まるで皇帝にひれ伏す外国使節、習近平と会談したブリンケンが腰砕け

2023年6月20日(火)17時0分 JBpress

 まさに、謁見する皇帝様と、傅(かしず)く外国使節の構図だった——。

 会うのか、会わないのか、と二転三転した習近平主席とアントニー・ブリンケン米国務長官の会談は、6月19日午後に、わずか30分だけ実現した。


習近平の独演会を拝聴する米国務長官

 最初の写真撮影の握手姿では、習主席はぶんむくれた表情で、笑顔もない。そして撮影が終わると、向かって右手から係員の男性がサッと駆けつけ、習主席が座る中央の「皇帝席」の椅子を恭しく引いた。

 無表情でどかっと座る習主席。ブリンケン国務長官はと言えば、向かって左手の下がった「臣下席」に、そそくさと座った。

 そこから、習近平主席の「独演会」が始まった。ブリンケン国務長官は、両手を膝に置いたまま、畏(かしこ)まって聞いている。


「悪いのはあなたたち、あなたたちが改めよ」

「世界は発展し、時代は変化している。世界には、総体的に安定した中米関係が必要だ。中米両国の成否がそのまま、人類の運命の前途に関わってくるのだ。

 広大な地球には、中米の各自の発展と共同の繁栄を完全に受け入れられる。中国の人民とアメリカの人民は同じだ。どちらも自尊・自信・自強の人民だ。いずれもよりよい生活を追求する権利を有する。両国間に存在する共同の利益は重視されねばならず、各自が得た成功は相手にとってすべて機会であって、脅威ではない。

 昨今、国際社会は普遍的に、中米関係の現状を懸念している。両国が衝突、対抗するのを見たがらず、角突き合わすのを望んでいない。中米が平和的に共存し、友好的に協力することを待ち望んでいるのだ。

 両国は、歴史・人民・世界に対して責任を持つ態度に基づき、中米関係をうまく処理しなければならない。そうして全世界の平和と発展に貢献し、乱雑に交錯する世界に安定性、確定性、建設性をもたらすのだ。

 大国間の競争は、時代の潮流に合致しない。ましてや、アメリカ自身の問題と世界が直面する挑戦を解決できない。中国はアメリカの利益を尊重し、挑戦したりアメリカに取って代わったりしない。同様にアメリカも、中国を尊重し、中国の正当な権益を損害してはならない。

 中国は終始、中米関係が健全で安定したものになることを希望している。二つの大国が万難を排して、相互尊重と平和共存、協力共勝の正確に相対する道を模索していくことを信じている。

 アメリカが理性的、実務的な態度を取り、中国と向き合って進み、共同で努力していくことを望む。私がバイデン大統領とバリ島での会談(2022年11月)でなし得たコンセンサスを堅持し、関連した積極的な態度を行動に移し、中米関係を安定し、よきものにしていくことを願う」

 以上である。つまり「皇帝様」は、「自分は悪くない、何も変えない、悪いのはあなただ、あなたたちが改めよ」と、外国使節に迫ったのである。


中国国内ではトップニュースにもならず

 これに対し、中国側の報道によれば、ブリンケン国務長官はこう答えた。

「バイデン大統領から習主席に、よろしくとのことでした。バイデン大統領は、米中両国が責任と義務をもって双方の関係をうまく管理していけると信じています。そうすることは、アメリカ、中国ないしは世界の利益に合致します。

 アメリカは力を尽くし、両国の国家元首がバリ島の会談で確定させた議事日程に立ち返ります。アメリカは、バイデン大統領が行った承諾を遵守します。『新冷戦』を求めず、中国の制度改変を求めず、盟友との関係強化を通じて中国に反対することを求めず、『台湾独立』を支持せず、中国との衝突が発生することを望みません。中国との高官往来の展開を期待し、意思疎通を保持し、意見の相違は責任を持ってコントロールし、対話と交流、協力を求めていきます」

 重ねて言うが、まさに外国使節が皇帝様に傅く構図である。ちなみに、6月19日夜のCCTV(中国中央広播電視総台)のメインニュース番組『新聞聯播』でも、翌20日朝のニュース番組『朝聞天下』でも、この米中会談のニュースは2番目だった。

 トップニュースはと言えば、「中国共産主義青年団第19回全国代表大会が北京の人民大会堂で開幕した」というものだった。約1500人の代表が参加したこの大会には、独仏歴訪中の李強首相を除く、習近平総書記以下、党中央政治局常務委員6人が、全員出席した。

 中国共産主義青年団(共青団)は、共産党の青年組織で、全国のエリート青年7300万人を有する。ここのトップである第一書記には、胡錦濤元総書記、李克強前首相、胡春華前副首相など、錚々たる面々が就いてきた。彼らは「団派」という政治グループを形成し、鄧小平氏が唱えた改革開放政策の実践者たちだった。

 だが、昨年10月の第20回共産党大会で、胡錦濤元総書記は議場から排除され、李克強首相はお役御免になり(実際の退任は今年3月)、胡春華副首相は党中央政治局(トップ24)から排除されてしまった。そうして習近平総書記が、「国内の敵陣の本丸」に、5人の新たな常務委員たちを従えて乗り込んでいったのが、19日午前10時から開かれた共青団の大会だった。

 会場2階には、「習近平新時代の特色ある社会主義思想の指導を受け、第20回共産党大会の精神を全面的に貫徹し、広範な青年たちを動員、引率し、社会主義現代化国家を全面的に建設し、中華民族の偉大なる復興の全面的な推進のため、団結奮闘しよう!」と書かれた横断幕が掲げられていた。そして「皇帝様」は、壇上中央に、会場内を睥睨(へいげい)するかのように鎮座していた。

 こうして午前中に「国内の敵」を制圧したのに続き、午後に「国外の敵」を制圧したことを示したのが、19日の「皇帝様の出来事」だったのだ。ちなみに、翌20日の中国最大の国際紙『環球時報』の社説のタイトルは、「ここからは、アメリカの信用を検証する時だ」。


大事なところで中国と勝負しないバイデン政権

 日本外務省の元最高幹部にコメントを求めると、嘆いて言った。

「バイデン政権は、大事なところで中国と勝負しないから、中国に甘く見られてしまう。中国が妥協しないのならば、9月のニューデリーG20でも、11月のサンフランシスコAPECでも、米中首脳会談をやらないぞと脅せば、恥をかき、困るのは中国側なので、中国は降りてくるに決まっていた。それをのこのこ、国務長官が北京まで出かけていくというのは、愚の骨頂だ」

「トランプの復権が待ち遠しい」

筆者:近藤 大介

JBpress

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