「宝塚ベルばら四天王」榛名由梨×安奈淳 初演から50年『ベルサイユのばら』「怖いお手紙をもらったことも…」「警察官に両側から腕を掴まれ…」

2024年4月15日(月)12時30分 婦人公論.jp


榛名由梨さん(右)と安奈淳さん(左)(写真提供:梅田芸術劇場)

〈発売中の『婦人公論』5月号から記事を先出し!〉
宝塚歌劇の金字塔とも言える『ベルサイユのばら』は初演からちょうど50年。日本中の老若男女を熱狂させ、社会現象を巻き起こした同作は、現在に至るまで繰り返し上演されている。その黎明期に一大ブームを生み出した「ベルばら四天王」のうちの二人、榛名由梨さんと安奈淳さんが〈あの日々〉を振り返った(構成=上田恵子)

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『ベルサイユのばら』初演当時の熱狂


榛名 『ベルサイユのばら(以下、ベルばら)』が、宝塚歌劇で初めて上演されたのは1974年のこと。当時のことは今でも鮮明に覚えています。私は20代の終わりで、オスカルを演じました。あれからもう、50年もたつのねえ。

安奈 本当に、あっという間ですね。

榛名 初演時の演出を担当なさったのは、俳優の長谷川一夫先生。脚本は宝塚歌劇団の植田紳爾先生が書いてくださいました。

最初の頃は池田理代子先生の原作漫画のファンの方からの反発が強くて、上演を疑問視する声もありました。漫画の登場人物を、生身の人間が演じることに抵抗を感じる方が多かったのね。抗議の投書も歌劇団に届いていたそうです。

私はオスカル役だったばっかりに、怖いこと書かれたお手紙もらったわ。(笑)

安奈 私が初めて『ベルばら』の舞台に立ったのは翌75年。私はオスカルを、榛名さんがアンドレを演じました。再演ということで呑気に構えていましたが、それでもそういったお手紙をもらったりして、母がすごく心配していた記憶があります。

榛名 それだけたくさんの方が注目していたということよね。

安奈 本当に。オスカルは普段は男装の麗人なんですが、途中で一度だけ女性の格好をして舞踏会で踊るシーンがあったんです。舞台初日、そのお姫様のようなドレスを着て花道から出て行った瞬間、「うおおぉ……」という、これまで聞いたこともない地鳴りのような声が超満員の劇場に広がって。

その時に初めて、「私はすごい舞台に立っているんだ」という自覚を持ったんです。あれはゾクッとしましたね。

榛名 初演ではマリー・アントワネットが中心で、再演ではオスカルとアンドレがフォーカスされ、熱狂がより高まったのね。ファンの年齢層も一気に広がって、小学生までもが来場するようになった。楽屋口では毎回、ファンの方がわんさか待っていました。

安奈 私など、警察官に両側から腕を掴まれた格好で劇場の外へ出て行きましたよ。私をガードしてくださっていたのですが、どう見ても犯人の連行。(笑)

榛名 東京で上演した時は、危ないからと楽屋口から先輩と一緒にタクシーに乗せられて、寮まで強制送還。本当にすごい盛り上がりでした。


『ベルばら45』に出演した際の榛名さん

宝塚の夢の世界にいざなう要素が満載


安奈 私、自分が舞台で演るまで、『ベルばら』の原作を読んでいなかったんです。それで実際に読んでみたらものすごく面白くて! 池田理代子先生を心からリスペクトして、原作の大ファンになってしまいました。自分が演じることも忘れ、あの世界観にどっぷり浸っていましたね。

榛名 物語の背景にフランス革命があるのも素晴らしいのよね。現実にあった話を下敷きに、オスカルやアンドレという実在しない人物が登場して。女性が男性を演じるのも宝塚にピッタリでした。

軍人がカッコいい軍服を着て、マリー・アントワネットのゴージャスな衣裳があって……。ロマンチックな夢の世界にいざなってくれる要素が満載なんですもの。

安奈 私もフランス革命に興味を持って、あれこれ文献を読みました。なかでも遠藤周作先生がお書きになった『王妃マリー・アントワネット』という小説がものすごく面白かった。たかだか200年ちょっと前の話ということがすごく不思議に思えましたし、その中の役を演れたことに運命を感じました。

榛名 舞台のヒットの理由は、ひとつではないわね。

安奈 そうですね。演出が長谷川一夫さんということも大きかったと思います。これまで宝塚を観たことがない方がいらっしゃるようになった。

ファンのおばさまたちが「演出」を「出演」と間違えて、「今日、長谷川一夫出てへんかったな?」と首を傾げながら帰って行った、という話を聞きました(笑)。時には修学旅行の生徒も来ましたね。

榛名 そうそう!

安奈 榛名さん演じるアンドレとのラブシーンがあると、修学旅行生がいる3階席からどよめきと笑い声が聞こえるんです。男の子たちは普段そんなものを見る機会がないから、照れちゃうのね。(笑)

榛名 聞こえたわねえ(笑)。人気が広がった理由としては、原作ファンの方が舞台も面白いと感じてくださったこと、そしてNHKが舞台中継したのも大きかったと思う。地方に住む方など、そこで初めて宝塚を観た人も多かったんじゃないかしら。

安奈 以前は中継と言っても、関西テレビでやるくらいでしたものね。八千草薫さんがナレーションを務められて。宝塚地区だけでやっていたら、ここまでは広がらなかったかもしれません。

<後編につづく>

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