名大、メダカはメスもオスもまず卵を作る準備をすることを発見

2024年3月14日(木)16時56分 マイナビニュース

名古屋大学(名大)は3月13日、メダカを用いて卵の極性が作り出される仕組みを分子レベルで明らかにし、メダカの生殖細胞はメダカの性が決定する前から卵になる準備をしていることを明らかにしたと発表した。
同成果は、名大大学院 理学研究科の菊地真理子助教、同・田中実教授、北海道大学大学院 水産科学研究院の西村俊哉助教、京都大学大学院 理学研究科の森和俊教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、発生生物学に関する全般を扱う学術誌「Development」に掲載された。
受精卵(胚)から身体が形作られる過程では、細胞が前後、左右、上下の軸(体軸)に沿って秩序よく配置される必要がある。細胞によっては作り出された場所から別の場所へと移動していくこともあり、正確な座標を把握できていないと、生物として誕生できないことになる。3つの体軸のうち前後軸は、卵のもつ極性(細胞内に、空間的・形態的・構造的な非対称性が存在する不均一性のこと)に由来していることが、魚類や両生類の研究から明らかにされている。
生物学や基礎医学研究などの実験動物として、国際的にも「medaka」で通じるほど活用されているメダカは、ヒトと同じで、Y染色体の有無(XX/XY)で性が決定する動物であり(ヒトと同じでYがあるとオス)、メダカの場合Y染色体が働いてオスとなるのは、受精後4日目からだ。
卵あるいは精子は共通の前駆細胞(生殖細胞)から作り出されるが、性が決まる以前は、生殖細胞は卵と精子のどちらにもなれることがわかっている。ただし、生殖細胞が卵に分化するために必要な卵特有の極性はどのようにして獲得されるのかはわかっていなかった。そこで研究チームは今回、生殖細胞が卵と精子に運命付けられるタイミングを詳しく調べることにしたという。
詳細な分析の結果、生殖細胞が卵と精子に運命付けられるタイミングで、ヒトを含む真核生物における主要な細胞骨格の1つである「微小管」の動態が大きく変化していることがわかったという。微小管が染色されて調べられたところ、生殖細胞内にドーム状の形をした中空の微小管構造(微小管ドーム)が存在することが明らかにされた。この微小管ドームは、生殖細胞が卵に分化する際には安定して維持されるのに対し、精子に分化する際には消失することもわかったとのこと。さらに微小管ドームは、卵の極性を作り出すのに必要な「バルビアーニボディ」という、細胞内小器官やRNA、タンパク質などで構成される卵特有の細胞内構造の基盤となっていることも突き止められた。
今回の研究により、卵特有の基盤である微小管ドームは、メス(卵)やオス(精子)に決まる前の生殖細胞にすでに存在していることが明らかにされた。この結果は、生殖細胞の性の初期設定はメス型であり、メスもオスも最初は卵を作るための準備をしているという興味深い事象を示唆しているという。同時に今回の研究により、微小管ドームが卵の極性を作り出すプロセスを発生初期に遡って初めて示すことができたとした。また今回の研究は、卵の極性化をもたらす微小管構造が脊椎動物において初めて明らかにされ、体軸形成に関する新たな知見がもたらされた。さらに、生殖細胞が性決定前から卵を作る準備をしていたことは、「性の初期設定はメスか、オスか」という生物学的問いに対して、「初期設定はメス」という1つの見解を示したとしている。

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