『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』半田健人が振り返る「乾巧の軌跡」

2024年3月29日(金)16時0分 マイナビニュース

●『仮面ライダー大戦』での復活が、後につながるチャンスに
Vシネクスト『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』(監督:田﨑竜太)は、2003年から2004年にかけて放送された平成仮面ライダーシリーズの第4弾『仮面ライダー555』の20周年を記念して作られた作品である。
人類の進化形・オルフェノクの猛威に立ち向かうべく、変身アイテム「ファイズギア」を用いて戦士ファイズになる乾巧(演:半田健人)や仲間たちの複雑な人間模様を描いた本作は、子どもから大人まで幅広い年齢層を魅了。さまざまなキャラクター同士が自分の存在意義をかけて激しくぶつかりあう熱いドラマは、放送が終わった後も幾度となくファンの間で語り継がれ、愛されてきた。
『仮面ライダー555』を長年愛し続けたファンの思いを汲んで、オリジナル・キャストが再結集。テレビシリーズ全話を手がけた脚本家・井上敏樹氏とテレビのメイン監督でもあった田﨑竜太監督によって「その後の555」の物語が創造された。ここでは、仮面ライダーファイズ/仮面ライダーネクストファイズに変身する乾巧を演じた半田健人にインタビューを行い、ファンの念願というべき「20周年記念作品」が完成するまで、さまざまな「仮面ライダー」シリーズにゲスト出演したときの思いや、新作の撮影にあたって強くこだわった部分、そして『仮面ライダー555』と乾巧を応援してくれたファンの方々への感謝の気持ちを、改めて語ってもらった。
○『仮面ライダー大戦』での復活が、後につながるチャンスに
——『仮面ライダー555』から『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』までの20年の間に、半田さんは乾巧としていくつかの「仮面ライダー」作品に出演されています。まずはそんな「乾巧の軌跡」についてお話をうかがってみたいと思います。最初は2014年、テレビシリーズ放送から11年を経て、出演された映画『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』からお願いします。
あのときは、およそ10年ぶりに乾巧を演じるということで、果たして「戻れるんだろうか」という戸惑いを抱えながら撮影に臨みました。なにしろ、撮影が始まる1ヶ月前に、白倉(伸一郎/プロデューサー)さんから直々にお電話で依頼を受けたので……。髪型も以前と違っていましたからね。そのころ、自分の中では『555』は完結した作品ですし、もう乾巧を演じることはないとまで思っていただけに、仮面ライダーファンのみなさんが期待する巧を表現できたのか正直不安で。でも一度あそこで「復活」を経験していたからこそ、後の作品につながったんじゃないか、やれるんだなという気持ちになりました。そんなチャンスをいただいたのが『仮面ライダー大戦』だと思っています。
——『仮面ライダー大戦』は平成ライダー15人と昭和ライダー15人が対立する!? というショッキングな話題で盛り上がりました。乾巧は『仮面ライダーX』(1974年)の神敬介(演:速水亮)との交流があり、しみじみとした味わいのあるドラマを生み出しましたね。
平成ライダーと昭和ライダーの対決を主軸に置いた映画でしたが、僕と速水先輩とのやりとりはアクション主体ではなく、シリアスなドラマでの共演となり、すごくよかったですね。最初、本郷猛/仮面ライダー1号(演:藤岡弘、)が「平成ライダーは認めん!」なんて圧をかけてくるじゃないですか。あのまんまだと、昭和ライダーの方々がみな「老害」っぽくなってしまうところですが(笑)、僕と速水先輩との共演シーンで、仮面ライダーには昭和も平成もない、みんな仮面ライダーには違いないんだという部分が描けたのは重要でした。
——続いて、仮面ライダーの歴史上に存在しないイレギュラーな「仮面ライダー3号」が登場し、歴代ライダーとさまざまな関わり方をする映画『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』(2015年)でも、半田さんは乾巧として出演されました。映画でも印象的な活躍がありましたが、WEB配信用に作られたスピンオフ作品『dビデオスペシャル 仮面ライダー4号』では、巧が物語の鍵を握る重要な役どころで出てきて、ある意味『仮面ライダー555』テレビシリーズ最終回の「その後」を思わせる印象的なカットも見られました。
僕自身『3号』よりもむしろ『4号』のほうに思い入れがあります。いわゆる「タイムループ」を描いたストーリーで、脚本がとてもよく出来ていました。メインは『仮面ライダードライブ』(2014年)のキャラクターたちですが、全体の雰囲気がとても『555』っぽくて、切なさの残るラストシーンであるとか、とても好きな作品です。監督の山口恭平さんは『555』テレビシリーズ当時は助監督で、ずっと現場についていらっしゃいました。山口監督の『555』への熱い思いが爆発した作品だといえますね。『4号』で巧は「死」を迎えますけど、僕としては『パラダイス・リゲインド』などいろいろなエピソードを経て、乾巧の人生の最後を描いたのが『4号』なんじゃないのかなと考えています。
——パラレルな世界線と解釈してもいいし、つながった時間軸での乾巧のファイナル・エピソードと捉えてもいいわけですね。「ありえたかもしれない別次元のストーリー」といえば、歴代仮面ライダーが存在していた時間をめぐり、未来世界の「魔王」に近づく常磐ソウゴ(演:奥野壮)の戦いを描く『仮面ライダージオウ』(2018年)の第5、6話に乾巧と草加雅人(演:村上幸平)が登場しました。
『ジオウ』では「ファイズにならなかった乾巧」という複雑な役どころでしたね。15年前(2003年)に存在していた「10代だったころの巧」も演じたのですが、なかなか無茶だな〜と思いました。最初は「無理ですよ」と言ったんですが「大丈夫、一瞬だけだから」と言われ、茶髪のカツラを被ったりして。自分で昔の自分のコスプレをしているようなものですからね。勘弁してよ〜って言いながらやっていました(笑)。『555』のストーリーが『ジオウ』に干渉して、巧がファイズにならなかったら……なんて考えると、じゃあテレビシリーズのとき、エレファントオルフェノクを倒す奴がいなくなるわけで、そうなると真理(演:芳賀優里亜)を助けられないんじゃないの? とか、いろんなパラドックスが生じてかなり混乱しましたが、そういうところはあまり考え過ぎないほうがいいかもしれません。
●『555』に自分なりの「責任」が生まれた
○『555』に自分なりの「責任」が生まれた
——ここまでの流れがあってこそ『555』オリジナル・キャストが結集しての新作映画『パラダイス・リゲインド』につながりますし、幾度となく再登場の声がかかる仮面ライダーファイズ/乾巧の根強い人気ぶりがうかがえます。そんな『パラダイス・リゲインド』ですが、映画館へ足を運んだ方たちの感想を読んでいますと「555を観たなという満足度が高い」とか「あのころの魂を残したまま成長を重ねたキャラクターたちと再会できて嬉しい」といった、高評価の声が多い印象です。こういった評判を聞いて、半田さんはどんなお気持ちですか?
いやもう、ありがたい限りですね。正直、最初に到来したのは「安堵感」でした。好評だ、バンザイ! というのは、その後から来る感情です。人気のあった作品の「後日談エピソード」は、必ずしも多くのファンの方たちから無条件に祝福されるとは限りませんからね。新作を作ることが是か非か、という意見のぶつかりあいが当然出てきます。僕たちが集まって、せっかく新作を作ることになったのだから、やる以上は多くの人々に歓迎されるものをお届けしたかったんです。今回、あちこちでお話をしていますが、台本をもらったとき、一ヵ所だけ僕と芳賀さんとでひっかかる部分があり、これをそのまま演じたら「歓迎」されるかどうかわからんぞと思ったんです。事前にプロデューサーや田﨑監督を交えて話し合ったことにより、良い結果が出たんじゃないかと勝手に考えています。
——半田さんや芳賀さんが作品内容にしっかりと向き合ったことも、多くのファンからの支持を得られた要因なのではないでしょうか。
僕自身、驚いているんです。こんなに『555』に対して真剣に向き合っていたのかと(笑)。テレビシリーズをやっていた当時は、右も左もわからない新人でしたから、ただ与えられたことを一生懸命やるしかなかった。でも20年が過ぎた今では「これは、555という作品で表現する必要はないのでは」と、意見ができるようになりました。生意気になったのではなく、もはや『555』という作品に、自分なりの「責任」が生まれたゆえの行動ですね。僕個人としては、送り手でありながら受け手……昔から『555』を応援してくれているファンのみなさんの心に寄り添っているつもりです。『パラダイス・リゲインド』で新しいファン層を開拓しようという狙いは、僕の中にはありません。ただ、今回の作品がきっかけになって『555』に興味を持ってくださる人が生まれたらいいなと思うくらいです。やはり、この20年間ずっと『555』を好きで、応援してくれたファンのみなさんへの「恩返し」というか、そんな方たちに喜んでもらえる作品にしたかった。それだけに、みなさんが『555』に求めているものを、可能な限り「守りたい」と思っていました。
——『パラダイス・リゲインド』の企画が固まる以前、半田さんご自身は『555』20周年記念の新作を作るにあたって、何か構想を練られていたりしましたか?
そこまでは考えていなかったです。でも、新作を作るのであれば、絶対「井上敏樹」先生に脚本を書いてほしいなという思いは強かったです。井上先生の描く巧には、間違いがないですから。実際『パラダイス・リゲインド』の巧は、普段は弱っていて、必要なときだけギリギリな感じで戦っている。ある意味、僕の理想とする巧像で、嬉しかったですね。もしも、今の巧がヒーローに目覚めちゃって、なんかやる気まんまんで動いていたら困るじゃないですか(笑)。決して明るいお兄ちゃんにはならず、相変わらず何かを「我慢」しながら、憂いを帯びて戦うのが巧なんです。演じながら、やっぱり巧はこうだよなあ、なんて思っていましたよ。
——死期を予感した巧が真理のもとから離れていく際「マヨネーズを買ってくる」と言い残しますが、そのマヨネーズが後に巧と真理との「再会」シーンで印象的なアイテムとなります。そういった「食」にまつわる要素も、井上さんならではの味わいと言えますね。
そう。そのマヨネーズがラストシーンでの「お好み焼き」で、初めて使われるわけです。こういうところ、ほんとうに井上脚本の凄さだと思います。井上先生は常々、形として残らないものにお金や手間をかけることが、いちばんの贅沢なんだと話しています。だからこそ、作品の中に「食」を積極的に入れ込んでいるんでしょうね。
——『パラダイス・リゲインド』のラストシーンは、それまでの殺伐とした空気を吹き飛ばすかのように、食卓を囲む巧や真理、条太郎(演:浅川大治)たちののんびりした会話で締めくくられました。TTFC(東映特撮ファンクラブ)の配信ドラマ『ファイズ殺人事件』でも、不可解な人間消失事件こそ起こりますが、『パラダイス・リゲインド』メインキャスト陣が全員そろってコミカルなやりとりをするのが見どころとなっています。個性的なキャラクター同士による、ほのぼのとしたやりとりもまた『555』の楽しさだと再認識させてくれる瞬間でした。ファンの方々からは「また新作を作ってほしい」という声も多くありますね。
芳賀さんも『555』のみんなが集まるのが楽しいから、ホームドラマのような「戦わない555」ならまたやりたい、なんてよく話しています(笑)。でも『555』は暗くてナンボですから、ただ明るく楽しいだけではいくらキャストが楽しくても、観てくださる方たちに申し訳ありませんね。ファンのみなさんが期待をしてくださるのはありがたいですし、出来るならば僕たちもまたやりたい。
しかしここからまた10年後というのは、ちょっと間が空きすぎのような気がします(笑)。今後『555』のメンバーで新作を作るのなら、設定の面からごっそり変える必要があるんじゃないかな。ことさらアクションに力を入れず、ヒューマンドラマ路線で攻めるとか、『555』でありながら「脱・仮面ライダー」を目指すような作品なら、やってみたいなと思います。もともと『555』はヒーローらしくないヒーロー像を目指していました。変身ベルトを奪い合い、誰が変身するのかわからないという展開がありましたしね。だから新しい『555』をやるのなら、原点のさらに原点までさかのぼり、今までにないような「仮面ライダー像」を探ることができたらいいですね。もう賛否両論。良いか悪いか、評価が真っ二つに分かれるようなものに心惹かれます。

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