実売1万4980円の破格プライス! マグネットで取り付けも簡単 スマホで応対できるドアベルの新モデル「Ring Battery Doorbell」をチェックした
2025年4月10日(木)12時0分 ITmedia PC USER
新モデル「Ring Battery Doorbell」。実売価格は1万4980円だ
日本市場向けに特別な仕様で投入されたこのスマートドアベル、取り付け方法以外では従来モデルとどのような違いがあるのだろうか。メーカーから実機を借用したので、試用レポートをお届けする。
●エントリーモデル「Ring Video Doorbell 4」の後継品
従来、Ringブランドで販売されていたドアベルには、視野角が水平/垂直共に150度と広い上位モデルのRing Battery Doorbell Plusと、エントリーモデルのRing Video Doorbell 4の2種類があった。これらは取り付けに原則ネジ止めが必要だったため、賃貸住宅に居住するユーザーにはハードルが高い製品だった。
今回モデルチェンジしたのは後者のモデルで、日本向けに開発されたマグネット付きの取り付け台が付属しており、ドアや壁面に穴を開ける必要がなく、手軽に設置できる。屋外でのマグネット吸着ということで、脱落しないかは不安に思うところだが、実際にはかなりの強度があり、雨風などでの脱落は考えにくい。
見た目は壁面ネジ止めの従来モデルと変わらないので、ドアベルを持ち去ろうとする発想自体がなかなか思い浮かばないだろう。もちろん従来のネジ止めにも対応しており、取り付け方法の幅が広がったことになる。
セットアップ手順は従来と特に変わっておらず、Ringアプリを用いて本製品を検出した後、設置先や名前を設定することで利用可能になる。この時点では細かい設定はまだ行われておらず、それらは実際に使いながら設定していくことになるが、使い始めるまでのハードルの低さは継承されている。
●バッテリーは交換型ではなく内蔵型を採用
マグネット吸着による、スチール面への設置の流れを見ていこう。手順としては、まずマグネット内蔵のベース部を吸着させ、そこに本体をはめ込む格好になる。詳しくは下記の動画を参照いただきたいが、マグネットはかなり強力で、スチール面に近づけると「バチン」と音がして吸着し、その後は横方向にずらすのも困難だ。
とはいえ、ネジ止めと比べると盗難などに対する脆弱(ぜいじゃく)さは否めない。そこで本製品は盗難に遭った場合、1台に限り無償提供するプログラムを用意している。警察が発行した盗難調書のコピーを盗難から15日以内に提出する必要があるなど相応の手間はかかるが、無料で交換品が用意されるというのは確かに魅力だ。
もっとも、盗難に遭ってから警察に届けを出して書類をそろえて申請し、無料交換品を受け取るまでには相応の日数がかかると予想され、その期間ずっとドアベルなしですごすのは考えにくい。現実的には代替品を買わざるを得ないだろう。また嫌がらせが目的であれば、同じイタズラが何度も繰り返される恐れがあり、そういった場合に交換プログラムは無力だ。そうした特性は理解しておいた方が良いだろう。
ところで、このマグネット吸着のギミックとも関連するのだが、本製品は従来モデルと大きな相違点がある。それはバッテリーが交換不可能な内蔵型へと変わったことだ。
本製品はその名前が示す通りバッテリー駆動だが、これは交換できることを意味していない。本製品の上位モデルであるRing Battery Doorbell Plusや従来モデルは、他のRing製品と共通規格の交換式バッテリーを採用しており、複数個用意して交換することでダウンタイムをほぼゼロにすることが可能だった。
しかし、本製品は充電をするには本体をベース部から取り外し、屋内に持って入って充電を行う必要がある。そのため、充電を行っている間はドアベルとしての機能は停止してしまう。
この仕組みは競合に当たるGoogleの「Google Nest Doorbell(Battery Type)」でも採用されており、スマートドアベルとしては決して特殊ではないのだが、これまでRingのドアベルといえば、バッテリーを複数用意しておけばダウンタイムなしで運用できるというのが大きなアドバンテージだったので、この仕様は首をひねってしまう。
しかも本製品は従来モデルと外観がそっくりで、その仕組みが廃止されていることが分かりづらく、気づかずに購入してしまう人は確実に出るだろう。筆者が知る限り、製品発表時にこの点に大きく触れたニュースは見当たらず、特に従来のドアベルの利用経験があるユーザーほど勘違いしやすいと思われる。運用方法ががらりと変わるので注意したいところだ。
●同じ「水平/垂直150度」だが視野角は上位モデルより狭い?
続いて機能面を見ていこう。本製品は、上位モデルのRing Battery Doorbell Plusと同様、上下に150度という広い視野角が特徴だ。こうしたことから、ドアベルの足元に置かれた荷物なども画面の片隅に捉えることができる。
これは玄関への置き配を利用する機会が多い人にとっては、またとない機能だ。特にマンションでの利用の場合は、通路の邪魔にならないように、荷物をドアや壁面にギリギリまで寄せて置くことが多いので、この機能は実用性が高い。
ところが、実際に試してみると、画面の視野角はRing Battery Doorbell Plusよりもわずかに狭いようだ。以前のレビューと同じ高さ、同じ配置で同じサイズの荷物を置いたところ、Ring Battery Doorbell Plusではきちんと端が見えていたのが、本製品ではギリギリ映らない。壁に封筒を立て掛けるような置き方だとあきらめがつくが、奥行き300mm程度の荷物も映らないのは困りものだ。
ちなみに、この画角の広さを生かした荷物の通知機能「荷物アラート」は、モーションを検知したタイミングで荷物検知ゾーンに荷物が置かれているかを判定し、通知を行うとされている。配達員がドアベルの前に立つ→モーション検知が反応→荷物が置かれていれば「荷物アラート」、そうでなければ「人物アラート」になるという流れだ。
つまり荷物がカメラから見えなくとも、少なくとも人物アラートは届くので、タグ付けの不正確ささえ許容すれば、荷物が届いたことは知ることができる。とはいえアラートが届いてライブ映像を見た時、カメラから荷物が見えないのはやはり不便だ。置き配での配達状況を確認したいのであれば、上位モデルのRing Battery Doorbell Plusの方がベターかもしれない。
●ドアベル関連の便利機能も健在
最後に、ドアベル関連の付加機能について見ていこう。
まずは「ドアベルコール」だ。スマホで呼び出しを受ける機能で、UIは一般的な電話の着信そっくりで、タップした後の応答画面もビデオ通話のそれなのでなじみやすい。
なお着信時点でライブ映像(つまり訪問者の顔)が表示される場合とされない場合があるようだが、画面がロックされているためか、あるいは機種別の制限なのかは今回の検証でははっきりしなかった。本機能の利用には、Ring Home Standard/Premiumプランが必要となる。
あらかじめ録音されたメッセージで自動応答を行う「スマート応答」機能も搭載している。いうなれば留守電に相当する機能で、訪問者に対して、自ら声が発することなく応対ができるので、未知の訪問客に対して応答するのも容易だ。男性の声で応答することで、女性の一人暮らしがバレないなどの利点もあるだろう。
この機能、従来モデルが発表された時点では日本語に対応していなかったのだが、その後のアップデートで日本語対応を果たし、本製品では出荷時点から日本語での応答が可能になっている。相手の応答を録音する場合は、相手の姿も併せて録画されるので、訪問者の外見などもきちんと確認できる。こちらは利用にはRing Homeプランが必要になる。
この他、マイクとスピーカーを用いた双方向のやり取りや、夜間でも色付きで映像を見られるカラーナイトビジョンなど、基本機能は一通り用意されている。設定画面を細かく見ていくとHDR関連の項目がなくなっているなどの違いはあるが、上位モデルと比べて機能面で大きな違いはないように見える。
またドアベルを押した際に、スマートスピーカーの「Echo Show」など、Alexaを内蔵した端末への通知もスムーズに行える。外出先にいても、ドアベルをした訪問者への応対が行えるのは、一般的なドアベルにはできない芸当だ。
●上位の「Ring Battery Doorbell Plus」とどちらを選ぶ?
以上ざっと見てきたが、基本機能は充実している一方、評価自体はユーザーによって分かれる可能性が高い。まず従来モデルのようなネジ止めがネックで導入に至らなかったユーザーからすると、日本の住宅事情が考慮された本製品は魅力的な選択肢だと考えられる。防水/防じん機能がIP55からIP65へと進化しているのもプラスだ。
一方、前述のようにRingシリーズ共通の交換用バッテリーに対応しておらず、本体を取り外しての充電となるため充電中はドアベルが使えないこと、視野角がわずかながら狭いなどのデメリットは無視できない。ネジ止めでの取り付けで構わなければ、上位のRing Battery Doorbell Plusの方が使い勝手が良いと考えるユーザーも多いだろう。
ただし、Ring Battery Doorbell Plusが2万4980円なのに対して、本製品は1万円も安い1万4980円と極めてリーズナブルで、それを理由に選ばれる可能性はある。本稿執筆前のセールでは1万1800円という安値で販売されたこともあり、ドアベルのスマート化を考えているユーザーにとっては、懐に優しい本製品は有力な候補となるはずだ。
そんな本製品は、従来モデルと同じ、黒とシルバーのツートンである「サテンニッケル」に加えて、黒とブロンズのツートンである「ベネチアンブロンズ」など、かなり渋い色も用意されている。マンションのドアがブラウン系の場合は、こちらの製品がマッチするはずだ。このような点も、本製品を選ぶ理由になるかもしれない。