『枯れ葉』出演ユッシ・ヴァタネンが明かす、カウリスマキ流演出

2023年12月21日(木)16時0分 シネマカフェ

『枯れ葉』オフショット© Sputnik

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アキ・カウリスマキ監督最新作『枯れ葉』より主人公の一人を演じたユッシ・ヴァタネンが本作について語るインタビュー、新場面写真とオフショットが解禁された。

アキ・カウリスマキ監督最新作にして復帰作となる本作は、孤独を抱えながら生きる男女が、人生で最初で最後のかけがえのないパートナーを見つけようとする心優しいラブストーリー。この度、主演に抜擢されたユッシ・ヴァタネンがカウリスマキの演出、撮影秘話について明かすインタビューが到着。

カウリスマキ監督と初めて会った時のことについて、「当時はまだ脚本がなく、どんな物語かということだけ聞いていました。完成した脚本を読んだのはそれから1年くらい後でしたね。脚本が出来てから、アキからはアルマと二人で準備をするように言われて、監督はいなかったんです。おそらくアキは直前まで私たちの邪魔をしたくなかったのでしょう。一応、直前に一度脚本の読み合わせはしましたがそれだけで、演技指導のようなものは特にありませんでした」とふり返る。

先日、来日した際にアンサ役のアルマ・ポウスティはカウリスマキ監督の脚本は詩的だったと明かしていたが、ユッシは「キャラクターに関しては脚本にかなり詳細に書いてありました。例えばどんな表情でとか、どんな外見で性格かなど、細かく指示があったんです。カラオケに行く前に、着替えて鏡を見るシーンがあります。そこなどは『奇跡を期待するようなシーン』であるということが書いてあって、『何か奇跡が起こることを期待させる目つきや顔つき』といった、詳細な指示が書かれていたのです」と教えてくれた。

自身の演じたホラッパ役について、「ホラッパはとてもシャイで、孤独な人です。彼の人生は仕事と、漫画を読んだりして一人でいる時間、そして酒で満たされています。ある意味でタフな人です」と考えを述べ、「小さな閉じた世界を築いていましたが、アンサに出会って、今まで個の中に閉じ込めていたものをどこまでオープンにできるか、自分が変われるか、個の世界から踏み出す勇気があるかが問われてきます。ホラッパにとって愛というものは危険でかつ怖いものであり、愛によって酷いことも起きかねない。でもそこから踏み出していく役どころだと捉えました」とアンサとの出会いを通じて変化していくホラッパの心境についても明かす。

続けて、「ホラッパはもう子供でも若くもなく、人生の中で挫折もあったと思うんです。だから愛へ踏み出すには、ひとつやってやろうという勇気がいるんです。それは人として誰もが分かる、共感を感じられる人間的な部分だと思いました」と役柄への愛着を語った。

また、「アキの書く言葉はとても面白くて、ある意味、繊細で上質な言葉でありながら、その中にジョークが含まれているのが特徴的です。ホラッパという役柄はとても真剣で真面目でありながら、内側に大きな感情を秘めている、それを演じることは大きな挑戦でした。例えば、とても楽しくふざけたようなことでも、同時に真面目で真剣でなければいけない。つまりコミカルさと、陰鬱なまでの真面目さというある意味対極なものを同時に表現しなければならないのです。それはこの作品に参加して学んだことでもありました」と撮影時をふり返る。

カウリスマキ史上最高のラブストーリー『枯れ葉』は、ヒロインの圧倒的な存在感など随所に新しさを感じさせながら、お馴染みのとぼけたユーモアや抜群の音楽センスにもさらに磨きのかかった、いわばカウリスマキの集大成ともいえる作品だが、ユッシが本作の中で特にお気に入りのセリフは、「アンサがフオタリのカラオケの歌を褒めるというシーンで『正直な言葉を聞けるなんて珍しい』と言うのと、あとカラオケに誘われたホラッパが『タフ男は歌わない』っていうフレーズが面白くて。それは日常でも使うようになりました」とのこと。

本作がカンヌをはじめ各国の映画祭や劇場公開されていることを受け、「大学を出てから18年で色々な役柄をやりましたが、良い意味でこんなに楽で、誰もに愛されて、感想や反応も良く、感動したと言ってもらえるのは初めてです。どういう時代にどう生きていくかを、主人公を通じて自分のものとして観客が感じ取れる、シンパシーとともに受け入れられることの意味は大きいと思います。とても人間的な感情がある映画なので、みんなが自分のこととして感じることができるのではないでしょうか。この映画の持っているユーモアが、文化が全く違う国でも受け入れられるのが面白く、本当にすごいことだと思います」と胸の内を明かしてくれた。

併せて新たに解禁された場面写真はユッシ演じるホラッパとアンサが理不尽な状況に置かれて立ち尽くす姿や徐々にお互いを知り、距離を縮めていく様子、そして、ケガをして頭に包帯を巻いているホラッパが収められている。カウリスマキ作品ならではの可笑しみと切実さに満ち、これまでと同様、貧しい市民の悲喜劇を厳しくもユーモアに描くカウリスマキらしさが伝わってくる。

また、割れた鏡にカウリスマキ監督と2人で映り込んだオフショット写真も解禁。撮影現場では、カウリスマキ監督、アルマ・ポウスティと映画談義に花を咲かせたという。

『枯れ葉』は全国にて公開中。

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