ネッシーを探し出せ、まもなく始まる捜査は大真面目
2023年8月11日(金)6時0分 JBpress
ネッシーは本当にいるのか——。
英スコットランドにあるネス湖には、古くから水の獣である「ネッシー」が生息するといわれてきた。
これまで生け捕りにされたり死体が発見されたことはなく、伝説上の獣との見方も依然として強い。
そんな中、未確認の生物を確認すべく、本格的調査が8月26日と27日に実施されることになった。
今回の調査は1972年にネス湖調査局がネッシーの捜索を行って以来、最大規模になるといわれている。
ネッシーは英語では「ロック・ネス・モンスター(Lock Ness Monster)」と呼ばれ、最古の目撃記録は西暦565年である。
当時の記録はアドムナンという修道士が、「聖コロンバの生涯」という出版物に記したもので、獣の詳細が記されているという。
それ以後、数多くの目撃情報が残されているが、確証のある生存記録はない。
そもそもネッシーが世界的に知名度を上げたのは、1933年にネス湖の西側にあるドラムナドロチットというホテルのマネジャーだったアルディ・マッケイさんが、「水中で鯨のような獣を見た」という証言をしたことによる。
新聞に記事が掲載されたことで一気にネッシーの知名度が高まった。
翌年になると、水面から突き出た頭部の写真が世界的に出回り、ネッシーへの関心はさらに強まった。読者の方も一度は同写真を目にされたことがあるかもしれない。
この写真はロンドンの婦人科医ロバート・ケネス・ウィルソン氏が大衆紙デイリー・メールに投稿したものである。
「医師が撮った写真」として最初は信用されていたが、後年になっておもちゃの潜水艦を水に浮かべて撮った合成写真であることが判明した。
それでも1970年代には市民グループがネス湖現象調査局という団体を組織し、定点カメラを設置してネッシーの調査を始めた。
また別のグループは公式ネッシー目撃記録という組織を作って目撃情報をネット上で公開している。同サイトによると、ここまでの目撃総数は1148件である。
同サイトには今も目撃情報が報告されているが、撮影された画像や動画を見ると、ほとんどが水面に現れた切れ目や航跡、暗い色のコブなどで、はっきりと獣と呼べるだけの記録はほとんどない。
ネス湖は長さが南北に約35キロ、幅は約2キロメートルという非常に細長い湖で、水深は最大で約230メートルほどある。
「ネッシーは恐竜である」とする見立てもあるが、学術的には陸棲の直立歩行をする爬虫類のみが恐竜と定義されるので、ネッシーは恐竜とは呼べない。
海棲の首長竜や魚竜は分類上は恐竜ではない。
2019年には英科学者が湖の水を分析して、獣が生息する証拠を探った。ウナギの遺伝物質(DNA)は発見されたが、サメ、チョウザメ、先史時代の爬虫類等の証拠は見つからなかった。
またネッシーは、これまでの目撃情報などから中生代ジュラ紀前期に生息したプレシオサウルスではないかとの指摘がある。
この首長竜は魚類と爬虫類の中間的生物と言われており、体長は最大で3.5メートル。四肢はパドル状のヒレになっており、オールを漕ぐようにして泳いだとされている。
プレシオサウルスは首長竜としては初期の種で、一時は首長竜がすべてプレシオサウルス属に分類されたこともあり、種の数は90を超えたこともある。
一部のネッシー研究家からは、ネス湖に閉じ込められたプレシオサウルスが世代を超えて進化したのではないかとの見立てもある。
だが、ネス湖が誕生したのは地質学的に新しく、すでに首長竜は絶滅していたことが分かっている。
そのため、プレシオサウルス説は説得力が弱い。
別の仮説もある。プレシオサウルスは約6600万年前に絶滅したが、海だけでなく淡水にも生息していた可能性があるというのだ。
今から約1年前、英国とモロッコの研究者たちが研究発表をしている。
英マンチェスター大学の古生物学者であるディーン・ローマックス氏は、研究チームと共にこれまで12体のプレシオサウルスの化石を発見しており、淡水域に紛れ込んだプレシオサウルスは何頭もいたという。
サハラ砂漠では、1億年前の淡水河川に生息していたプレシオサウルスの化石も発見されており、ネス湖での生息の可能性は捨て切れない。
これは生物が生き残るために新しい環境に適応していくことを示すもので、プレシオサウルスも例外ではなかったのではないかと言われている。
英国在住のネッシー研究家エリドリアン・シャインさんは、すでに50年以上もネッシー研究を継続している。
同氏は怪物説には否定的で、チョウザメ、ヨーロッパナマズ、巨大ウナギの3つの可能性が高いとしている。
その中でも水面や水中でこれまで発見されてきた生物は、巨大ウナギではないかと推測する。
「海で繁殖するはずのウナギがネス湖にとどまり、異常に大きく成長する可能性はあります」
「DNA調査では、小さなウナギがたくさんいても、大きなウナギが数匹いても、同じ結果が出るものです」
シャインさんは、「人々が望む限り、ネス湖にはネッシーが存在するのです」と肯定的な姿勢でいる。
ネス湖エキシビション・センターによると、今回の8月26、27両日に実施される調査では、赤外線サーモグラフィーカメラを搭載したドローンが使用されるだけでなく、水中での音響信号を聴くためのハイドロフォンを使った調査も行われるという。
調査に参加する探検家のアラン・マッケンナさんはBBCニュースに次のように語った。
「2日間の探索は、これまで何世紀にもわたってネッシーを探してきた人たちに新たなインスピレーションを与えてくれることでしょう」
「世界中の人々を魅了してやまないネッシーの核心に、今回は迫れるのではないかと期待しています」
本当にネッシーが発見されれば世界的な大発見になるが、果たしてどういう結果になるだろうか。
筆者:堀田 佳男