厳重すぎる北朝鮮の国境警備、接近には5機関の承認が必要

2023年3月23日(木)6時1分 デイリーNKジャパン

北朝鮮の社会安全省(警察庁)は2020年8月、国境から1〜2キロの幅の緩衝地帯を設定し、許可なく近づけば人も動物も無条件で銃撃するとの布告を下した。これは、新型コロナウイルスの国内流入防止に神経を尖らせている金正恩総書記の指示に基づくものだ。


2021年1月の朝鮮労働党第8回大会の期間中に、平安北道(ピョンアンブクト)の国境では、脱北または密輸を行おうとした3人が死亡し2人が負傷するなど、銃撃される人が相次いでいた。



元々、北朝鮮で他の地方に移動するには「旅行証」と呼ばれる国内用パスポートが必要になるが、首都・平壌や韓国との軍事境界線付近、中国やロシアとの国境付近に行くには別の許可が必要だった。それに加え、上記の指示により緩衝地帯に近づくにも許可が必要となったが、デイリーNKはその「緩衝地帯出入証」の画像の入手に成功した。


薄いA4サイズの用紙の半ページを使ったもので、名前、生年月日、移動区間、滞在期間、目的、所属、職務が記入されている。おそらく申請者本人が作成した上で、関連機関の許可印を受ける形で発行されたものと思われる。


また、封鎖部隊経由、警備部隊経由、安全機関経由、保衛機関経由、非常防疫師団公認と5つの印鑑が押されている。それぞれ国境警備に投入された朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の爆風軍団、国境警備隊、安全部(警察署)、保衛部(秘密警察)、コロナ対応に当たる防疫機関のものだ。これだけ多くの承認を受ける必要があるということを示す。


なお、この出入証の発行を受けた人物の所属は青年突撃隊(半強制のボランティア建設部隊)、職務は警備員となっている。画像を提供したデイリーNK内部情報筋によると、緩衝地帯で行われた住宅建設工事に動員された突撃隊員のものと思われる。そのため、書類作成は個人が行ったが、許可申請の手続は、突撃隊の担当者がまとめて行ったと思われる。


滞在期間は2022年10月1日から12月31日となっているが、情報筋によると、3カ月に1回の更新が義務付けられているとのことだ。


このような厳しい国境警備は現在も続けられており、脱北者の数は激減している。現在、脱北する人は、主に国境沿いの地域に住む人と思われる。


ただ、国境警備強化のために派遣された、地元としがらみのない爆風軍団も、地域社会との関係ができるにつれ、手心を加えるようになっている。また、元からいた国境警備隊なども、ワイロで融通をきかせるなど以前の状態に戻りつつある。この厳しい国境警備がいつまで続くかはわからない。

デイリーNKジャパン

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