朝ドラ『虎に翼』に全女性が勇気づけられる理由とは? さまざまな価値観が錯綜する豪華登場人物に注目

2024年4月23日(火)20時10分 All About

伊藤沙莉さんが主演を務めるNHK連続テレビ小説『虎に翼』が、大きな話題を集め続けています。この記事では、『虎に翼』の序盤の振り返りをしつつ、ドラマの魅力に迫っていきたいと思います。(サムネイル画像出典:『虎に翼』公式Webサイト)

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2024年4月1日にスタートしたNHK連続テレビ小説『虎に翼』は、朝ドラには珍しいテンポの良さで好評を得ています。主演は伊藤沙莉さんが務め、登場人物は女性が多く華やかで魅力的な俳優も多数出演中。
すでに4週目に入っていますが、名作とうわさになっている『虎に翼』の魅力を、元テレビ局スタッフが解説したいと思います。

日本初の女性弁護士を描く朝ドラ『虎に翼』

今回、『虎に翼』で伊藤さんが演じるのは猪爪寅子。日本初の女性弁護士で、のちに裁判官を務めた三淵嘉子さんがモデルです。
序盤の舞台は昭和初期となり、女性はお見合いなどをして家庭に入り、今で言う「主婦」になるのが普通と考えられていました。そんな時代に、寅子はなぜ女性は結婚して家庭に入らなければいけないのか理解できず苦悩します。そして、偶然にも弁護士の世界をのぞき見ることで、これまで日本では誰もなし得なかった「女性弁護士」になる、茨の道を歩みはじめます。
そんな寅子は勇ましく頭の切れる女性かと思いきや、どこかおっちょこちょいで憎めないキャラクター。コメディーセンスの高い伊藤さんが見事に演じ、魅力あふれる人物を作り出しています。ここまでのストーリーでは、さまざまな事に疑問を持つ寅子が、その時代では当たり前だった風潮や世の中の流れに抗い続けます。

主人公・猪爪寅子の現代っ子すぎる感覚が面白い

女性が法律を学ぶ「明律大学女子部法科」に進学してからも勢いは止まらず、女性を小馬鹿にする男子学生に憤慨することも。昭和初期にはあまりいなかった、男性にも物申す寅子は現代的な雰囲気を漂わせ、価値観で凝り固まった周囲の人たちを驚かし続けます。
そんな現代っ子のように自由な感覚を持つ寅子の、周りにいる女性たちを巻き込んで不条理に立ち向かう姿には、漫画の主人公のような格好良さを感じられます。コミカルな演技も多い寅子は朝ドラ初心者でも見やすく、ポップな雰囲気が幅広い世代の視聴者から支持されているようです。

主要人物は女性中心 それぞれの価値観に注目

そんな寅子を取り巻く登場人物ですが、序盤ではとにかく女性が多い印象です。
「明律大学女子部法科」に進学する前は、石田ゆり子さん演じる「猪爪はる」が強烈なキャラクターを見せます。
良妻賢母を絵に描いたような母・はるもまた、女性は結婚して家庭に入ることが普通という考え。しかし、寅子が弁護士の道に進みたいと明かしてからは、葛藤を乗り越え娘の幸せのために全面バックアップすることになります。
また、寅子の親友・米谷花江(森田望智)は、物語の初期でいきなり若くして結婚。しかも相手は、寅子の兄である猪爪直道(上川周作)で、すぐに2人は親友から家族になってしまう驚きの展開を見せます。花江は寅子の親友でありながら、家庭で1番になりたいと料理など家事をとにかく頑張ります。
はる、花江という寅子に近しい家族が、価値観の違いを持っていることも物語に深みを与え、なくてはならない登場人物になっているのです。

豪華俳優陣のポップな演技が魅力


さらに、大学へ進学すると濃いキャラクターが次々と登場し、中でも級友の山田よね(土居志央梨)は登場時から男装を披露する驚きの演出。女性の地位の低さに常にブチ切れモードで、寅子ともたびたびぶつかりあうライバル的ポジションです。
そして、桜川涼子(桜井ユキ)は華族のお嬢さまでファッションや行動が雑誌で取り上げられるカリスマ、大庭梅子(平岩紙)は学生ながら弁護士の夫と3人の息子がいる母親という意味深な設定。また、留学生の崔香淑(ハ・ヨンス)は眼鏡っ子で頑張り屋の美少女、眼力が強すぎる女子部のリーダー的存在の久保田聡子(小林涼子)も物語に華を添えています。
画面が華やかで見ていて楽しく、また登場人物が多いことでさまざまな要素が取り込まれるため、ストーリーのテンポが気持ちよくスピーディーに進んでいきます。これも、『虎に翼』の魅力の1つです。
また、男性キャラクターは寅子を常に応援する法学者の先生・穂高重親(小林薫)や、どんなことでも応援してくれる父の猪爪直言(岡部たかし)ら温かい人ばかり。この2人に加え、弁護士を目指す寅子の家に下宿する佐田優三(仲野太賀)や、花岡悟(岩田剛典)、轟太一(戸塚純貴)と演技派の若手男性俳優が担当する登場人物が、今後はメインで活躍することが予想されます。
俳優の演技力も高い上に、見やすいポップな演技を得意とする演者ばかりなので、あまり朝ドラに親しみがない視聴者でもストレスなく見られる作品となっています。

女性は勇気をもらい、男性は考えるきっかけになる

着々とストーリーが進行している『虎に翼』ですが、近年の朝ドラの中でも特に逆境から這い上がろうとする女性たちの姿を何度も見ることができる作品です。
主要人物となっている山田よねですが、実は男装して勇ましいキャラクターでいるのには、女性だからこその深いわけがあることが判明します。よねに優しくしてくれた姉は、15歳になると両親に売られ女郎に。貧しい女性だからという理由で搾取され続けることに苦悩するよねは、女であることをやめ、故郷から逃走した悲しい過去を持っています。
令和では考えられないような悲劇ですが、これは日本で実際に起きていたこと。こういった、女性たちの苦しみや悲しみを描きつつ、何とか自由を手にしようともがく姿が鮮明に描かれています。
寅子が女性初の弁護士になったというサクセスストーリーだけでなく、その裏にある男尊女卑の世界を体験できることで、視聴者はさまざまな発見をすることができます。女性は生きる勇気をもらい、男性は男女差別について考えるきっかけになるドラマとなっています。

“主題歌職人”が奏でる歌にも注目!

また、米津玄師さんの主題歌『さよーならまたいつか!』も作品にぴったりで、深く考えさせられる歌詞と美しいメロディに癒やされます。“主題歌職人”らしい、良質な楽曲となりドラマを初回から盛り上げることに成功。ドラマのストーリーとともに、いつまでも聞いていたくなる作品となっています。
ここまで、『虎に翼』の序盤の魅力を紹介してきましたが、まだ見ていない人でも見逃し配信サービスなどで追いかけることも可能です。ぜひとも、名作の予感がビンビンとする『虎に翼』を見て、寅子とともに生きる喜びや希望を感じ取ってください。
この記事の筆者:ゆるま 小林
長年にわたってテレビ局でバラエティ番組、情報番組などを制作。その後、フリーランスの編集・ライターに転身。芸能情報に精通し、週刊誌、ネットニュースでテレビや芸能人に関するコラムなどを執筆。編集プロダクション「ゆるま」を立ち上げる。
(文:ゆるま 小林)

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