牧野知弘 東京23区新築マンション平均価格は前年同期比で6割以上上昇!今や「億ション」は当たり前…23区内<中古でも1億円超え物件の数>1位はやはりあの区

2024年4月9日(火)6時30分 婦人公論.jp


牧野さん「戸建て住宅街の印象の強い杉並区や練馬区でも億ションが普通に登場するようになっている」(写真提供:Photo AC)

「かつて超高額マンションと言えば1億円、いわゆる『億ション』でした。ところが今や、3億円を超える住戸は珍しくありません」と語るのは、オラガ総研代表取締役の牧野知弘さん。今回は、マンション価格高騰の背景を牧野さんに解説していただきました。牧野さんいわく、「戸建て住宅街の印象の強い杉並区や練馬区でも億ションが普通に登場するようになっている」とのことで——。

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億ションはもはや普通の物件


不動産経済研究所が調査・発表する「新築分譲マンション市場動向」によれば、2023年上半期(1〜6月)、首都圏(1都3県)における新築マンション供給戸数は1万502戸。

平均価格は8873万円と、前年同期比で36.3%もの大幅な値上がりとなりました。

これを東京23区に限定すると、平均価格は何と1億2962万円、同60.2%上昇になります。坪あたりに直すと636万円です。

庶民感覚から言えば、都区内の新築マンションは一般的なファミリー向けである66平方メートル(20坪)はおろか、10坪=6360万円すら手が届かないのが、今のマーケットの現実です。

もちろん、こうしたデータには一定のバイアスがかかることがあります。

たとえば、同時期に供給された新築物件のなかに、都心一等地でまとまった販売があったとの指摘があります。

びっくりするような価格


しかし、たとえば東京都北区のJR埼京線の十条(じゅうじょう)駅前の市街地再開発事業によって誕生するタワーマンション(タワマン)は、間取り2LDK〜4LDK・住戸面積58〜92平方メートルで、販売価格は8050万〜1億5890万円です。

坪単価は約500万円、つまり66平方メートル(20坪)で1億円です。


『なぜマンションは高騰しているのか』(著:牧野知弘/祥伝社新書)

私は長らく不動産業界に身を置いてきましたが、誤解を恐れずに申し上げるなら、この立地の相場観からはびっくりするような価格です。

たまたま、この物件の発売前に、事業関係者と話す機会があったのですが、彼らですら「驚きの価格」と言っていました。

ところが、売り出してみると反応は上々とのことです。確かに、徒歩1分の十条駅から埼京線直通で池袋(いけぶくろ)まで7分、新宿(しんじゅく)に13分、渋谷(しぶや)には18 分という交通利便性、また充実した商店街など、評価できるポイントはあります。

それにしても、板橋区の下町、十条エリアで坪単価500万円は、驚き以外の何物(なにもの)でもありません。

大阪都心部の一等地


一昔前であれば、販売価格が1億円を超えるマンション、「億ション」は一部のセレブリティ(セレブ)にしか買えない憧れの物件でした。

ところが現在、その立地は東京都心一等地以外に、加速度的に広がっているのです。

大阪市北区中之島(なかのしま)に、関西電力の子会社・関電不動産開発が2023年夏に販売開始した「シエリアタワー中之島」という46階建てタワマンがあります。

これは土地の所有権がない、定期借地マンションであったにもかかわらず、最上階の168平方メートル(約51坪)の住戸が4億3999万円をつけて話題になりました。

坪単価は863万円です。

このマンションは2026年3月に引き渡し予定、定期借地権の期限は2098年ですから、およそ70年間借りたあとは、建物を解体・撤去、更地(さらち)に戻して土地所有者(関西電力)に返さなければなりません。

それでも、大阪都心部の一等地ということで、反応が良いようです。

中古物件でも1億円超え


では、販売数が限られる新築マンションではなく、中古マンションで1億円を超えるような物件はどれくらいあるのでしょうか。

2023年9月の中古マンションサイト・HOMES(ホームズ)から、東京23区内でどのくらいの億ションが売りに出ているのかを調べたのが下図です。

このサイトでは、同じ物件が複数の業者から売りに出されているケースがあるので、数値としては一部重複がありますが、だいたいの傾向を見るうえで参考になるでしょう。

港区は、住民の平均年収が23区のなかでもっとも高いと言われている通り、掲載数は256物件と突出していますが、千代田区、中央区を含めた都心3区だけでなく、渋谷区、新宿区、目黒区などで50戸以上の掲載数が確認できます。

また、タワマンが多数供給されている品川区や江東区は一頃(ひところ)、都心部と比較して割安感がありましたが、今や億ションエリアに入っていることが見て取れます。

下町エリアでも台東区の上野(うえの)近辺や墨田区の錦糸町(きんしちょう)近辺、どちらかと言えば戸建て住宅街の印象の強い杉並区や練馬区でも億ションが普通に登場するようになっています。

どこもかしこも億ションだらけ。それでも流通し、マーケットが成立しているところからも、もはや、「東京のマンションは億ションが当たり前」になったと言えるのです。

※本稿は、『なぜマンションは高騰しているのか』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです。

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