直径30cmの丸い「スイッチ」を押して26年ぶりの日本一 横浜DeNAが導入した“メンタルコーチ”の実力と意外な効果

2024年11月10日(日)8時0分 文春オンライン

 ソフトバンクを下し、26年ぶりに日本一に輝いたDeNA。セ・リーグ3位からの「下剋上」となったが、陰の立役者とされるのが、「メンタルスキルコーチ」の肩書きを持つ遠藤拓哉氏(37)だ。


 DeNAでは三浦大輔監督(50)が就任2年目だった2022年から、日本スポーツ心理学会の有資格者が「メンタルコーチ」を務める制度を導入。そこで招へいされたのが遠藤氏だった。



26年ぶりの日本一を獲得したベイスターズ ©時事通信社


「東京五輪ではソフトボール女子日本代表のメンタルコーチとして金メダル獲得に貢献した人物です。宇津木麗華ヘッドコーチからも絶大な信頼を得ていました。DeNA入団は、プロ野球界にも人脈がある宇津木氏の後押しもあったそうです」(球団関係者)


「選手も当初は『どこまで本音で話したらいいのか』と悩んでいた」


 じつはメジャーでは「メンタルコーチ」は珍しくないが、日本プロ野球界でこの肩書きのコーチがベンチに常駐するのは異例。


「選手も当初は『どこまで本音で話したらいいのか』と悩んでいた」(同前)


 ギクシャクした雰囲気を変えたのは三浦監督だった。


「遠藤氏は三浦監督に、会見で前向きなコメントをするように助言した。それは、メディアを通してコメントに触れる選手たちへの影響まで計算した上でのことでした。こうした助言もあって三浦監督が信頼を寄せるようになり、徐々に選手たちも心を開くようになった」(同前)


思考法や不眠、果てはプライベートの相談まで…


 昨季は10勝をあげたものの、精神的に波があったトレバー・バウアー投手のメンタルケアにも苦心。


「今季、プロ4年目ながら主将を任せられた牧秀悟内野手にも、重圧をコントロールする方法を助言している。牧も遠藤氏を頼りにしています。他の選手たちにとっても、調子を落としたときの思考法や不眠、果てはプライベートの相談まで、今やグラウンド内外の悩み事を解決する“駆け込み寺”的な存在になった」(同前)


 そんな遠藤氏には秘密兵器がある。直径30センチほどの丸い形状の「スイッチ」。ベンチ前のドアなどに設置されている。


「選手たちの心を切り替えるために設置されたもので、スイッチを押すことで『感情の浮き沈みを引きずったままグラウンドに入らない』という心理学的アプローチなのだそう。選手たちはことあるごとに、このスイッチを押しています。日本シリーズで対戦したソフトバンクの選手たちからも『短期決戦はメンタル勝負の場。フォローする人がいるのはデカい』と羨ましがられました」(球団OB)


 次は四半世紀ぶりのリーグ制覇へスイッチオン?


(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年11月14日号)

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