全盲の姉弟を追った『イーちゃんの白い杖』取材班、日本記者クラブ賞特別賞「見終わると明るくなる」

2024年4月24日(水)16時0分 マイナビニュース

テレビ静岡のドキュメンタリー番組『イーちゃんの白い杖』の取材班が、2024年度日本記者クラブ賞特別賞を受賞した。
日本記者クラブ賞特別賞は、クラブ賞創設40年を機に2012年度、より開かれた賞をめざして新設され、原則として、クラブ会員以外の内外のジャーナリストやジャーナリズム活動に贈られるもの。ジャーナリズムの向上と発展につながる特筆すべき業績や活動を顕彰している。
『イーちゃんの白い杖』は、静岡県焼津市に住む、生まれつき目の見えない少女・イーちゃんこと小長谷唯織(こながや・いおり)さんが、重度の障がいをもつ2歳下の弟・息吹(いぶき)さんと家族に支えられながら、いじめ、夢の挫折などいくつもの壁を乗り越え、自立する姿に25年にわたり寄り添った作品。2018年制作の映画、2023年制作のテレビ番組は道徳など教育目的の映像としても使用されている。イーちゃん家族と取材班は映画の自主上映会に積極的に出向き、障がい者と健常者の垣根をなくす取り組みを進めた。
2023年日本民間放送連盟賞テレビ・グランプリ、テレビ部門「エンターテインメント」最優秀賞、特別表彰部門「放送と公共性」最優秀賞受賞。第61回ギャラクシー賞上期入賞。ニューヨークフェスティバル2024金賞受賞。そして、『イーちゃんの白い杖 特別編』は、5月10日から新宿武蔵野館をスタートに全国の映画館で上映予定となっている。
今回の贈賞の理由について、「生まれつき目の見えない女性と重度の障がいを持つ弟、そしてその家族を25年間追い続けた映画・テレビ番組は、『イーちゃん』の自立を通して命と家族という普遍的な問題を描いた。カメラは空気のようにそこにあり、障がい者を特別な人と感じさせずに、一緒に生きることを考えさせる。重いテーマなのに見終わるとむしろ明るくなる。エンタテインメントとして高い評価を得たことも、ドキュメンタリーの可能性を感じさせた」と説明されている。
橋本真理子監督(テレビ静岡報道制作局長兼情報ニュース部長)は「放送記者になって31年。日本記者クラブ賞は記者冥利に尽きる最高の賞です。心より感謝申し上げます。1分のニュース取材からイーちゃん家族との交流は始まりました。イーちゃんと弟・息吹君が生きやすい社会になるのか、そうでないなら変えなければならない——そう自分に言い聞かせ取材を続けてきました。障がい者を知り、健常者と同じであることを伝える。あたり前のことがなかなか伝わらない現状を変えるのは容易なことではありません。テレビ番組、映画を通じて、イーちゃん家族と健常者がふれあう、垣根をなくす活動をこれからも続けます。私たちはいつの日か、目も悪くなり、腰も痛み、誰もが障がい者になると思います。イーちゃん家族が生きやすい社会は誰もが生きやすい社会になるー。伝え続けます」とコメントした。
【編集部MEMO】
橋本監督はニューヨーク・フェスティバルの受賞を受け、「世界には、イーちゃんやイブちゃんのように障がいを持って生まれた子、戦争で傷つき、身体の一部を失った子がたくさんいます。障がいがあるから“できない”ではなく、“できること”に注目したら彼らの可能性は広がります。障がいがあろうがなかろうが、誰にも生まれた意味がある。この思いを伝えたくて、NYフェスティバルに挑みました。イーちゃんの笑顔、イブちゃんの笑顔は世界を笑顔にする。これからも伝え続けます」とコメントしている。

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