トランプ氏「米国がガザを長期所有」…「中東のリビエラと呼ばれる場所になる可能性」
2025年2月5日(水)23時0分 読売新聞
【ワシントン=池田慶太】米国のトランプ大統領は4日、イスラエルとイスラム主義組織ハマスの戦闘で荒廃したパレスチナ自治区ガザを米国が「長期的に所有」し、再建させる意向を表明した。ガザの全住民を域外に移住させ、経済開発を進める構想も打ち出した。米国のガザに対する立場を根本から覆すもので、トランプ氏の一方的な計画は波紋を広げている。
トランプ氏は、ホワイトハウスでイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談後、共同記者会見に臨み、「米国はガザを引き継ぐ。ガザを所有し、責任を持ってそこにある危険な不発弾や兵器を取り除く」と述べた。トランプ氏はガザを「可能性を秘めた土地」と表現し、「我々はガザで雇用と住居を無制限に供給する経済開発を行う」との考えを示した。米政府高官はガザの再建に10〜15年かかるとみている。
トランプ氏は、ハマスによるガザ統治を念頭に「歴史を繰り返すことはできない」と述べ、米国が管理する意義を強調した。「米国が長期的に所有することが中東全体に大きな安定をもたらす」とも主張した。治安維持のため、米軍を派遣する可能性を問われたトランプ氏は「必要なことは行う」と否定しなかった。
トランプ氏はガザについて「何十年にもわたって死と破壊の象徴だった」と語り、住民全員が域外への再定住を希望していると一方的に主張した。中東地域の豊かな国々が移住費用を負担すべきだと訴え、移住先については「複数の場所になるかもしれないし、一つの大きな場所になるかもしれない」と述べた。
トランプ氏はヨルダンやエジプトが住民の受け入れで協力するとの見解を改めて示したが、ヨルダンなどは拒否する考えを明らかにしている。トランプ氏の提案にネタニヤフ氏は「中東を再形成し、平和をもたらすような考え方だ」と賛意を示した。
イスラエルとパレスチナが共存する「2国家解決」を否定するのかという記者団の質問に対し、トランプ氏は「1国家でも2国家でもなく、人々に生きる機会を与えたいだけだ」と述べるにとどめた。
イスラエルとハマスは1月19日に発効した3段階の停戦合意に基づき、現在は42日間(6週間)停戦する第1段階にある。トランプ氏は「停戦が流血を終わらせ、永続的な平和の始まりとなることを期待する」と述べ、第2段階で想定する恒久停戦の実現を促した。
◆ガザ=イスラエルやエジプトと接する地中海に面した地域。面積は福岡市と同程度の365平方キロ・メートルで、約210万人が住む。1948年の第1次中東戦争でエジプトが支配し、67年の第3次中東戦争でイスラエルが占領下に置いた。93年のオスロ合意に基づき、翌年からパレスチナ人の自治が始まった。2007年以降はハマスが実効支配し、イスラエルが完全封鎖した。
4日にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と共同記者会見したトランプ米大統領の主な発言は以下の通り。
【冒頭】
ガザは何十年にもわたって死と破壊の象徴だった。我々はガザにいる人々が居住可能な場所を人道的な心を持つ国々に建設するべきだ。費用は近隣の裕福な国々が負担できるだろう。快適で平和に暮らせるなら、複数の場所でも一つの大きな場所でも良い。パレスチナ人がガザに戻りたいと望む唯一の理由は、ほかに選択肢がないからだ。
米国はガザを引き継ぎ、仕事をする。ガザを所有し、責任を持ってそこにある危険な不発弾や兵器を取り除く。土地を平らにし、倒壊した建物を撤去する。経済を発展させ、地域の人のために無数の雇用と住宅を生み出す。(ガザを巡るイスラエルとハマスの)停戦が流血と殺し合いに終止符を打ち、永続的な平和の始まりとなることを期待している。
【質疑】
——ガザに米軍を派遣するのか。
必要なことは行う。
——恒久的な占有になるのか。
長期的な所有を見据えている。中東全体に安定をもたらすだろう。私が話をした誰もがこのアイデアを気に入っている。軽率に決めたことではない。
——2国家共存は支持しないのか。
二つの国家とか、一つの国家とかいう話ではない。我々は人々の人生に機会を与えたい。私の提案に従えば、偉大な平和がもたらされる。イスラエルのためだけではなく、中東全ての人のためだ。歴史から学ぶ必要がある。同じ過ちを繰り返すわけにはいかない。
——復興後のガザには誰が住むのか。
世界中の人々だ。パレスチナ人も住むだろう。「中東のリビエラ」と言われるような素晴らしい場所になる可能性を秘めている。