大ヒット製品、お手入れしやすい象印「シームレスせん」ボトルが誕生するまで - マイボトル洗浄器にも期待

2024年2月27日(火)18時24分 マイナビニュース

象印マホービンのステンレスボトル「シームレスせん」シリーズは、水筒のせん(栓)とパッキンが一体になった構造が特徴。お手入れのしやすさでも人気です。シームレスせんステンレスマグ新製品の発売にあわせて開催された、メディア向けの「マイボトル生活体験説明会」からお届けします。
実際にハンドルタイプのステンレスマグ「SM-RS50」でお茶を飲みながら説明を聞きました。
SM-RS50を分解すると、パーツはふたと本体のみ。最初に冷たいお茶を注ぎましたが、説明会が終わっても冷たくて美味しいままでした(この日はちょうど汗ばむ陽気)。飲み口はなめらかな曲線で口当たりがやさしく、飲みやすい印象です。今回はお茶を入れましたが、内側にはフッ素コート(ラクリアコート+)を施しているため、汚れが付きにくく、スポーツドリンクを入れてもOKだそうです。
渡された「SM-RS50」のふたを開けてみると、見慣れたパッキンがありません。ふたの裏側についているグレーの部分がパッキンで、一体化しています。
そもそもパッキンとは隙間をふさぐための部品。水筒などでよく見かけるのは、一輪ゴムが太くなったようなパッキンではないでしょうか。パッキンがあることで中に入れた液体が漏れずにすみますが、お手入れのときには外して洗ってまた戻す手間があります。
象印によると、ステンレスボトルが使われるおもな理由は「保冷と保温」。ペットボトル飲料と異なり、温度を比較的長くキープできるほか、何度も繰り返し使えるというメリットもあります。とはいえ、繰り返し使うにはお手入れが欠かせません。いつでも気持ちよく使えるステンレスボトルを作るために、象印は過去からさまざまな製品を発売してきました。
象印マホービン 商品企画部 企画グループの森嶋孝祐さんが言うには、ステンレスボトルの普及が進んだのは2005年ごろから。普及とともに洗いづらさや、きちんと洗えているか不安に感じるという声が聞かれたといいます。
そうした声に応えた製品が、2010年に発売したステンレスボトル。せん部分を簡単に分解できる「パカッと分解せん」を備え、洗いやすさに配慮しました。
「パカッと分解せん」を備えたシリーズが大ヒットしたことで、さらにステンレスボトルの普及が促進されました。すると今度は、使用時にパッキンを付け忘れて「カバンの中に飲みものをこぼしてしまった」「カバンが濡れて携帯電話が壊れた」といった声が増えてきたそう。
そこで解決策として象印が発売したのは2016年のステンレスマグ。パッキンを付けないと組み立てられない「パッキンつけ忘れ防止設計」を導入しました。2018年には、分解せんも採用した製品を発売。ちょうど象印マホービンの100周年イヤーだったこともあって力を入れたそうですが、森嶋さんいわく「全然売れなかった……(苦笑)」とのこと。
パーツ構成が複雑になるほど、パーツ点数が増えて分解と組み立てに手間がかかるようになるもの。マイボトルが定着したことで、自宅には家族の人数分、または1人で複数のボトルを使い分けているケースもあるでしょう。お手入れのしやすさ(洗いやすさ、組み立てやすさ)は重要なんです。
中でも不満が大きかったのは、パッキン。小さい部品なので洗いにくいうえに、紛失したり誤ってシンクの排水口に流してしまったり……といったトラブルが多発しました。そこで開発されたのが「シームレスせん」というわけです。
こうして誕生したシームレスせんシリーズは、利便性と安全性を向上させたことでユーザーの満足度が急上昇。2020年の発売以来。シリーズの累計出荷数(国内)が600万本を超えるヒットにつながりました。
筆者も家族のマイボトルを毎晩洗いますが、パッキンの管理は本当にストレス。これを機にシームレスせん製品に替えようと思います。
○もっと使いやすくするため「マイボトル洗浄機」の実証実験を実施中
マイボトルの普及を進めるめ、象印はさまざまな取り組みを行っています。例えば、ユーザーのマイボトルを預かって洗浄・保管し、注文時に飲料を入れて渡す「象印マイボトルクローク」の実証実験や、セットしてボタンを押せばボトルを1本ずつ約20秒でオゾン水洗浄・除菌する「マイボトル洗浄機」の開発などが挙げられます。今後、マイボトル洗浄機はEXPO2025大阪・関西万博の会場内に設置を予定(10台)しているそうです。
○象印マホービンは1918年から「まほうびん」を販売
ステンレスマグのポイントである「まほうびん構造」は、ステンレスとステンレスが二重になった構造。二重の隙間を真空にすることによって、熱の移動を抑える仕組みです。
さらに、隙間に銅箔やアルミ箔を巻き込み、熱を反射させてボトルの内側に閉じ込めています。今ではステンレスを使って作られていますが、昔はガラスを使っていました。このため、まほうびんを扱う会社の多くは、ガラス産業が栄えていた大阪で創業しているのです。
余談ですが、ガラス素材だった昔のまほうびんは、ぶつけたりすると内側のガラスが割れてしまうことがありました。携帯用の水筒が出先で割れると目も当てられません。中の飲料はもちろん飲めず、水筒から飲料が漏れてきます(編集林、経験者談)。
象印マホービンも大阪創業の1つ。1918年に大阪に「市川兄弟商会」として始まりました。以降、多彩ななまほうびんを世に送り出しています。1981年にはステンレスを使った「タフボーイSTA900」を発売し、以降、携帯用のまほうびんがステンレスに置き替わっていきました。
その後はスリムタイプやコンパクトタイプを続々とリリース。2000年代に入ると、これまでのコップを使って飲むタイプから(ボトルのフタがコップになります)、ステンレスボトルから直接飲むスタイルが定着しました。ここ十数年は、コロナ禍での落ち込みはあったものの、インバウンド需要やマイボトル需要などによって成長が加速しています。
象印マホービンは2008年、創業90周年の記念事業として、まほうびんの歴史を紹介する「まほうびん記念館」を大阪市北区にオープン。まほうびんの進化に関わる歴史などを紹介した常設展示のほか、期間限定の企画展も開催しています。事前予約制となっており、見学希望の場合は来館の前日までに受付が必要です。
伊森ちづる 家電・家電量販店ライター。家電量販店の取材や家電メーカーの取材、家電製品のレビューを中心に活動。売り手、メーカー、ユーザーという3つの視点で家電を多角的に見るのが得意。雑誌、ニュースサイト、ラジオ、シンクタンク、自治体での情報提供など、多方面で活躍中。最近は、テクノロジー×ヘルスケア、テクノロジー×教育などにも関心あり。趣味は音楽鑑賞(クラシック)とピクニック。 この著者の記事一覧はこちら

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