4月19日から恵みの雨が降る「穀雨」。野遊び作家がこの時期の野草の楽しみ方を解説!その名から<毒草>と思われやすい「ヘビイチゴ」、実は…

2024年4月19日(金)6時30分 婦人公論.jp


大海さん「ヘビイチゴはたしかにウマくはないが、実は意外に役に立つ」(写真提供:Photo AC)

日本には、旧暦の「二十四節気」をさらに初候・次候・末候の三候に分けた「七十二候」という暦があります。今回は、野遊び作家・フィールドアドバイザーとして活躍する大海淳さんに、旧暦の七十二候にちなんだ野草の楽しみ方を紹介していただきました。今回紹介する季節は「穀雨」です。大海さんいわく、「ヘビイチゴはたしかにウマくはないが、実は意外に役に立つ」そうで——。

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穀雨(こくう)


いろいろな穀物を育む恵みの雨が降り始めるころ。春の季節の最終期で、農作物を生長させるところから「百穀春雨(ひゃっこくはるさめ)」ともいう。

また花の開花を促す雨を「催花雨(さいかう)」と呼ぶ。

新暦では4月19日〜5月4日ごろ。

主な歳時記
・4月23日…東京でノダフジ開花
・4月下旬から…弘前さくらまつり
・5月1日ごろ…八十八夜
・5月3日から…博多どんたく
上記、生物季節観測などの時期は、目安としてご覧ください。また、行事の日にちは変わることもありますので、お出かけになる場合は事前にお調べください。

初候


葭(あし)始(はじ)めて生(しょう)ず
水辺でアシ(ヨシ)が芽吹き始める

日本は古くから「豊葭原瑞穂之国(とよあしはらみずほのくに)」と呼ばれたように一面の葭原に被われていた。

・新暦では4月19日〜23日ごろ
・この候の植物=片栗(カタクリ)


『七十二候を楽しむ野草図鑑 季節の移ろいの中で心穏やかに暮らす』(著:大海淳/青春出版社)

次候
霜(しも)止(や)みて苗(なえ)出(いず)る
降霜が終わり稲の苗が育ち始める

「八十八夜の別れ霜」といって、霜の心配がなくなり、苗代で苗がすこやかに伸びる。

・新暦では4月24日〜28日ごろ
・この候の植物=吸葛(スイカズラ)

末候
牡丹(ぼたん)華(はなさ)く
ボタンの花が咲き始める

ボタンは、そのあでやかな花姿から中国では「花の王」と呼んでたたえられてきた。

・新暦では4月29日〜5月4日ごろ
・この候の植物=蛇苺(ヘビイチゴ)

註)新暦該当日は、年によって1日程度前後することがあります。

野草の楽しみ方


初候
葭始めて生ず 片栗*カタクリ

カタクリはユリ科の多年草で、落葉樹林の明るい林床に群生する。

北海道、本州、四国、九州に分布するが、現在、四国や九州では希少種になっている。

4月の中旬ごろに高さ10〜20cmの花茎を伸ばし、その先端に花被片が反り返った紅紫色の六弁花を一個ずつつける。

地中の鱗茎には良質のデンプンが含まれ、これを精製したのが本来の「片栗粉」。

ただし、鱗茎を掘り採ってしまうと株が絶えてしまうので、一株から葉っぱ一枚か花だけを摘み、葉はおひたしか和え物で、花はこれらのほかサラダに加えると楽しい。

また、片栗デンプンは、子どもの嘔吐や下痢、大人の胃腸炎などにも効用がある。

『万葉集』にも「堅香子(かたかご)」の古名で登場する。

次候
霜止みて苗出る 吸葛*スイカズラ

スイカズラは、スイカズラ科のつる性小低木で、4月の末ごろから枝先の葉のわきに長さ3〜4cm内外の白い筒状唇弁花を上向きに2個ずつたくさんつけ、よく目立つ。

この花を付け根から抜き、抜き口をくわえて吸うと甘くて良い香りがし、子どもたちがこれを吸って遊んだところから「吸い葛」と呼ばれるようになった。

また、この花は、咲き始めは白色だが、少しすると黄色味を帯び、若い白花と古い黄花とが混ざりあって咲き乱れるために「金銀花」とも呼ぶ。

この「金銀花」をホワイトリカーに漬け込んだ花酒は、疲労回復、強壮、安眠、美容などに効用があるほか葉や茎も「忍冬(にんとう)」と呼び、健康茶や浴湯料として利用できる。

末候


牡丹華く 蛇苺*ヘビイチゴ

「ヘビイチゴ」と不運な名で呼ばれるため、毒草だと思われやすいが、毒性はない。

食べてもマズイところから、「ヘビにでも喰わせろ」というのが和名の由来とされている。

でも、このヘビイチゴ、たしかにウマくはないが、実は意外に役に立つものなのだ。

まずひとつは、乾燥させた花期の全草を煎じて服用すると、解熱や解毒に効がある。

そして、もうひとつは、果実をホワイトリカーに漬け込んだ「ヘビイチゴ酒」だ。

こっちのほうは歯ぐきの腫れや痛み、虫刺され、トゲ刺しなどに外用すると即効がある。

したがって、これからは、ヘビイチゴの赤い実を見つけたら、「ヘビなどに喰わせてなるものか!」とセッセと摘み採ることだ。

バラ科ヘビイチゴ属の多年草。

※本稿は、『七十二候を楽しむ野草図鑑 季節の移ろいの中で心穏やかに暮らす』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

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