか、それをちゃんと理解して演じないと偏見のような内容になってしまう気がして。その解釈は丁寧にしたいなと思いました。

——完成した作品はいかかでしたか?
土屋:すごく印象的だったのは、台本を読んだときの印象と自分が演じたときの印象、そして、完成した映画を見たときの印象がどれも違っていたことです。すごく不思議でしたけど、映像として見たときの印象が一番シンプルでした。
でも、だからこそリアルというか……。変な例えかもしれないのですが、親戚の外科医から、手術などで見る本物の心臓は想像しているよりもグロテスクに感じないことがあると聞いたことがあって、その感覚に近いのかもしれません。
でもやっぱりつらすぎて、人は人を大切にするべきだと思いました。

輪花の苦しみを共有しすぎて憔悴してしまった……


——輪花の役作りについて、監督とはどんなお話をしましたか︖
土屋:監督は「俺は音楽のライブを見ると、“本番には本番の強さがある”“一回しかできないことがあるんだな”とすごく影響を受けるんだ。太鳳ちゃんもダンスをやっている人ならではの爆発力があるはずだから、そんな感じで一緒にやっていけたらいいな」というお話をしてくださいました。
撮影が始まったころは、いろいろ試してくださっていたと思います。
ある場面で監督が「ダンスだと思ってやってみて」とおっしゃって、できるだけ身体を使って表現みようと思ってやってみたところ「あ、やっぱりこっちかな」と、別の表現を探してくださったり。監督は一緒に試行錯誤してくださいました。
演出としては、リハーサルのときから「もっと力を抜いて、もっと声が小さくていい」と声をかけてくださいました。実は現場で佐久間さんの声も聞こえないほど小さかったのですが、映像でみるとちゃんと成り立っていて「さすが」と思いました。
——泣きの演技、絶叫する演技が印象的でしたが、演じていて⼤変だった部分はありましたか︖

土屋:大変というか、本当につらかったです。つらすぎて自分が消えてしまいそうでしたし、家に帰っても輪花が全然抜けなくて、家族も心配するくらい憔悴してしまいました。
「スカイダイビングをしたら人生観が変わる」という話を聞いて、輪花と一緒に人生観を変えようと仕事の移動中にスカイダイビングを検索したら、あまりにも費用が高かったのでやめたんです。けど、それくらいつらかったです。
現場で、佐久間さんと金子ノブアキさんが少年のように明るくて、その様子に心を救われていました。

佐久間さんのブラックホールのような目に言葉を失いました


——佐久間さんと金子さんと共演した印象は?
土屋:おふたりとも背筋が寒くなるほどの異様さと心が張り裂けそうなほどの切なさを表現されていて、本当にすごかったです。
佐久間さんは、音楽番組でご一緒したときの印象からは想像がつかない、“ブラックホールのような目”に言葉を失いました。でも、すごく冷たい目なのに、どこか守りたくなるような目でもあって、吐夢は佐久間さんだからこそ生み出すことができた人物だと思います。
金子さんは、出演作の『クローズZERO II』(2009)がもともと大好きで、子どもの頃に何度もDVDを見ていました。
私が俳優になってから『花子とアン』(2014)『今際の国のアリス』(2020)でご一緒し、どの作品も全然違う金子さんで圧倒されました。今回はすごくつらい場面で、輪花と心が通う瞬間を感じさせる演技をされていて……。それが本当に印象的でした。
——この作品で新たな挑戦はありましたか︖
土屋:演技では自分と全く違う人を生きるので、毎回、新たな挑戦なのですが、今回は輪花の職業がウェディングプランナー。
私にとってのウェディングプランナーといえば、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(2017)に出演したときに出会った、幸せを心から願うプランナーの方々の印象が強く、その印象を自分でひっくり返さなければなりませんでした。その感覚がとても難しかったです。
表現での新しい挑戦という点では、「叫び声」に情報量をどれだけ込めるか……ということを意識しました。
ホラーやサスペンスというジャンルにはスクリームクイーンという言葉がありますが、確かに叫び声は人の気持ちを揺さぶると思うので挑戦しようと思って。とても難しかったのですが、ベストを尽くしました。

NHK連続ドラマ小説『花子とアン』の影響

——多くの映画作品に出演していらっしゃいますが、依頼があったとき引き受けるか否かの基準はありますか? ポイントとなることがあったら教えてください。
土屋:私はまだ自分で判断するほどの立場にないので、基準のようなものは特にないのですが、改めて考えてみると、どんなジャンルの作品であれ、「その作品が伝えたいと願うものを、私自身がその作品から感じ取れるかどうか」という点を大切にしてきたと思います。

——これまでの出演作(ドラマも含め)で、俳優としてターニングポイントになった作品はありますか? その理由も含めて教えてください。
土屋:おおげさでなく全部です。どれか1つでも出会えていなかったら今につながっていないと思うので、全部の作品と役が私にとって忘れられない存在です。
でも、あえて1つだけ挙げるならNHK連続テレビ小説『花子とアン』(2014)かもしれません。
『花子とアン』があったから『まれ』(2015)につながったと思いますし、1人の役の10代から50代までを演じたのも初めてでしたし、演技的にも挑戦することが多く、反響も大きい作品でした。
大学の友人と京都へ旅行に行ったときに、祇園のお店で買い物をしていたら、店員さんが「今日の朝ドラ、すごく良かったのよ、ももちゃんという女の子が良くてね」とお話ししてくださって、思わず「あ、私、ももです!」と言ったらすごく喜んでくださいました。
そういった反応をいただくようになった最初の作品が『花子とアン』だったなと思います。

映画『シザーハンズ』に大号泣した思い出


——好きな映画、あるいは、思い出の映画はありますか? また、『マッチング』のようなサスペンスホラーで好きな作品があったら教えてください。
土屋:好きな映画は本当にたくさんあるのですが、私が演技というものに最初に衝撃を受けた作品を挙げると、ティム・バートン監督の『シザーハンズ』(1991)です。
小学校3年生のときに偶然テレビで見たのですが、あまりに切なくて悲しくて号泣しながら「演技ってすごい!」と衝撃を受けました。
サスペンスやホラーに関しては、基本的に怖い作品が苦手なのであまり見ることができないんです。今までサスペンスやホラー的な作品に出演させていただきましたが、いつもお守りをいっぱい持って撮影に臨んでいました。
——なるほど、そうだったのですね。
土屋:ホラーとは違うかもしれないのですが、映画『アマデウス』(1985)でモーツァルトを追い詰めていくサリエリの姿には何とも言えない怖さを感じました。
その怖さの中には「誰もが陥ってしまいそうなもの」が隠れているような気がして、少し『マッチング』の持つ怖さに似ているような気がします。

憧れの俳優は田中裕子さん

——憧れの俳優はいらっしゃいますか? 理由も含めて教えてください。
土屋:田中裕子さんです。『まれ』でご一緒できたことは本当に貴重な、宝物のような体験です。理由はもちろん、演技です。
裕子さんは演じていらっしゃるときの目が本当に素晴らしくて。ご一緒する前に、映画や舞台のDVDで演技を拝見して「すごい!」と感じていましたが、実際に裕子さんの視線を自分の目で受け止めたときは感動しましたし、「なるほど、こういうことか……!」と納得もしました。
少しでも近づきたいと願いながら頑張っています。

——俳優として今後はどのような活動を考えていらっしゃいますか? 10年先、こうありたいという理想や目標があったら教えてください。
土屋:俳優の仕事である演技は、基本的に「現実の真似」です。常に「現実を超えることができない」というコンプレックスはあるのですが、演技だからこそ表現できることもありますし、その表現にメッセージを込めることも今の時代は自由です。
しかし、いつか時代が変われば、メッセージを自由に込めることができなくなってしまうかもしれません。
子どもの頃に『サウンド・オブ・ミュージック』(1965)を初めて見たとき、最初は楽しく笑いながら見ていたのに、途中から雰囲気が変わって、子ども心に「政治が芸術に与える影響」を痛感したことを覚えています。
でも今の時代は、幸いなことに表現が自由なので、自分が携わった作品を通して、大切だと思うことを込め続けていきたいなと思います。
そうやって参加していく作品のうち、1つでも、1場面でも、遠い未来の誰かの心に触れて、少しでも元気や勇気を与えることができたらうれしいです。
——メッセージに希望があって素敵です!
土屋:そんな思いを胸に、10年先もまずは俳優として演技を続けていたいと思います。続けることって本当に難しいと思うので。
その上で、できることなら少しずつでも自分より若い人たちの役に立ちたいです。指導というとおこがましいですけど、取り組めたらと思っています。

土屋太鳳(つちや・たお)さんのプロフィール

1995年2月3日生まれ。2005年、スーパー・ヒロイン・オーディション ミス・フェニックス審査員特別賞を受賞し、2008年に映画『トウキョウソナタ』で女優デビュー。2015年上半期連続テレビ小説『まれ』(NHK)でヒロインを務め、第40回エランドール賞新人賞を受賞。最近の主な作品は、映画『哀愁しんでれら』(主演/2021)『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』(2021)『大怪獣のあとしまつ』(2022)、ドラマ『やんごとなき一族』(主演/2022年4月期フジテレビ)『警部補ダイマジン』(2023年7月期テレビ朝日)、Netflix『今際の国のアリス』(山崎(※)賢人とW主演/Season1:2020年12月、Season2:2022年12月、Season3:配信予定日未定)など。
※「崎」は正式には「たつさき」

映画『マッチング』2024年2月23日公開


ウェディングプランナーの輪花(土屋太鳳)は、恋愛に奥手だったため、同僚に勧められてマッチングアプリの会員に登録。吐夢(佐久間大介)とデートをすることになったのだが、実際に現れた吐夢は暗く、輪花はがっかりしてしまう。一方、吐夢は輪花に執着してストーカー化してしまう……。
監督・脚本:内田英治
出演:土屋太鳳、佐久間大介、金子ノブアキ、後藤剛範、真飛聖、片山萌美、杉本哲太、斉藤由貴、片岡礼子
構成・文:斎藤香
(文:斎藤 香映(映画ガイド))

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