本郷和人『光る君へ』ドラマ内で紫式部は「まひろ」、清少納言は「ききょう」と呼ばれているけれど本当の名は…平安時代の女性の名前について

2024年4月22日(月)12時30分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

大石静さんが脚本を手掛け、『源氏物語』の作者・紫式部(演:吉高由里子さん)の生涯を描くNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合、日曜午後8時ほか)。第十六話は「華の影」。都で疫病がまん延。ある日、たね(竹澤咲子さん)がまひろを訪ね、悲田院に行った父母が帰って来ないと助けを求める。悲田院でまひろが見たのは——といった話が展開しました。一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生が気になるあのシーンをプレイバック、解説するのが本連載。今回は「女性の名前」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!

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名前について


中宮となり、一条天皇と仲睦まじく暮らす高畑充希さん演じる藤原定子。

以前の回で、「ききょう」を女房にするのにあたり、「清少納言」という名を与えていました。

なお、ドラマ内で「定子」の読み方は「さだこ」となっていますよね。

一方、私が監修を務める『応天の門』には清和天皇の女御で、のちに皇太后となる「藤原高子」が登場します。

作品内では「たかこ」と読んでいますが、あれは「たかいこ」もしくは「たかきこ」ではないのか、という問い合わせが編集部へ届くのだそうです。

たかこ?たかいこ?たかきこ?


たしかにぼくも高校生の時に「たかいこ」と教わった記憶があります。


本郷和人先生が監修を務める大人気の平安クライム・サスペンス!『応天の門』(作:灰原薬/新潮社)

では、「たかいこ」と読む証拠はどこにあるのか? 

問い合わせをもらって、必死に調べたことがありました。

たとえば、『大日本史料』の延喜十年三月二十四日条、高子の亡日条など。

ところがうーん、分からない。ごめんなさい。見つかりませんでした。

女性の名前は分からない


結論として、当時の女性の名前は、基本的に分かりません。

たとえば『光る君へ』では“まひろ”と呼ばれている紫式部。そして“ききょう”と呼ばれている清少納言でしたが、実際のその名前は明らかではないのです。

高貴な方のお名前なら、たしかに「漢字」としては残っていて、分かります。

ですけれども、読めない。どう発音するかが分からないのです。

ご連絡をお待ちしています


だから、取りあえずということで、紫式部が仕えた「藤原彰子」さんは「しょうし」、清少納言が仕えた「藤原定子」さんは「ていし」と音読みしています。

一番権威のある辞書、『国史大辞典』(吉川弘文館)は、その辺の事情を踏まえて、全部「音読み」にして項目を立てています。そしてこれはもちろん「便宜的にそうしている」、ということなのですが。

それで『応天の門』でも、ごく穏当に「たかこ」と読んでもらっているわけです。

もし「たかいこ」と読む典拠をご存じの方がいらっしゃったら、ぜひ著者までお声掛けください。ご連絡、本当にお待ちしております。

婦人公論.jp

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