世界遺産・二条城で個展を開催予定の芸術家アンゼルム・キーファーのドキュメンタリー

2024年4月8日(月)9時2分 オリコン

ヴィム・ヴェンダース監督のドキュメンタリー映画『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』(6月21日より全国順次公開) (C)2023, Road Movies, All rights reserved.

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 「第96回アカデミー賞」国際長編映画賞に“日本代表”としてノミネートされた『PERFECT DAYS』(2023年)の監督、ヴィム・ヴェンダースが手がけたドキュメンタリー映画『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』が6月21日より東京・TOHOシネマズ日比谷ほか全国で順次公開される。

 同映画は、戦後ドイツを代表する芸術家、アンゼルム・キーファーの生涯と、その現在を追ったドキュメンタリー。アンゼルム・キーファーは、ナチスや戦争、神話などをテーマとした作品群(絵画、彫刻、建築など)で知られる。

 来年(2025年)3月下旬から6月下旬まで、世界遺産・二条城でアンゼルム・キーファーの大規模個展が開催されることも決定している、今大注目の芸術家だ。現在も、東京・青山にあるファーガス・マカフリー東京で、アンゼルム・キーファーの個展「Opus Magnum」が開催中(展示は6月29日まで)。

 ヴェンダース監督と同じ、1945年生まれであり、初期の作品の中には、戦後ナチスの暗い歴史に目を背けようとする世論に反し、ナチス式の敬礼を揶揄(やゆ)する作品もあり、“タブー”に挑戦する作家として美術界の反発を生みながらも注目を浴びる存在となった。91年には、高松宮殿下記念世界文化賞・絵画部門を受賞している。93年からは、フランスに拠点を移し、わらや生地を用いて、歴史、哲学、詩、聖書の世界を創作している。彼の作品に一貫しているのは戦後ドイツ、そして死に向き合ってきたことであり、“傷ついたもの”への鎮魂を捧げ続けている。

 ヴェンダース監督は、『パリ、テキサス』(1984年)、『ベルリン・天使の詩』(87年)、『ミリオンダラー・ホテル』(2000年)などの劇映画だけでなく、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(1999年)、『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(2011年)、『セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター』(14年)などのドキュメンタリーでも高い評価を受けてきた。

 本作の制作期間には2年の歳月を費やし、3D&6Kで撮影。従来の3D映画のような飛び出すような仕掛けではなく、絵画や建築を、立体的で目の前に存在するかのような奥行きのある映像を再現し、ドキュメンタリー作品において新しい可能性を追求した。「先入観を捨てて、この衝撃的なビジュアルをただ楽しんでもらいたい」とヴェンダース監督は語っている。

 キャストには、アンゼルム・キーファー本人の他、自身の青年期を息子のダニエル・キーファーが演じ、幼少期をヴェンダース監督の孫甥、アントン・ヴェンダースが務めている。

 今回解禁となった予告編では、広大なアトリエの床に寝そべる、上半身が裸のアンゼルム・キーファーの自由奔放な姿に始まり、その代名詞とも言える巨大な芸術品を作りだす秘密に迫る。「ナチス、戦争、神話、文学…… アンゼルムは傷ついた世界を創造する」というナレーションに重なるように、その歴史的背景を感じずにはいられない立体的な作品が私たちの眼前に迫ってくる。

 ヴェンダース監督が2年の月日をかけて映像化した、アンゼルムの芸術作品の全貌が“圧倒的没入感”も少し味わえる。「まだ高みに到達していない。私は止まらないんだ」と、進化を止めようとしないアンゼルムの声が静かにそして高らかに響く予告編となっている。

オリコン

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