年利300%の借金に苦しむ北朝鮮の農民

2024年3月15日(金)15時27分 デイリーNKジャパン

朝鮮王朝時代の制度に「長利」というものがあった。生活に行き詰まった者にコメを貸し付けることを意味し、国が行っていた。当初は借りたものに2割を足して返せばよかったが、後には1割に下げられた。しかし、貪官汚吏(腐敗した役人)は様々な名目で利子を追加し、5割増で返すことを要求した。これが各地での民乱(一揆)へと繋がり、国が弱体化していった。


21世紀の北朝鮮にも似たような制度が存在する。「利子米」と呼ばれ、トンジュ(金主、ニューリッチ)が農場や農民に穀物を貸し付けて、収穫後に利子を付けて返すものだ。刑法で高利貸しは禁じられているが、いくら取り締まりが行われてもなくならない。現在も活発に行われている現状を、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。


平安北道(ピョンアンブクト)の龍川(リョンチョン)郡西石里(ソソンリ)では、今月に入ってから利子米を借りる人が増えていると現地の情報筋が伝えた。食べるものもそれを買う現金もない「絶糧世帯」が例年以上に多いのがその理由だ。北朝鮮は、昨年が豊作となり、農民にも収穫物の分配が行われたと宣伝しているが、一体どういうことなのだろう。



利子米は、1990年代後半の未曾有の大飢饉「苦難の行軍」のころに復活したが、春にトウモロコシを50キロ借りると、秋に100キロにして返さなければならないというものだ。年利換算すると300%というとてつもない高金利だ。


2000年代には、春窮の末期に当たる5月から6月にかけて多く行われていた。2010年代に入ってから軍糧米(軍に送る食糧)の割合が増やされたことで、ピークが4月に前倒しになったが、今年は3月から始まったというのだ。


西石里では、昨年の穀物分配が1世帯あたり150キロから200キロにしかならず、2月中旬に絶糧世帯が続出し、穀物を借りる人が増えているというのが情報筋の説明だ。


平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、大穀倉地帯に位置する殷山(ウンサン)郡の梓洞(チェドン)里では3月に入ってから絶糧世帯が増え、一つの作業班20世帯のうち5世帯が利子米を借りていると述べた。来月にはさらに増えそうとのことだ。


金貸しを行っているのは、都市と農村を行き来して商売し、儲けで作業班の名義で製粉所や精米所を建て、トラクターなどの車両を農場の名義で所有している農民だ。


国は、農業に必要な資材を自主的に調達せよとの命令を下し、予算を一切配分していない。農場の幹部はこのような金貸しに製粉所や精米所を運営させ、その収益の一部で資材を購入している。このようなサイクルが定着、拡散し、農民はまずます貧困から抜け出せなくなっている。

デイリーNKジャパン

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