40代後半、二日酔いの回復に2日はかかる。今のブームはファミレスモーニング「昔は朝まで飲んでいたのに、今じゃ朝集合です」

2024年4月4日(木)12時30分 婦人公論.jp


そろそろモヒートの季節。酒にも風物詩が巡ってくるのです(写真提供◎筆者 以下すべて)

世間から「大丈夫?」と思われがちな生涯独身、フリーランス、40代の小林久乃さんが綴る“雑”で“脱力”系のゆるーいエッセイ。「人生、少しでもサボりたい」と常々考える小林さんの体験談の数々は、読んでいるうちに心も気持ちも軽くなるかもしれません。第16回は「二日酔いの回復には2日かかる」です。

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酒に弱くなった40代


このエッセイでも時折書いているけれど、私はアルコールが大好きだ。20代から何の迷いもなく飲んでいたし、苦手な酒種もない。よって晩酌はルーティーン。最近はスーパーでウイスキーのペットボトルを買って、炭酸水で割って、ハイボールにして飲む。炭酸がシュワっと口の中で広がると「ああ、今日も1日お疲れ様」。そう思いながら、1日の自分を労う。

ただ40代半ばを超えた頃、翌日に酒が残るようになってきた。二日酔いだ。今までも経験はあるけれど、それは致死量を超えた飲み方をしたことが原因だと分かっている。では今回の原因は何か? 答えは加齢だ。体力には争うことができない中年は、二日酔いの回復に2日もかかるようになってしまった。

あくまで私の場合だけど、アルコールと中性脂肪が直結しているらしい。人間ドックを終えるたびに右肩上がりしていく中性脂肪の数値を見て、ため息をつく。加齢によって内臓も衰えて、アルコール成分を分解できなくなっていく……ということなのだろう。このことを20年以上、体を診察してもらっている婦人科のドクターに伝えた。

「(呆れた口調で)小林さん、こんな数値は見たことがないですよ……」
「でも私、甘いものもそんなに食べないし、肉よりも魚派なんですが」
「原因はお酒ですよ」
「(ぐうの音も出ない)」
「以前、毎日飲んでいると言っていましたが、それはダメです。できるなら週に1回ペースにしましょう。でもこの数値を薬で下げるまでは禁酒です」
「毎日飲むと言っても……(超絶濃い目の)ハイボール1杯ですけどね」
「アルコールだけではなく、脂っ濃いものを食べているでしょう。何事も濃いのはダメなんですよ」
「恋愛は濃い方がいいですけどね」
「それとこれは今、話が別です」

禁酒。それはこの世で一番聞きたくない言葉である。頭では酒を止めればスルスルと痩せて、体が軽くなり、おまけに脳もクルクルと回転するようになる。メリットだらけなのだ。

でも対するように酒を飲んだことで得た友情、恋愛、仕事もある。肝機能が正常なうちは、できれば飲み続けて、他人とコミュニケーションを取っていきたいのに。

寝る、飲む、食うで終わる1日


自分が二日酔いになると分かってから、ありとあらゆる二日酔い対策を立てるようになった。水を飲む、飲む前にチーズを食べる、サプリを飲むなど、どれもホステスの知人から仕入れた情報だ。一連の方法を指示通りに遂行しても、次第に体が慣れてくるので、また新作の情報を検索する。この繰り返しだ。下戸の皆様からすると「何もそこまでして……」と、思うかもしれないが、そこまでしてでも飲みたいのが酒なのである。

二日酔いに襲われるのは、基本的に飲み屋に出かけた後。自宅から徒歩圏内、タクシーで2000円以内の移動距離に、馴染みの店が20軒以上ある。これらの店に一人で出向く。するとそこには、私と同じくダメ人間と化した、飲み友達がいるので会話が盛り上がる。

「すぎちゃん、今日も面白いね〜」
「ひさちゃん、なんで結婚しないのよ〜」
「もう、結婚とか興味ないもんね〜」

など、意味もへったくれもない会話を繰り返す。そして次々にジョッキを空けていく。国外ではない、日本国内のどこにでもある下町だけど……そう、ここが私のアナザースカイ。結局は気分が高揚して、ハイボールのジョッキを6杯くらい空ける。ちなみにサイズはメガジョッキ。

回復には2日かかる


退店後、コンビニで「何でこんなものを買っちゃったんだろう……」と翌朝、後悔をする買い物をして、帰宅。どんなに酔っていてもシャワーをして、メイクをきっちり落とすことだけは忘れない。これは私の矜持だ。

そして時間は経って翌朝。軽い眩暈と共に目覚めて、昨日のことを思い出す。「ああ、やっちまった、今日を無駄にする」と落ち込む。自分が二日酔いだと気づいた瞬間からほぼ何もできないので、ひたすら水分を摂り、気休めのようにサプリを摂取して、吸い込まれるようにベッドへ倒れるのみ。本を読む力もないので「私、こんなにスマホ好きだっけ」と疑問に思うほど、スマホでS N Sを見ている。

夕方、回復の兆しが見えてくると出前を取り……なんと、また飲む。迎え酒は一番良くないと専門家がテレビで言っていたけれど、そんなことは戯言だと自己判断。で、気がつくともう就寝時刻を迎えている。

そこから一晩寝て、やっと翌日になると人間らしい生活を取り戻す。酒は簡単に私の体内から抜けてくれない。回復には2日かかる。だから最近は相当の覚悟を決めて、酒場へ乗り込むようになった。

モーニングはいいぞ


酒は好きだけど、飲んだ後がしんどい。飲んでいる間は飲食店がサンクチュアリなのに、魔法が解けると野戦病院で苦しんでいるようだ。私もさすがに恐怖を覚えて、昨年から少しずつ休肝日を作ることにした。

30代の自分から見ると、まさか酒から遠ざかる日が来るとは思わなかった……けど、これが意外と好効果。まずは冒頭で書いたように、体調がいい。酒を飲まないと眠れないのではないかと思ったけれど、そんな心配には及ばず快眠だ。雑誌で見た情報だと、酔って寝るのはほぼ気絶しているような状態らしい。私は長年、寝たつもりが気絶していただけだったのか……。

一番意外だった傾向は同年代の友人と、モーニングを楽しむようになった。

これは以前も経験がある。編集者としての仕事の際に、お子さんがいるスタッフと朝8時にファミレスに集合して、打ち合わせをしていた。同じように家族がいる友人と集合して、会話を楽しんでいる。


モーニングはロイヤルホスト率が高め。安いし、ドリンクバーもあるしで天国

「昔はあんたと朝まで飲んでいたのに、今じゃ朝集合ですよ(笑)」

そう笑いながら先日は場所を変えつつ、8時間近く喋っていた。どうやら私、酒を飲まなくても充分盛り上がることができるらしいと気づく。このことをS N Sにアップすると、やはり同年代の友人から「私もモーニング行きたい」と声がかかるようにもなった。皆、二日酔い問題を抱えていたらしい。

こんな日々を繰り返し、朝と夜を楽しみつつも、私は虎視眈々と肝機能の回復について情報収集を欠かさない。酔わない体が、もう一度だけでも帰ってきてほしいのだ。

婦人公論.jp

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