「幻の城」安土城、天守閣近くに「重要人物の建物」か…令和の大調査で「破城」の可能性も浮上
2024年12月18日(水)13時57分 読売新聞
滋賀県は17日、特別史跡・安土城跡(近江八幡市、東近江市)の発掘調査で、天主(天守)跡に近接した場所から建物の遺構が見つかったと発表した。建物の礎石は天主の礎石と同程度の大きさがあり、構造や用途は不明だが、天主直下に建てられていたことなどから、専門家は「重要人物の建物と推定される」としている。(林華代)
安土城は、織田信長が天下統一の拠点とした城で1579年に天主が完成。82年の「本能寺の変」後に焼失した。史料がほとんどなく、「幻の城」と呼ばれる。
県は昨年度、20年計画の「令和の大調査」に着手。天主台北東から人為的に壊されたとみられる石垣が約10メートルにわたって発見され、城を破壊する「破城」が行われた可能性があることがわかった。今年度は調査範囲を南北に広げ、実施した。
県によると、建物の遺構が見つかったのは、天主台東側の平たん地で、天主地下1階部分より約6メートル低く、本丸より約4メートル高い位置にある。東西方向、南北方向に建物の礎石の列や礎石を抜き取った跡が確認された。礎石には火災の痕跡もあった。建物の規模は東西約7メートル、南北約14・5メートルと推定され、建物南側には土塀の基礎とみられる石列も見つかった。
遺構から建物の用途を示すものは発見されていないが、礎石の柱間寸法などから間取りを考える手がかりになるという。
調査結果に小和田哲男・静岡大名誉教授(日本史)は「礎石は天主の礎石とほぼ同じ大きさで、それなりの重要な建物だったと推定される。(場所が)天主直下ということもあり、重要人物の建物と推定される」との評価を県に寄せた。
今年度の調査では、このほか人為的に壊されたとみられる天主台の石垣が2か所で計約20メートルにわたって確認された。
一般向けの公開は22日午前10時〜午後3時に行われる。申し込み不要。無料だが、安土山入山料(大人700円、小中高校生200円)が必要。問い合わせは県文化財保護課安土城・城郭調査係(077・528・4678)。