一定の英語の知識があるのに「リスニングが苦手」と感じる<2つの要因>とは…途中で構造や単語を悩めば簡単に置いていかれる

2024年4月16日(火)6時30分 婦人公論.jp


北村先生「リスニングが本当に苦手でできないと感じている場合、おもに2つの要因がかかわっていると考えられる」(写真提供:Photo AC)

令和2年4月に学習指導要領が改訂され、小学校でも外国語を勉強する時間が増加しました。「英語の重要性が叫ばれ、人々の関心が高まってるとはいえ、リーディングとリスニングを関連づけて考えている学習者は、まだまだ多数派とは言えません」と語るのは、杏林大学外国語学部准教授の北村一真先生。北村先生いわく、「リスニングが本当に苦手でできないと感じている場合、おもに2つの要因がかかわっていると考えられる」そうで——。

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音声として認識できない


一定の英語の知識がある人が、それでもなおリスニングが本当に苦手でできないと感じている場合、おもに2つの要因がかかわっていると考えられます。

1つは文字で書かれているものを読めばすぐに分かる内容でも、ナチュラルスピードやそれに近い音声で聞くと、正しく語句や表現を認識することができず聞き取れないというケースです。

たとえば、“Monster Hunter”という映画の予告編の冒頭近くに出てくる2人の登場人物によるやりとりを見てみましょう。

A:Captain. Do you have any idea what those markers are?
B:They look pretty ancient.
“MONSTER HUNTER - Official Trailer (HD)”
Sonny Pictures Entertainment

英語の音声に対する耐性の低さ


訳例
A:キャプテン、あの印が何か分かる?
B:ずいぶん古く見えるな。

シンプルな英語で難しい語句もほとんど含まれていません。

ところが、このシーンを学習者に視聴してもらうと、使用されている語句や文法について十分な知識があると思われる人でも1回では正確に聞き取れないことがそれなりにあります。

Do you have…の部分が「ドゥユゥハヴ」ではなく、「デュァヴ」のように聞こえる、They が単語というよりも詰まった音のように聞こえる、というのが原因のようです。

このような場合は、英語の音声に対する耐性の低さが正確な聞き取りを妨げているといってよいでしょう。

中学校や高校の教科書に付属している音声では、文法や語順を意識させるためにDo youやtheyのような語が強く発音される傾向にあり、そういった発音が学習者に定着しているということもあるのかもしれません。

スピードに追いつけない


もう1つの要因は音声としては正しく認識できていても、理解するスピードが相手の話す英語のスピードに追いつかず聞き取りが阻害されるというパターンです。

英語の音声を聞いたり、動画を視聴したりしている際に、はっきりした発音で聞き取りやすいと感じていたのに、徐々にどこがどこにつながっているのかが曖昧になり、自信をもってついていくことができなくなった、という経験をしたことはないでしょうか。

こういう場合は、理解のスピードが原因になっています。


使用されている語句や文法について十分な知識があると思われる人でも1回では正確に聞き取れないことがそれなりにある(写真提供:Photo AC)

試しに次のNHK world のあるニュースの冒頭の箇所を書き起こしたものを少し急ぎ足で読んでみて下さい。

Steve Jobs needs no introduction. As founder of Apple, he came up with amazing products and technologies that changed the world, from the Macintosh computer to the iPhone and the iPad.
“What Steve Jobs discovered in Japan”
NHK WORLD-JAPAN

簡単に置いていかれてしまう


訳例
スティーブ・ジョブズ氏は紹介は不要でしょう。アップル社の創業者としてマッキントッシュやiPhone、iPad といった世界を変える驚くべき製品や技術を生み出しました。」

本記事の読者であれば、じっくりと読んでもこの英文の意味が全く分からないという方は少ないと思いますが、急ぎ足で読むとなると、第2文は少し修飾語句が多くなっているために、途中でほんの一瞬考えるといったことがあったかもしれません。

実際のニュースではこの第2文を約12秒で発音しているため、少しでも途中で構造を考えたり、この単語は何だっけなどと悩んだりすると簡単に置いていかれてしまいます。

まさに英語を理解する速度がネックになってリスニングがうまくいかないパターンです。

※本稿は、『英語の読み方 リスニング篇-話し言葉を聴きこなす』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

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