樋口恵子×和田秀樹「ひとり老い」のほうが老化を遠ざけられる?「家族と一緒に暮らしていても、孤独を感じないとはかぎりません」

2024年3月19日(火)6時30分 婦人公論.jp


和田先生「基本的にひとり暮らしは老化を遠ざけてくれるというメリットを、知っておいてほしい」(写真提供:Photo AC)

厚生労働省が公開している『令和2年版 厚生労働白書』によると、2040年の平均寿命は男性83.27歳、女性89.63歳と推計されるそう。そこで今回は、老化を受け入れて「うまく老いる」コツを、評論家の樋口恵子さんと精神科医の和田秀樹先生の対談形式でお送りします。和田先生は「基本的にひとり暮らしは老化を遠ざけてくれる」と言っていて——。

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「ひとり老い」のほうが老化を遠ざけられる


樋口 長生きをすると、独身でずっときた人はもちろん、結婚していた人も、つれあいと死別したりして、いつかはひとりになります。

85歳を過ぎると、女性の3割はおひとりさまになるんです。私の親世代は、大家族のなかで老いていくのが大多数でしたが、今は「ひとり老い」がマジョリティなのです。

「ひとり老い」は生きていくだけで大事業。でも、望むと望まざるとにかかわらず、そうした事態を迎える人が多くなるんですね。

私たちは「ひとり老い」に対して、どういう心構えでいたらいいと思いますか?

ひとりでいることのメリット


和田 ひとり暮らしの高齢者というと、孤独や孤立というイメージを持つ人が多いですが、ひとりでいることのメリットもあると思うんです。

それは、家族と同居している高齢者より元気で長生きできる可能性があるということです。

暮らしをまわしていくには、買い物や食事の用意、洗濯、掃除などいろんなことをしなければなりません。

ひとり暮らしの人はだいたい自分でしている人が多いので、家族が同居していて全部お世話をしてくれるという人よりも、認知症が発症するリスクは低いのではないでしょうか。

ひとり暮らしで転んだら誰が助けてくれるんだという心配はありますが、そもそも日ごろから体を動かしているので骨粗鬆症にもなりにくく、転んで骨折するというリスクも少ない。

基本的にひとり暮らしは老化を遠ざけてくれるというメリットを、知っておいてほしいですね。

夫に先立たれた私の腹のくくり方


樋口 私は、2番目の夫が亡くなって25年になります。長生きすると人を見送ることが増えますね。

ただ、「ひとりになってさびしいなんて言っていないで、元気で、長生きしなさいよ」と亡くなった人たちに言われているように感じています。


和田「さびしいなと思うことがあっても、『孤独は気楽でいいな』と思い返し、ひとりで生きられる自由を楽しんだほうがいいと思います」(写真提供:Photo AC)

和田 パートナーが亡くなってひとり残されると、たいていは孤独感や喪失感にさいなまれます。これに対応するには、冷たい言い方かもしれませんが、腹をくくるしかありません。

さびしいなと思うことがあっても、「孤独は気楽でいいな」と思い返し、ひとりで生きられる自由を楽しんだほうがいいと思います。

ひとりの自由を楽しむ


和田 日にち薬という言葉があるように、時間が経つと孤独感や喪失感は薄れ、ひとりに慣れていきます。

孤独というのは不思議なもので、家族と一緒に暮らしていても、孤独を感じないとはかぎりません。

家族のなかで疎外感を覚え、孤独を深めている人もいます。

人づきあいが多い人でも、嫌いな人間と無理につきあうことほど、むなしいこともないでしょう。

高齢になったらそうした人づきあいのしがらみから解放され、ひとりの自由を楽しむのもいいものです。

※本稿は、『うまく老いる 楽しげに90歳の壁を乗り越えるコツ』(講談社)の一部を再編集したものです。

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