東大、140m以深の潜水でウミガメの心拍数は1分間に2回まで減ることを発見

2024年3月7日(木)17時52分 マイナビニュース

東京大学(東大)は3月6日、潜水能力の高い海生は虫類のアカウミガメ(Caretta caretta)の心拍数が、海面で呼吸する時は1分間に約21回なのに対し、潜水すると急激に低下し1分間に約13回となり、さらに140mよりも深くまで潜った時は1分間にわずか2回にまで低下するなど、深く潜れば潜るほど心拍数がより低くなることを発見したと発表した。
同成果は、東大大学院 農学生命科学研究科の齋藤綾華大学院生、東大 大気海洋研究所(AORI)の坂本健太郎准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、比較動物生理学および生体力学に関する全般を扱う学術誌「Journal of Experimental Biology」に掲載された。
海洋に棲む生き物の中には、クジラやペンギン、ウミガメなど、多種多様な肺呼吸動物が生息しており、それらの動物は息を止めた状態で深く長く潜水することが知られている。こうした、ヒトには真似のできない潜水行動を可能にしている生理的な仕組みを解明することは重要な研究課題だという。
海生ほ乳類や鳥類を対象とした研究から、潜水中の心拍数は、深度や時間、その間の運動の程度によって変化していることが分かっているものの、は虫類(ワニ類、ウミヘビ類、ウミガメ類など)の場合、自然環境下で潜水中の心拍数を測定した研究はこれまで4例しかなかったとする。
ウミガメ類は海を深く潜る唯一のは虫類だが、甲羅があるため心拍数を測定するには体内に電極を埋め込む手術をする必要があった。このような理由からウミガメ類の研究は困難であり、自然環境下で潜水中の心拍数を測定した研究は「オサガメ」の1例しかなく、海生は虫類が深く潜る時の心拍数はほとんど研究がされていなかったという。
そうした中、ウミガメの甲羅に特殊な電極を貼り付けるだけで、手術なしに精密に心拍数を測定可能な、独自のバイオロギング手法の確立に取り組んできたのが研究チームだ。今回の研究では、その手法を用いて、夏の三陸の海で自由に潜水しているアカウミガメの心拍数と潜水行動を計測することにしたという。
アカウミガメは、海で数分から最大63分、深度1mから最大153mの範囲で潜水していることが確認された。いずれの潜水の場合も、潜水を開始して数分以内に心拍数は大幅に低下していたとする。心拍数の平均値が計算されたところ、海面で呼吸するときは1分間に約21回だったのに対し、潜水する時は1分間に約13回となっていた。特に、アカウミガメが140mよりも深く潜った時には、ある程度ストロークして(ヒレをかく動作)泳いでいたにも関わらず、心拍数が1分間に2回という非常に低い値まで急激に低下していることがわかった。また、潜水中の心拍数は海面での呼吸時に比べると、常に低いことも確認された。
次に潜水行動(最大潜水深度・潜水時間・ストローク頻度)や水温が、潜水中の最低心拍数にどれだけ影響しているのか、統計的な分析が行われた。その結果、最大潜水深度が深いほど心拍数がより低くなることが判明。それに対し、ほかの要素は影響がほとんどないか、非常に小さいことが明らかにされた。
海生ほ乳類・鳥類では、深く潜るほど心拍数がより低くなることが知られていたが、今回の研究により、は虫類でも同様の傾向があることが初めてわかった。このことから、潜水時の心拍数の低下は、肺呼吸動物に共通した、深く潜る上での重要な生理的仕組みであることが考えられるとした。
心拍数は、潜水時に低くなることに加え、一般的に体が大きい動物や外温(変温)動物において低いことが知られている。地球上で最体の内温(恒温)動物であるシロナガスクジラの場合、海面では1分間に25〜37回だった心拍数が、潜水すると最低で1分間に2回まで低下する。体の大きな内温性は虫類であるオサガメでは、100mほどまでの潜水時の心拍数は1分間に10〜15回であることが報告されていたが、深度の影響ははっきりしていなかった。
今回の研究により、外温性は虫類であるアカウミガメの心拍数が、アカウミガメの1000倍以上も体重のあるシロナガスクジラに匹敵するほど非常に低い値であることが判明した。研究チームは、外温性は虫類のウミガメが深く潜る時の心拍数が明らかになったことで、肺呼吸動物が海で生きていくための仕組みの理解につながることが期待されるとしている。

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