ミャンマー地震、迫る「72時間」に焦り…資機材不足に加え道路や空港損壊・余震で進まぬ救出活動

2025年3月31日(月)6時32分 読売新聞

30日、ミャンマー中部マンダレーの建物倒壊現場で捜索する救助隊員=ロイター

 【バンコク=竹内駿平、水野哲也】ミャンマーで発生した地震から3日目となった30日、隣国タイのバンコクで建設中の高層ビルが倒壊した現場では、依然として約80人が行方不明のままだ。ミャンマーでは資機材の不足や余震が救出活動を難しくしている。生存率が急激に低下するとされる「発生から72時間」が近づき、救出活動は時間との闘いになっている。

生体反応「希望はある」

 バンコクの倒壊現場では30日、時折雨が降る中、がれきの隙間から救助犬を投入したり、クレーンでつり下げたゴンドラ内から内部を確認したりして、懸命の捜索活動が続いた。

 母(61)と妹(29)が巻き込まれたというチャンペン・ケェオノイさん(39)は、2人がビルの1階部分にいたと同僚から聞かされた。救助隊は、付近から生体反応を確認したという。「母は弱っているが、おそらく生きている。希望はある」と声を振り絞った。

 ただ、救助活動は3日目に入り、現場で見守る家族らに焦燥感も漂う。30日午後には、1人の遺体が運び出された。高層階にいた妹(40)と連絡が取れないというソムブーン・パーパンさん(44)は「妹は2日間飲まず食わずだ。すでに葬儀の準備をしている」と肩を落とした。

 ミャンマーでは中国やインド、タイなど海外からの救援部隊や資材が到着し始めている。ただ、被害の規模に対して人員も資機材も不足している。道路の崩壊や空港の閉鎖、通信障害などが重なり、被災地に救助の手が届きにくい状況だ。

 「車のタイヤ交換用ジャッキしか持っていない。がれきに穴を開けるドリル、鉄筋を切断する工具、重機が欲しい。救助要請があっても、一部しか対応できない」。マンダレーの倒壊現場で活動する救助団体の関係者(30)は訴えた。

 各地の病院は被災者であふれているが、病院自体が損壊したり、医薬品が不足したりしている。大きな被害を受けた首都ネピドーの病院でボランティアをしているゾー・ウィン・カイさん(52)は、「あまりにも患者が多すぎる。病院も損壊して電気も水もない。わずかな医師しかいないため、重篤な人だけに対応し、それ以外の人は対応できない。大混乱だ」と話した。

 余震も救助活動の妨げになっている。米地質調査所(USGS)によると、30日午後もマンダレー近郊でマグニチュード(M)5・1の余震が発生した。

 外務省は30日、ミャンマー中部を震源とする地震を受け、現地の被災状況などを確認するための調査チームを派遣すると発表した。緊急援助隊の派遣検討に向けた調整を行う。

手術中手動で人工呼吸 現地支援の日本人医師「病院復旧には時間」

 震源地近くの病院で医療支援に取り組んできたNPO法人「ジャパンハート」創設者で小児外科が専門の吉岡秀人医師(59)=写真=が30日、読売新聞のオンライン取材に応じた。内戦の影響で脆弱ぜいじゃくになっている医療体制が地震の被害を受けている状況を語り、支援の必要性を訴えた。

 マンダレー中心部から南西約10キロにある「ワッチェ慈善病院」。28日午後、吉岡医師は電話中に「ドーン」という轟音ごうおんとともに激しい揺れに見舞われた。内戦下のため近くで衝突が起きたのかと思ったが、一向に収まらない揺れで、やっと地震だと理解した。

 吉岡医師は月に1度、現地に1週間ほど滞在し、同病院の医師に手術方法などを伝える活動をしてきた。

 この日は、病院で若い女性患者が手術を受けているさなか。道具は床に散乱し、内壁がはがれ落ちていた。女性は全身麻酔中で動くことも自発呼吸もできないため、スタッフが手動で人工呼吸をほどこしながら、病院の外へ運び出した。

 病棟の1棟は崩れ落ちたが、当時入院中だった患者約40人は間一髪で屋外に避難し無事だった。患者は帰宅させ、病院が復旧し次第、再び来院してもらう予定だが、吉岡医師は「環境が整うまでにはしばらく時間がかかるだろう」と語る。

 吉岡医師によると、ミャンマー国内は、内戦の影響で医療従事者が国外に避難し、限られた医療機関しか機能していないが、地震で壊滅的な被害を受けているとみられる。気温は40度近くで感染症対策も必要になるが、道路や橋は通行止めとなり、医療物資が足りなくなる恐れもある。

 国際的な支援が不可欠で、ジャパンハートも現地スタッフらが巡回診療を行うとともに、病院復旧に向け支援を募る方針だ。現在はヤンゴンに滞在している吉岡医師は「天災は防げなくとも、その後の犠牲を食い止めるのが私たちの仕事。日本の人たちへも協力をあおぎ、今できることをやり抜きたい」と話した。(杉本和真)

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