【インタビュー】赤楚衛二が『ゾン100』を通して得た気づき「人生において何が豊かさにつながるのか」

2023年8月3日(木)7時45分 シネマカフェ

赤楚衛二『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』/photo:You Ishii

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人気漫画「今際の国のアリス」の原作者・麻生羽呂が高田康太郎(作画)と組み、2018年に連載開始した「ゾン100 〜ゾンビになるまでにしたい100のこと」が、Netflix映画として実写化された。

『シン・ゴジラ』(2016)C班の監督を務めた俊英・石田雄介がメガホンを取った本作は、ゾンビパンデミックで混乱に陥った世界で、逆に活力を取り戻していくブラック企業社員・アキラの冒険を描く物語。ディストピアで底抜けに明るく振る舞うという特徴的なキャラクターを任されたのが、飛ぶ鳥を落とす勢いの人気俳優・赤楚衛二だ。

新宿・歌舞伎町や青梅街道にゾンビがあふれかえる世界基準の映像が展開する作品の舞台裏や、大の漫画好きである赤楚さんが語る『ゾン100』のオリジナリティについて、語っていただいた。

発想や見方の転換を教えてくれた『ゾン100』

——赤楚さんのお好きな漫画は「サンクチュアリ」と「ザ・ワールド・イズ・マイン」だそうですね。なかなかハードな2作かと思いますが、いつ頃出合ったのでしょう?

2作品とも20歳過ぎてからです。ただ、ハードな作品は昔から好きでした。元々は少年ジャンプ系の作品を読んでいましたが、小学校6年生のときに「バトル・ロワイアル」の1巻を読んで衝撃を受け、中学時代には漫画喫茶やゲームセンターの漫画コーナーで「ドラゴンヘッド」や「多重人格探偵サイコ」といった大人向けの漫画を読み漁っていました。その中で出合い「本当に面白いし、考えさせられる」と感じたのが「サンクチュアリ」と「ザ・ワールド・イズ・マイン」です。

——筋金入りの漫画好きである赤楚さんが考える、『ゾン100 〜ゾンビになるまでにしたい100のこと』の独自性を教えて下さい。

ゾンビの世界を描いた作品は悲壮感が漂っていて、哀しさや息苦しさを感じさせるものが多いですよね。映画『ゾンビランド』などはちょっとコメディチックになっていますが、『バイオハザード』や『ウォーキング・デッド』『新感染 ファイナル・エクスプレス』など、哀しくてシリアスな話が多いなか、『ゾン100』を読んだときに「ここまではっちゃけている作品は新鮮で滅茶苦茶面白い」と思いました。元々、弟から「面白いよ」と薦められて読んでいた作品だったので、出られると決まったときは嬉しかったです。

ちょうど実写化のお話をいただいたときはコロナ禍で、やりたいことができない鬱屈した状況が続いていて「まさに今の状況が『ゾン100』の世界と似ている」と感じました。本作は「陰鬱になるんじゃなくて、こういう状況でもできること、楽しめることはあるんじゃないか」という発想や見方の転換を教えてくれます。人生において何が大事なのか、豊かさにつながるのかを伝えてくれる作品だと思います。

——おっしゃる通り、漫画「ゾン100」は「どう楽しんで生きるか」がテーマになっていて、アキラたちがお遍路さんに挑戦するエピソードなどもじっくり描かれています。ゾンビものの中でも珍しい作品ですよね。

そうですね。漫画自体に専門的な説明も多くて、読んでいくと知識が増えるのも面白いです。

実写版もハッピーな気持ちになれるエンタメ性が強い作品になると感じていたので、自分自身のアプローチも「全力で楽しむ」を軸に考えていきました。全シチュエーションで思いっきり楽しみ、ブラック企業で死んだ目をして働いているシーンでは、とことんしんどく見えるようにコントラストを付けていきました。つまり、「楽しむ」と「苦しむ」の差を目一杯広げていこうと意識していました。



撮影時から「早く完成版が観たい!」

——漫画「ゾン100」には具体的な地名も頻出しますし、街中がゾンビであふれかえるシーンなども「実写化できるんだろうか」と思っていたのですが、本編を拝見して驚かされました。

新宿の歌舞伎町のシーンはオープンセットで撮影しました。その時点で「すごい」と思いましたが、完成した映像を観たら歌舞伎町のまんまで「どうやって撮ったんだろう」と自分でも感じてしまうくらいびっくりしました。

歌舞伎町のドン・キホーテのシーンも、再現度が凄まじかったです。実際に働いている方がポップを書いてくださって、商品も全てドン・キホーテに陳列されているものをご用意いただきました。あとはやはりゾンビです。台本を読んでいるときは動きが想像できなかったのですが、現場で見たときに「気持ち悪い! 怖い!」となってしまうほどの完成度でした。

石田雄介監督自身がとにかくエネルギッシュでアキラみたいな人ですし、森井輝プロデューサーもそうで、映画好きで情熱的な人ばかりが集まった楽しい現場でした。ライティングや装置一つひとつへのこだわりが強く、目の前のカットをどう撮っていくか丁寧に話し合いもできて、撮影時から「早く完成版が観たい!」と思っていました。

——赤楚さんが提案したアイデアなどはございますか?

基本的に僕は、自分の中に生まれた違和感を解消するためにアイデアを出すことが多いです。

例えばケンチョを助けに行くシーンでは、僕が「シー!(静かに)」と指を立てるシーンがありますが、そうすることで「『ゾン100』のゾンビは目が見えず音に反応する」を改めて説明できるんじゃないかと思ったのと、その前のシーンで僕と柳くんが大声でセリフを喋っているので(そこでゾンビに気づかれないことが)ご都合主義にならないようにしたい、とは話した記憶があります。

プライベートで見たい作品は?

——インタビューの冒頭で漫画について伺いましたが、赤楚さんは普段漫画をどのような時に読んでいますか?

いまは移動時が多いです。小説などは集中しないと読めないので撮影期間中は難しいのですが、漫画はペラペラとページをめくっているうちにどんどん頭に入ってくるからすごいですよね。僕にとっては簡単に現実逃避できるツールであり、しんどくならないようにしてくれるものでもあります。

——ご多忙の中で自分自身のペースを保つにも、漫画が効いているのでしょうか。

漫画に救われているところは多々ありますが、それだけではどうしようもないところがあって、まさにいま「どうしましょう」という感じです(苦笑)。ちょうどテレビドラマ「こっち向いてよ向井くん」を撮影中なのですが、会話劇でセリフも多いのでここ2週間くらいはセリフ覚えに追われまくっているんです。

僕自身、セリフを覚えるのがあまり得意じゃないので前もってしっかり準備していく必要があるのですが、「ペンディングトレイン—8時23分、明日 君と」がクランクアップした直後にこちらの撮影が始まったので、なかなか大変で。ただようやく「うわ、ヤバい」と言えるくらいの余裕は持てるようになりました。

——連続してドラマ出演が続いていますもんね。Netflixの「悪霊狩猟団:カウンターズ」がお好きと伺いましたが、いまはなかなか映画やドラマを観ている時間もなさそうですね。

そうですね。僕はできることなら365日動き続けていたいタイプなのでモチベーション自体はずっと高いのですが、ただただセリフ覚えが苦手なぶん心の底から「ドラえもん」の“アンキパン”が欲しい!と思っています(笑)。

ただ、何かしら息抜きの場所は持っていたいとも思うので、ちょっと余裕ができたら観たい作品を探すところから始めたいです。最近の作品だと、公開したばかりの『君たちはどう生きるか』は気になっています!

【赤楚衛二】スタイリスト:壽村 太一/ヘアメイク:廣瀬瑠美

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