若者の「語彙力不足」の原因とは?―中国

2024年3月4日(月)17時30分 Record China

中国では今年の春節期間中、多くの若者が親戚や友達と会っても何を話していいのか分からず、新年のあいさつはコピペで済ませたといったように、自分の「語彙力不足」を感じていた。写真は南京駅。

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春節(旧正月、今年は2月10日)期間に家族で集まった際、00後(2000年以降生まれ)の李思超(リー・スーチャオ)さんは家族からみんなにあいさつするように言われた際、たちまち頭が真っ白になってしまい、言いたいことはたくさんあったにもかかわらず、しどろもどろになり、うまく言葉にならなかったという。中国青年報が伝えた。



李思超さんのケースは決して特別ではなく、今年の春節期間中、多くの若者が親戚や友達と会っても何を話していいのか分からず、新年のあいさつはコピペで済ませたといったように、自分の「語彙力不足」を感じていた。



暨南大学・中国語学科の鄭煥[金リ](ジョン・ホワンジャオ)准教授は、「一部の若者の言語化能力と文章力が低下していることは、インターネット時代特有のネット用語やステッカーなどを使わないとうまく言語化や文章にできない『文字失語』という現実的な問題を反映していると言える。インターネット技術により、生活はより便利になったが、人々の思考パターンや価値観、表現方法などにおいても大きな影響が出ている」との見方を示した。



若者の47.1%が「語彙力が乏しく、表現方法がワンパターン」



北京市に住む95後(1995〜99年生まれ)の張然(ジャン・ラン)さんは、就職して初めての業務報告で発表をした時のことが忘れられないという。事前にきちんと準備をしていたにもかかわらず、実際に発表する時になって頭が真っ白になってしまい、その考えをきちんと言葉で表現することができなかったからだ。



浙江省杭州市で働く90後(1990年代生まれ)の劉源(リウ・ユエン)さんは、「自分の言語化能力が低下しているだけでなく、文章力も低下した。業務上、文章を書いて提出しなければいけない時があるが、毎回なかなか書きあげることができず、時間がかかってしまう」と話す。



調査では、回答した若者の53.3%が「ここ数年、言語化能力と文章力が低下した」とし、47.1%が「語彙数が乏しく、表現方法がワンパターン」、43.2%が「手書きする機会が減った」、41.5%が「自分の考えをうまく表現する言葉が見つからなかったことがある」と答えた。



「言葉の欠乏は精神的な欠乏が原因」



劉さんは、「スマホが生活の一部になり、ネット上で交流することがどんどん習慣化している。それに、メッセージやステッカーを送ることがほとんどで、電話さえかけることはあまりないので、会話して交流する機会も減った。インターネットがこれまでの会話や字を書くスタイルを変えたほか、入力方法もとても簡単になっている。例えば、詩の一句を書こうとした場合、これまでなら全てのフレーズを暗記していなければ入力できなかったが、今は予測入力のおかげで、最初の数文字を入力しただけで、残り全てが表示される。インターネット技術が進歩して便利になったが、何かを覚えたり、考えたりすることが少なくなってしまった」と話した。



「語彙力不足」が生じている原因について、調査では「読書量の少なさによる表現力の低下」が最多で54.0%だった。以下、「ネット用語やステッカーへの過度な依存による創造力の欠乏」(53.0%)、「断片化された情報の閲覧が整合性のある思考を難しくしている」(52.1%)と続いた。また、「オフラインで顔と顔を合わせて会話・交流する機会の減少」(47.6%)、「『短く、簡単で、素早い』表現方法の流行」(34.4%)、「生活のリズムが速く、じっくり考える時間がない」(33.1%)、「誰かと交流したいという意欲が低下し、自分の気持ちを話したいとは思わない」(17.6%)などもあった。



鄭准教授は、「一部の若者は、現実の生活において孤独を感じたり、自分は『コミュ障』であると感じたりしているため、バーチャル世界での交流に一層のめり込む傾向が見られる。オンラインでは、ネット上で流行しているフレーズや用語、ステッカーなどが若者にとって共通の言語となっている。しかし、このようなスタイルは規範的で、論理的、きちんと文章化された表現方法にとって逆風となり、さらには言語化能力に必要となる思考パターンにも大きな影響を与えている。そして、若者の精神世界の深さと幅広さにも一定の影響を与えている」との見方を示した。



「表現力」を取り戻すにはどうしたらいいのか



最初の業務報告の発表でしどろもどろになってしまったことで、自身の表現力を高めなければいけないと思うようになった張さんは、報告が必要な時は毎回、スラスラと話せるようになるまで事前に何度も練習するようになったといい、「普段から仕事に関係のある本を読んで、専門知識を蓄積している。そうすることで、より専門的に、自信をもって話すことができるから」としている。



李さんは、「書面と口頭での表現方法は全く異なるので、読書量を増やすだけでなく、人との交流も増やしている。相手が理解できるように表現する能力はとても重要だと思う」と話す。



劉さんは、「インターネット時代において、自分で考えることはとても重要。普段の生活において、社会ニュースに注目し、話題になっているニュースはその情報を集め、その原因と結果を調べ、論理的に思考する能力と理性的に言語化する能力を高めるようにしている」と話す。



調査では、「語彙力不足」への対処方法について、回答した若者の58.4%が「読書量を増やし、自分の知識レベルを向上」、57.5%が「自分で考えることを重視し、論理的な思考能力を向上」、55.7%が「断片化された情報や、手早く必要な情報だけを手に入れる習慣を改める」と答えた。また、「オフラインでの顔と顔を合わせる交流を増やし、表現スキルを向上」(46.9%)、「表現力に関する教育を重視し、表現力を向上」(39.5%)、「ネット流行語をよく考えて使用するようにする」(20.3%)などの回答もあった。



鄭准教授は、「若者が『語彙力不足』から抜け出すためのサポートとしては、インターネットの言語環境を改善することから始める必要がある。まず、ネット上のコンテンツのクオリティーを高めること。特に使用言語の正確さと多様さ、美しさを強化し、クオリティーに優れた新たな人的・文化的コンテンツの名作を作り上げる必要がある。また、各種インターネットメディアが言葉や文字による表現を規範化し、文化や審美眼の面でリードする責任を果たすよう導いていく必要がある。さらに学校や家庭は、青少年が人的・文化的名作を読むことを一層重視し、若い世代の表現力と思考力を高めていく必要がある」との見方を示した。(提供/人民網日本語版・編集/KN)

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