経済制裁が量産する、北朝鮮「巨大風俗街」の悲劇

2018年3月1日(木)11時38分 デイリーNKジャパン


韓国の政府系シンクタンク・韓国開発研究院(KDI)が2月28日に発表した報告書で、国際社会による経済制裁の影響で、北朝鮮経済が委縮する可能性が高まっていると指摘している。


北朝鮮経済の弱体化は、もとより国際社会の意図するところだ。これにより核・ミサイル開発の余力がそがれるならば、世界の安全保障に資するものと言える。


一方で気になるのは、報告書に次のような指摘があることだ。


「2018年は生産と貿易、消費などがさらに停滞する可能性がある。場合によっては市場活動といった非公式な経済部門までが停滞し、住民の厚生が大きく後退する可能性がある」


経済制裁のターゲットは金正恩党委員長の独裁体制であって、北朝鮮の庶民ではない。しかし、民主主義がまるで存在しない北朝鮮においては、経済制裁は庶民をより強く締め上げ、独裁体制には相対的に小さな影響しか与えない可能性が高い。


最も気になるのは、食糧事情だ。北朝鮮の食糧事情は、かつてと比べ大きく改善している。制裁の影響がいかに強く表れても、数十万人が餓死した1990年代の大飢饉「苦難の行軍」のような事態は起きないかもしれない。


しかし一部では、すでに餓死者が出ているとの情報もある。北朝鮮はなし崩し的に市場経済化しており、その過程で貧富の格差が猛烈な勢いで拡大した。市場に食べ物が並んでいても、現金収入がなければそれを買えないのだ。


そのような困窮は、北朝鮮の社会をも変える。「苦難の行軍」のとき、多くの北朝鮮女性が生き延びるため、売春に走らざるを得なかった。


それはその後、社会に定着し、中国との国境都市である新義州(シニジュ)には、客を引く女性が200〜300人もいる巨大風俗街が出現しているという。


そして、そうした女性の多くは、まん延する覚せい剤に毒されて悲惨な末路を辿るのだ。


経済制裁に本来期待される効果のひとつは、対象国の国民をして政権を批判させ、政策の変更を促すことだ。しかし、北朝鮮には言論の自由が存在しない。政権批判などしようものなら殺されてしまう。


それを承知のうえでやみくもに経済制裁を強めることは、本来倒すべき敵の指導部が安全な場所に隠れていることを知りながら、何の罪もない庶民の頭上に爆弾を落とすに等しい。


国際社会は、自らの取り組みがそのような愚行につながらないよう、北朝鮮国内の動向を慎重にモニタリングすべきだろう。

デイリーNKジャパン

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