作家・凪良ゆう「小説のラスト3ページに2ヵ月かかった」 岩谷翔吾「ダンスとは真逆だけど、書くことの面白さを感じている」2人が語る執筆の裏側

2024年3月28日(木)12時30分 婦人公論.jp


『ニューワールド 凪良ゆうの世界』の刊行に際し、新宿・紀伊國屋ホールでトークイベントが開催された(撮影◎本社・奥西義和 以下すべて)

『流浪の月』、『汝、星のごとく』で本屋大賞を受賞し、『美しい彼』はドラマ化&映画化され世界的なヒットとなった、作家の凪良ゆうさん。デビューから17年間の歩みが詰まったファンブック『ニューワールド 凪良ゆうの世界』の刊行に際し、新宿・紀伊國屋ホールでトークイベントが開催され、後半では凪良さんのファンであるTHE RAMPAGEの岩谷翔吾さんが登壇しました。

* * * * * * *

凪良ゆうさんが読者の質問に答える


イベントは2部構成となっており、前半では凪良さんが読者から事前に集めた質問に答え、後半にLDH JAPANに所属する、THE RAMPAGE from EXILE TRIBE・岩谷翔吾さんが登場。読書が趣味で、集英社が刊行する情報誌『青春と読書』でブックレビュー小説を連載中の岩谷さんと、創作について語り合いました。

前半の読者からの質問コーナーでは、「『美しい彼』にまつわるエピソードがあれば、どんな些細なことでも教えていただけると嬉しいです」といった、『美しい彼』に関する質問が多数届いていたそう。

ドラマ化もあり、世界的ヒットとなった同作品。凪良さんは、「今まではボーイズラブのファンの方だけが読んでいたところに、映像化で俳優さんのファンの方にも届くようになりました。より多くの方に読んでいただくことができて嬉しい」と、ヒットへの感謝を話しました。

『美しい彼』は小説シリーズ4巻で累計35万部を突破しており、次回作にも期待が高まります。

凪良さんの作品に関すること以外の質問も多かったとか。例えば「周りの同年代が、仕事や家庭でステップアップしているのを見ると、焦燥感が拭えません。比べても意味はないと思いつつ、どう折り合いをつけたらいいですか?」と人生に関する内容も。

そんな質問に対して凪良さんは、「比べることに意味はないと分かっていても、焦ってしまうのが人間。私もすごく周りの人と自分を比べて焦るので、気持ちはとても分かります」と、質問者と同様の焦りを感じることがあると回答。

「すごい物語を書く人や、ハイペースで新作を発表する人を見ていると焦りますね。でも、人生において何が大事か、どこでステップアップするのかは、本人が目指しているところ、地点でも変わってくると思います。私が小説家としてデビューしたのが35歳頃です。30代半ばからでも、これから一生やっていきたいと思う仕事に就くことはできるし、焦っても自分を見失わないことが大切。作家の世界も、苦節十年の人もいれば、デビュー作で駆け上がる人もいる。焦りながらも自分は自分と割り切り、本人のペースで頑張ることができれば、それで良いのではと思います」とエールを送りました。

他にも人生観にまつわる質問は続き、「夢を追い始めた時、追っている時に心が折れたことがありますか?それともずっと自信があって追いかけて来られたのでしょうか」と、挫折に関する相談も。

それに対して、本屋大賞受賞や作品の映像化など、大きな成功を遂げた後でも、「心が折れたことなんて何回もあるし、今も頻繁に折れています(笑)」と凪良さんの本音が明らかに。

それでも、執筆活動を諦めたことはないと言い、「例えば、原稿に編集者から容赦なく赤が入ってきたとき。それに納得できることもあれば、どうしても納得できない時もある。話し合った結果、後でやっぱり私が間違っていたことが分かると、心が折れますね。出版した本が酷評を受けたりしても折れます。一晩寝たら直るのですが(笑)。私も自信がない人間なので、(自信が)欲しいなと思っています」と、自信が無いことを話した凪良さん。心が折れながらも進む姿に、勇気づけられる人も多かったはず。


ライブリハーサルから駆けつけた岩谷さん

THE RAMPAGE・岩谷翔吾さんとの創作トーク


イベントの後半では、THE RAMPAGEの岩谷翔吾さんが登場。THE RAMPAGEは16人組のダンス&ボーカルグループで、2024年の4月からはアリーナツアー「THE RAMPAGE LIVE TOUR 2024 “CyberHelix” RX-16」が行われます。イベント当日も直前までリハーサルをしていたそうで、そこから駆けつけての登壇に、会場からは温かい拍手が。

岩谷さんは趣味が読書で、凪良さんの小説は『流浪の月』からすべて読んでいるそう。2人は既に対談経験があるとのことで、打ち解け合った雰囲気の中、今回は創作活動をメインテーマにトークが進みました。

そもそも、岩谷さんはなぜ小説を読むようになったのか。きっかけは、幼い頃から親が転勤族だったことが影響していると振り返ります。

「僕は、幼稚園、小学校、中学校、高校と全部転校生だったんです。転校した先で一から友人関係を作ったり、既にできあがった関係に入っていくことが多くて。それも影響して、自然と今の明るい性格になったのかなと思います。人間関係を築く中で、自分が笑顔で相手に愛を与えれば、向こうも笑顔で返してくれるし愛をくれることを、幼いながらに知りましたね。それでも大変な時、僕を支えてくれたのが読書でした。だから今でも当たり前に読んでいます」

創作活動をすることで無駄な経験がなくなる


コロナ禍をきっかけに、自分の人生をもとにした小説を書き始めたという岩谷さん。「コロナ禍で活動ができなくなった時、パフォーマーとしていつも体一つで表現しているからか、言葉に憧れました。ボーカルだったら歌詞を通して言葉を伝えられますが、パフォーマーは言葉を伝えられない。だからこそ、最初は自分の人生を書いてみようって」

さらに執筆を通して心境にも変化があったそうで、「人生には紆余曲折があって、それを書いていくうちに、過去が今の自分の背中を押してくれていることに気づいたんです。幼少期に大変だと感じていたこと、それこそ友だちづきあいとか、大人になってみると“間違っていなかったんだ”って。本当に無駄なことなんてないんだと思えました。そこから、ダンスとは真逆のことだけど、書くことの面白さを感じています」と執筆のきっかけを明かしました。

凪良さんも、「小説を書いていると、無駄なことなんて何もないと思える」と岩谷さんに応えます。

「どこかで“全部ネタにできるかもしれない”と思うと、しんどいことがあっても“これも経験だよね”って思える。私も複雑な家庭で育ったほうなので、当時は本当に嫌でした。それでも、作家になってそれらを言葉にするようになってから、あの経験も今の自分を形作ってくれているんだな、と思えるようになりました」と、書くことへの思いを振り返りました。

さらに話題は“書くときに一番大変なこと”に移り、物語を書き始めても、最後まで書き上げられない人が多いという話題に。岩谷さんは、最初に書いた小説では立ち止まることなく最後まで書ききったそうで、“初めてでそれはすごい”と凪良さんが絶賛する場面も。

凪良さんは、書き上げるまでに苦労した作品があるそうで、書き下ろしだった『滅びの前のシャングリラ』では、ラスト3ページに2ヵ月かかったことを明かしました。悩み続けた結果、書き出したら半日で書き上げられたとのこと。エンドマーク(作品自体の終わりを表す文字)を置いた時は、思わず泣き伏したと話し、会場からは参加者が息をのむ様子が伝わってきました。

創作活動で行き詰まった時は?


岩谷さんが創作活動に行き詰まったときは、とりあえず筋トレをしてみるとのこと。そうすると、時々“パッ”と道が開けることもあるとか。あとは、グループのメンバーを誘って飲みに行き、そこでの物語とは関係ない、何気ない会話から気づきが生まれると言います。

特に、THE RAMPAGEの同じパフォーマーである山本彰吾さんとは週5で飲みに行っていたことを明かし、「やましょーは、THE RAMPAGEの頭脳とも言われています。トリッキーで人と違う角度から物事を見ることができる。そんな彼だからこそ、人とは違う感想をくれるだろうなと、書いた作品を渡しているんです」とのこと。

グループ活動だけでなくメンバー個人としても活躍の場を広げているTHE RAMPAGE。メンバーどうしの関わり方ついて、「メンバーは個性豊かでそれぞれの道を極めているので、『ここもっとこうしたほうが』というアドバイスとかは基本的にしないです。16人全員がお互いをリスペクトし合う関係性。メンバーの武知海青は、2024年2月にプロレスデビューしましたが、僕はプロレスのアドバイスはできないです(笑)」とグループへの信頼関係を明かしました。

今年で結成10周年のTHE RAMPAGE。グループ仲は年々深まっているそうで、「10年経って、見た目は大人になったけど、楽屋はみんな高校生の頃のママ、時が止まっていますね(笑)。スマブラ(ゲーム『大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ』)で遊んで、全力で喜んで全力でショックを受ける、そんなことを毎日しています。メンバー16人いる中で、僕が一番弱いんですけど(笑)」と、ほほえましいエピソードも披露。

最後まで和やかな雰囲気の中、イベントは終了。ファンにとっては、凪良さん・岩谷さんの知られざる一面も知ることができる貴重な機会になりました。2人のさらなる活躍に、期待が高まります。

婦人公論.jp

「ゆう」をもっと詳しく

「ゆう」のニュース

「ゆう」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ