【るろ剣リレーインタビュー 第5回】江口洋介、リアリズムを持って演じた役は「死神のようなイメージ」

2021年5月28日(金)7時45分 シネマカフェ

『るろうに剣心 最終章 The Beginning』(C) 和月伸宏/ 集英社 (C)2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」製作委員会

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実写版『るろうに剣心』シリーズが『るろうに剣心 最終章 The Final』『るろうに剣心 最終章 The Beginning』をもってついに完結する。これを記念してシネマカフェではキャスト陣のリレーインタビューを敢行! シリーズ完結への思い、いまだから言える“あの”話、主演の佐藤健に言いたいor聞きたいことなどについて語ってもらい、さらにアンケートで寄せられた読者からの質問にも回答してもらう。

今回、ご登場いただくのは斎藤一を演じる江口洋介。『The Beginning』で新選組時代の斎藤を演じての感想や、斎藤のトレードマークとなっているタバコへの熱い思いなど、たっぷりと語ってもらった。

斎藤一は「死神のようなイメージ」

——今回、これまでのシリーズから時間をさかのぼって、幕末の「新選組三番隊組長・斎藤一」を演じましたが、維新後ではなく、この時代の斎藤を演じるにあたって意識したことを教えてください。

『The Final』までの4作は斎藤一ではあるんですけど、(維新後に)藤田五郎と名前を変えて、警察に身を置いているというスタンスで、そこで斎藤なりの「悪・即・斬」を貫いてやってきたんですが、今回の『The Beginning』では新選組というところに身を置いていた時代でして。新選組といってもいろいろ表現がありますけど、『The Beginning』では武士に憧れ刀を持ち、腕っぷしに自信のある人間がある思想の下で相手を斬りつけていくわけですからね。ものすごく残虐であり「悪」と「正義」というひと言では表せない、死への恐怖を感じさせない部分をリアルに考えてやっている部分はありました。

斎藤は(維新後と)髪型も違いますし、衣装も新選組の(一般によく知られている)誠と書いてある水色に白みたいなものとはまた違ったデザインになったんですよね。「死」を覚悟してるというか、死神のようなイメージで自分ではやらせてもらいましたけどね。

見たことがない新選組っていうのを意識していました。よくよく掘り下げていくとそっちがリアルじゃないかなと僕は思っていたんで、ちょっと全然違った気分で演じていましたね。

いままでのシリーズはアクション映画っていう感じだったんだけど、これはもうちょっと“気配”の映画というかね、役作りも全然違う考え方をしましたね。同じシリーズとは思えない別の作品をやっている感じでした。


——今回、新選組隊士として、敵同士の関係で佐藤健さん演じる剣心と対峙された感想を教えてください。

ずっと一緒にやってきてるんですけど、今回の『The Beginning』での立ち位置がまた全然違うので、こっちは新選組、向こうは長州の用心棒みたいな感じで、お互いの思想が全く違う敵役ですよね。2人ともある種、その時代の最も底辺にいる人間だと思うんですね、戦という部分では。そういう意味では似た者同士という感じもあり、斎藤はそこで“同じ匂い”のする人間を確認してしまったんだろうなという感覚。それからは、剣心をずっと追い続けていくような人生で、斎藤は斎藤で新選組の時代が終わって、(維新後は)警察に身を置いていて、ちょっとスパイ的な要素もこの人間は持っていて、新選組時代もそういうエピソードがあるらしいですけど…。

剣心も、ある意味で(かつての人斬りという姿を)カモフラージュしたような存在でもあって、そこから始まる2人の関係っていうのを噛みしめながらやってましたね。(維新後を描くシリーズ)4本が、ここから続くんだなっていうスタートとして。


「タバコと刀」は「斎藤には切っても切れないもの」

——2012年から10年近くにわたって(数年を間に挟みながら)ひとつの役を演じ続けてみていかがでしたか? シリーズを通じて、最も印象深い出来事、エピソードなどを教えてください。

漫画原作の実写化ということで、最初はどういう世界観になるのかまったくわからずにスタートしてるわけです。立ち回りもこんなスピーディな映像になるとは知らずに。でもアクションのトレーニングをしてて、普通の時代劇にはならないなっていう、アクションをメインにした漫画原作なんだけれども、ある種リアリズムを持って、そこに存在するかのように俺たちがやらないと、これはうまくいかないんだろうなと思いながらやっていました。

最初にやった剣心との立ち回りのシーンは覚えていますね、まだ。雨の中でね、(維新後に初めて剣心と斎藤が)出会った後なんですけども、剣心は「もう斬らない」という意思で、斎藤は「悪は斬る」という。一度、人斬りとして生きた人間は不殺には行けないはずだという、斎藤の思想があって。シリーズ冒頭ですれ違うシーンですね。そこは印象深く覚えてます。

あとは、毎回強力な敵が出てきて、日本を揺るがすという。そういう意味では立場は違っても同じ正義という、立ちはだかるものを潰していくっていう意味では一緒だったんですけど。まあ“同志”のような感じでね、やってくんだけど。

あとは『The Beginning』ですかね。最初に出会って剣を合わせなかったところのシーンが上手くつながっていれば、後は大丈夫だろうというような思いでしたね。そこは大事にやったつもりですし、いまでもやはり印象深いですね。

——「るろうに剣心」シリーズがこれで終わってしまう、斎藤を演じるのが最後になってしまうことへの寂しさはありますか?

そうですね、しばらくはタバコ吸わなくていいんだろうなっていう…(笑)。でも、もともと、ヘビースモーカーで、昔は自分のところに来たあらゆる役をタバコ吸う設定にしてもらって、ドラマでも映画でもバンバン吸ってましたね。タバコを吸う芝居に慣れてるっていうか、喋りながらタバコを吸うことはよくやってきてるんですよね。

ある時期から(武士にとっての)刀じゃないけど、タバコを劇中で吸う事が難しい時代になって、(このシリーズで)また得意なタバコを吸えたんでね、俺としてはこの役はどんどん広げられたつもりではいるんですけど、「タバコと刀」というのは斎藤には切っても切れないものですね。そういう意味で芝居をするにしてもすごく印象的だったし、ここまで深く関わった作品も初めてだったんで、寂しさはありますよね。終わってしまった寂しさっていうのはありますけど、やり切った感もあります。


——読者からの質問で「タバコを吸いながら戦っているところがカッコいいです。実際に吸いながらアクションをしてるのですか?」、「タバコを落とさずに演技する上で難しかったこと、困ったことなどがあれば教えて下さい」など、タバコに関する質問が多かったんです。

あれは実際に本物の巻きタバコを使っていて、本当においしいタバコを自分で選んで、それを現場に持って行って巻いてもらって吸ってるんですけど。

(普通、撮影では)ネオシーダー(※タバコと同じ形状で微量のニコチン・タールを含んだ、咳止めの医薬品)とか偽物のタバコとかをよく使うんだけど、煙の出方が全然違うし呼吸も変わっちゃうんだよね、火薬部分が多すぎて。ちゃんとゆっくりブレスして、本物のタバコを味わいながら芝居をするという、その味わい深さが斎藤の人を煙に巻くようなムードを出しているんじゃないかなと思って。本当に一本一本味わって吸いながら撮影していました。

さっきも言いましたけど、自分でもタバコを吸いながらいろんなことをやっていたしね。タバコをくわえながら何か作業していたり、車とかバイクが好きだったんでバラしたり、掃除したり、料理したりとか。時代もあると思うんだけど、タバコ吸いながら何かをするっていうのが何の抵抗も難しさもなかったんですね。ただ「ここで捨てよう」とか「ここであれしよう」とか、そういう間はなんとなく自分で決めてやってはいましたけどね。


『るろ剣』チームは“戦友”のような存在

——「座長・佐藤健に今だから言えること、聞きたいこと」を教えてください。

そうですね。デビューしてすぐの頃は、『仮面ライダー』をやってた男の子という、まだ色が付いていない俳優さんだったと思うけど、やっていくうちにどんどん主役として、座長としてね、成長する姿を見てきて…。

俺なんかもそうだったけど、作品がヒットすると、それが自分にとってずっと枷となってしまって、それとの戦いになってくると思うんです。シリーズがヒットしたプレッシャーを感じながらずっとやってきていると思うし、たぶん、これから先も重圧となるし、また逆に彼の俳優としてのパワーにもなると思います。ヒット作があるっていうことはすごく怖いことでもあって、それをこれから噛みしめてやっていくんだろうなっていうような感じはすごくしますよね。

本当に現場では、剣心と斎藤のような寡黙な2人なんで、そんなに雑談もせず、撮影の打ち合わせはしますけど、そういったようなことは撮影中に話すことはなかったですけど、彼を見ていてそういうふうに思いますね。

聞いてみたいことは、(役者として)ここからどっち側に振っていくのか? どっち側の役をやっていくのか? 同じことをずっとやり続けるのか、真逆なこと、例えばコメディなんかをやりたいって思うのか…今度はこれ(『るろうに剣心』のヒットのイメージ)を壊していく作業になっていくと思うので、そこで出てくる彼の表現は、とてつもないエネルギーを持っていると思うから、とても楽しみに、影響されながら見ていきたいなと思いますね。


——最後に改めてご自身にとって、映画『るろうに剣心』シリーズ、そして制作チームはどういう存在ですか? このシリーズを通じて江口さんが得たものを教えてください。

10年、ほぼ一緒のスタッフで、『1』がヒットしたら次『2』、『3』とよりハードルを上げていかなきゃならない、もう追っかけっこみたいなことで、さっきの健くんの話じゃないけど、支持されればされるほど、その次はそれを超えていく事への戦いになるわけで…。毎回、全力でやってるんだけど、もっと全力でやらなきゃいけない、っていうことで最後までやってきた仲間なので、どの現場で会っても、そのときのモードになるというか、もう同じ映画作りの戦場を共にした、“戦友”的な感覚ですよね。

そういう意味では、他の作品とはちょっとレベルが違うっていうか、大変さ、時間、制作費、能力、俺たちの熱量っていうものが、普通の作品づくりとはあまりにもかけ離れている『るろうに剣心』独特の熱があるんですよね。

でも結局、みんなこの物語が好きなんでしょうね。この物語が好きで、この物語をどうリアルに現実化させて、どう届けるかっていう。映画を観た人が興奮して、夢にまで出てきちゃったっていう話を聞いたりするんだけど、ただのエンターテイメント、活劇で楽しいよっていうだけじゃなく、こんなふうに生きていた人間が昔はわんさかいたんだよっていうような、武士に対しての憧れみたいなものをもたらした作品なんだなと思います。

でも『求める』ということは、そういうことであって、それは若い子たちにも通じていると思うんですよね。そんなふうに感じてね、楽しんでもらえたらいいなって思います。特にこういう時代ですからね。

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