【インタビュー】綾瀬はるか、俳優活動のひとつの軸となった“アクション”「刺激を受けている」

2021年3月22日(月)7時45分 シネマカフェ

綾瀬はるか『奥様は、取り扱い注意』/photo:Jumpei Yamada

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デビュー20周年を迎えた人気女優、綾瀬はるか。放送中のドラマ「天国と地獄〜サイコな2人〜」(TBS系)や、東日本大震災10年の節目に放送された特集ドラマ「あなたのそばで明日が笑う」(NHK)、あるいは数多くのテレビCMや、街頭広告など、彼女の顔を見ない日はないだろう。しかも、その活躍ぶりは今年に限った話ではない。綾瀬はるかさんが芸能界に身を置いてからずっと第一線で輝き続けていることを、私たちは知っている。

そんな彼女にとって、俳優活動のひとつの軸といえるのが「アクション」だ。『ICHI』や「精霊の守り人」等々、多くの出演作でキレのあるアクションを披露してきた綾瀬さんだが、その特性を存分に生かしたあの作品を忘れてはならない。そう、『奥様は、取り扱い注意』だ。2017年にテレビドラマとして製作された本作は、大河ドラマ「八重の桜」で共演して以来「兄ちゃん」「はる坊」と呼ぶ仲の西島秀俊が相手役。元特殊工作員の妻・菜美(綾瀬はるか)と公安警察の夫・勇輝(西島秀俊)がお互いの素性を隠して夫婦生活を送るという物語で、放送時には大いに話題を集めた。


その『奥様は、取り扱い注意』がこのたび、満を持して映画化。よりスケールアップし、かつツイストのきいた物語が展開する。新型コロナウイルスの蔓延による公開延期を乗り越え、3月19日より劇場公開された本作をフックに、綾瀬さん流の「アクション」「俳優論」などを聞いた。


常に動ける体を作っておくため、自トレを重ねた
劇場版『奥様は、取り扱い注意』は、冒頭から怒涛のアクションが畳みかける「これぞ映画!」な仕上がり。綾瀬さんのきりりと引き締まった表情と、しなやかな身体表現に驚かされる。とはいえ、ドラマ版からは約3年半の時間を経ての映画化だ。3か月前からトレーニングに時間を費やしていたというが、準備は大変だったのではないか?


「ドラマの頃から、基本的な体幹トレーニングは週に1回くらい、欠かさずに続けていたんです。次(劇場版)があるかもしれないな、とは思っていたので。その後映画化が決まって、撮影が近づいてきたら、トレーニングの時間を増やしました。動ける体を作っておくということは、個人的にやっていましたね」

さらりと語る綾瀬さん。やはり、一朝一夕ではなしえなかったのだ。本作はカリとシラットという実践武術をミックスさせた動きがベースになっており、“止め”や“突き”などを高速で、かつピンポイントに繰り出さなければならない。綾瀬さんは「何もない状態から始めたドラマ版のときは、すごく大変でしたね。それこそ家で腕立て伏せ200回×何セットもやっていましたが、今回は前回の経験もあったので、家での個人練習はそこまでハードではなかったです」と振り返り、経験者の余裕を感じさせる。常日頃から準備を怠らない彼女のプロ意識がうかがえるが、同時に「いまはもうやってないんですが…」と申し訳なさそうに付け加えるところもまた、彼女のキュートな魅力といえよう。


「撮影前には、対人稽古も行いました。その中で、徐々に体が思い出したり慣れてきたりしたら、相手役の人と劇中で行う動きの“合わせ稽古”を始めましたね。振付のように、覚えないといけない動きが多かったです。並行して、タイミングを合わせたりスピードに変化をつけたりちょっとずつ調整して、動き自体が完成したら何回も何回も練習して、本番で怪我がないように精度を高めていきました」

言葉で聞くだけでも大変そうだが、撮影は夫婦そろってのアクションシーンからだったという。「いきなり山場のシーンというのはさぞかし大変だったのでは?」と聞くと、「アクションが先だったから、夫婦の本気がアクションに乗って、そのうえでこの夫婦ならではの会話のやりとりができたのかなと思います」と何とも頼もしい答えが返ってきた。


“兄ちゃん”じゃなければ、もっと重圧を感じてしまっていた
ただ、いきなりフルスロットルで挑めたのは、“兄ちゃん”こと西島さんがそばにいたからこそ。「やっぱり安心感が違いますね。変に気を遣うこともないし、すごく精神的にも助けられています。あまりプレッシャーを感じることなくできました」。

その西島さんが本作のイベントの際に明かしたのは、撮影の合間に綾瀬さんが励んでいたという自主練ならぬ“闇練”。綾瀬さんは「闇練(笑)」と笑いながら、その意図を教えてくれた。


「アクションの量も多かったですし、一瞬の気の迷いが本当に危ないんですよね。アクションの相手役の方とは体格差もありましたし、お互いに動きがズレて当たってしまったら大変だから、そういう不安や心配をなくすために、準備だけはしっかりしなくちゃいけないと思ったんです。いい時もあれば調子の悪い時もあるし、本番になると練習でうまくいっていたことがそうならない場合もある。でもそれで終わったらもったいないので、『もうちょっとよくできるからもう1回やらせてほしい』というのは、兄ちゃんも私も言っていました。せっかくやるんだったらその時のベストを出したいし、みんなが『よかったね』と納得できるように粘りたいと思っています」。

余談だが、綾瀬さんが西島さんの出演作を観て、“ダメ出し”をすることもあるのだとか。「ある作品のアクションで銃を構えるときに肩が変に上がっていたから『肩がすごく上がっていたよ』ってメールを送ったら、『うるさい! 俺も気にしてるんだよ』って返事が来て(笑)」と楽しそうに語る姿からは、2人の信頼関係が伝わってくる。


西島さんという最高の相棒を得て、ますます冴えわたるパフォーマンスを見せた綾瀬さん。そんな彼女に、改めて「自分にとっての、アクションとは」を聞いた。

「アクションは、全身で表現するもの。体全体を映像で見せるものなので、対話劇とは全く違いますね。アクションという軸があることで、やらせていただける役の幅が広がったように思います。自分自身も、アクションを求められることで、刺激を受けていますね」


心で演じることを、大切にしていきたい
もともと、劇場版『奥様は、取り扱い注意』は、2020年6月5日に封切られる予定だった。公開延期を乗り越え、2021年3月19日についに観客に披露される。綾瀬さんは「本当に公開できてよかった」としみじみ語り、「ちょっとずつ映画館に行けるようになって、皆さんが非日常的なものを楽しめる空間になったらいいなと思います。スケールの大きなアクションを、大きなスクリーンで観てほしいですね」と笑顔を見せる。


外出自粛期間中には「遅いんですが、今さら『ウォーキング・デッド』にハマってしまいました」とエンタメの力を改めて感じたという綾瀬さん。「ドラマだったら週に一回の楽しみになるし、映画も含めて、日常に花を添えてくれるものですよね」という彼女は、この先も表現者として、多くの娯楽を届けてくれることだろう。最後に、綾瀬さんがいま、役者として大切にしている信条を教えてもらった。

「当たり前ですが、心で演じることですね。経験を積んでいくと、慣れが出てきてしまって心とズレるときが生まれてしまうと思うんです。そうならないようには気を付けていますね。『感情で動く』は、演じるうえですごく大切にしていることです」。


この20年で多くの後輩が台頭し、いまや現場を引っ張る立場。それでも「現場での“居方”は特に変わらない」という。「自分がたとえ年齢や芸歴が上でも、皆さんプロですし、尊敬しています。といっても、そういう風に思おうとしているのではなく、自然とこんな感じで生きてきただけです(笑)」。

長い間変わらず、ずっと自然体でいること。それがどれだけ難しいかは、俳優でなくても多くの人が身をもって知っているはず。だからこそ、「いつもワクワクしていたいですね」とふわりと笑う彼女に、トップランナーたる凄味を感じずにはいられない。

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