少女たちの失踪、その美しき謎に魅了される『ピクニック at ハンギング・ロック 4Kレストア版』
2024年5月3日(金)12時56分 オリコン
本作は、1967年に発表された同名小説を基に映画化。当時批評家や観客に大きな混乱をもたらした衝撃作であり、ソフィア・コッポラの『ヴァージン・スーサイズ』(1999年)に直接的な影響を与え、ファッション界ではラフ・シモンズやアレキサンダー・マックイーンもインスピレーションの源として本作に言及するなど、今日まで広く語り継がれてきた「神話的傑作」である。
本作でその名を世界に知らしめたピーター・ウィアーは、メル・ギブソン、ジョージ・ミラーと並び、「オーストラリア・ニューウェイヴ」を代表する監督となった。
ある晴れたバレンタインの日に、少女たちは姿を消した——1900年、2月14日。セイント・バレンタイン・デイ、寄宿制女子学校アップルヤード・カレッジの生徒が、2人の教師とともに岩山ハンギング・ロックに出かけた。規律正しい生活を送ることを余儀なくされる生徒たちにとってこのピクニックは束の間の息抜きとなり、生徒皆が待ち望んでいたものだった。
岩山では、磁力の影響からか教師たちの時計が12時ちょうどで止まってしまう不思議な現象が起こる。マリオン、ミランダ、アーマ、イディスの4人は、岩の数値を調べると言い岩山へ登り始めるが、イディスは途中で怖くなり悲鳴を上げて逃げ帰る。その後、岩に登った3人と教師マクロウが、こつ然と姿を消してしまう…。
予告編では、レナ・ダナム、クロエ・セヴィニーなどが本作からの影響を語り、「美しい少女たちの失踪とともに、完璧な世界に亀裂が走る。コルセットのように西洋的な文化で締めつけても、オーストラリアの自然は野生で対抗し、彼らの大事なものを奪い去っていく。靴を脱いだ少女たちは素足でどこに行ったのか。抑圧からの解放、逸脱、叛逆、官能、自由の気配。危険で耽美的な物語の向こう側に、今の私たちは何を読み取るだろうか。」とコラムニスト・山崎まどか氏のコメントが映し出される(予告編はコメントの一部抜粋)。
1977年の英国アカデミー賞最優秀撮影賞を受賞した映像は、純白のイメージに満ちたあえかな少女のきらびやかさ、ミステリアスなハンギング・ロックの対比を大胆に、そして繊細に描き出している。美しさの中に垣間見えるどこか不気味な不穏さ…観るものの興味を誘う予告編となっている。
今回の4Kレストア版は、107分のディレクターズ・カット版。日本で初めて劇場公開された当時116分あったオリジナル版から監督自身が再編集したものとなる。このディレクターズ・カット版が公式のものとされている。制作より50年。映画史に残る美しき謎が再び観客に衝撃を与える。